2022年になって初めて見た映画は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でした

2021年が2022年という新進気鋭の存在に敗れ、西暦と銘打たれた圧倒的な座に新しい風が吹いて数日、心に暗雲立ち込める者がここにまた一人。

12月25日の22時30分に「あっもう予定がない、クリスマス終わっちゃった」という悟りとともに寂寥を渦巻かせた脆弱な精神は新年三が日の緩やかに過ぎ去る暖かさにもまた同様、水平線は波打つ予兆を見せていた。

「映画を見よう、ウォッチパーティで」

言い出したのは自分ではなく、しかしその提案は突発的メンヘラを発症した虫並み魂の人間に的確だった。

いくつか候補が上がり、そのすべてに共通するのが『「ここさあ」と指さして喋りながら観れるやつ』。とうに観慣れた、作業用BGMくらいの感覚で流せるもの。もしくはそこまで集中する必要もないが、懐かしさを共有することを目的としたもの。

『ワンピース THE MOVIE デッドエンドの冒険』との二択を競り合い、『逆シャア』はその末脚を輝かせた。

自分は『逆シャア』が大好きである。なぜか大好きだ。作品全体に漂う妙なスピード感、戦闘演出の巧みさ、BGMやSEなど音のすばらしさ、最後の最後に理屈をぶち抜いた奇跡が起きて終わってしまうあっけなさ。本来ならば作劇として減点されてしまうであろう部分さえ愛おしい。

具体的に言及するならば、サイコフレームというアイテム。今となっては奇跡の具現化装置みたいな扱いを受けて久しい名前だが、『逆シャア』におけるこのアイテムの役割は「シャアとアムロの関係性(因縁と決着?)を作劇内において象徴する比喩の具象化」とでもいうかなんというか……。難しく言語化しすぎている気はするがこれはさておき。

サイコフレームの動きを追うと、『逆シャア』の起承転結は分かりやすいかもしれない。詳細は省きつつ、試しに追いかけてみることにする。

まず、サイコフレームは「フレームにサイコミュの性能を持ったコンピューターチップを埋め込んだもの」と劇中で説明されのだが、なかなか荒業を駆使しているように聞こえる。実際、映画の冒頭で「νガンダムの重量が急に10㎏減っているのはフレームの材質を変えたためだ」という説明も入る。それなりに無茶をしているのだろう。

このフレームがどのように動作しているのかは、下記のように描写される。
まずは中盤あたり、チェーンの腰元に提げられたT字のものがあり、それがサイコフレーム。機銃の席に座ったチェーンの腰のサイコフレームが(チェーン本人さえ気づかない程度に)青か緑かの光を放ち、対艦攻撃をするギラ・ドーガの軌道を先読みしたかのような機銃で、堕とす。
そして終盤の場面からいくつか。
νガンダムがコクピットから緑の光を放ってフィン・ファンネルによるビーム・バリアーを展開する場面が一つ。
引き留めるアストナージに対し「サイコフレームが多いほうがアムロに有利なのよ!」と叫んで修理途中のリ・ガズィに乗って飛び出すチェーン。このリ・ガズィはα・アジールのビームをなぜか弾き返し、放たれたグレネードにα・アジールのパイロットであるクェスはサイコフレームの幻影を見る、撃墜されたリ・ガズィは緑色の波動を放って船上から遠く離れた連邦兵から果ては地球にいる誰かにさえ意識が届く。
そして締めは最後の最後、νガンダムから放たれた緑色の光が周囲のモビルスーツどころか地球の重力に引かれた小惑星の片割れの進路さえ変える……。
『逆シャア』はこの光が地球を囲むように漂うさまを背景にしてスタッフロールが流れ、終幕する。

……うむ、羅列すると意外に分かるような分からないような。
サイコフレームは一貫して「人の意識を増幅するもの」的な描写をされる。脳波で操作をするファンネルの補助であったり、敵の意識を受信することで窮地を脱したり、謎の光がビームを弾いたり、謎の波動に乗せて遠く離れた他者へ意思を伝えたり。

ん?いつの間にか『逆シャア』の話じゃなくてサイコフレームの話になっている。まあ要するに……。
「命が惜しかったら、貴様にサイコフレームの情報など与えるものか!」
シャアのこの台詞に尽きる話である。νガンダム開発チームの元に届いた出所不明の技術、サイコフレーム。その出所が今まさに敵対するネオジオンの総帥であり、その理由が「情けないモビルスーツと戦って、勝つ意味があるのか?」である。えらいことである。

結局『逆シャア』はシャアがアムロとガチンコしたかっただけの話としてまとまっており、その象徴こそがサイコフレームなのではないだろうか。そして元々は本筋として準備されていたであろうハサウェイとクェス、ニュータイプとは?という話は枝葉になってしまった。それを言外に発するかのように、スタッフロール前のシーンはサイコフレームの光に包まれたアクシズを眺めるクリスチーナである。

…………ううーむ!結局『逆シャア』は語りつくされているということを再確認するだけになってしまった。口惜しい。文章も乱雑で内容はすっからかんだ。申し訳ない!ここまで読んでくれた方に感謝を。途中で読むのをやめた方に判断速度の称賛を。そして2022年によろしく。



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