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今日も城後寿がゴールを決めた。(2022/2/23 ルヴァン杯湘南ベルマーレ戦)

私がアビスパ福岡サポーターになってから、ついに5回目の開幕を迎えた。

そんな春の到来に浮かれて、本来行くつもりはなかった平塚の街に、沢山の人が集う平塚のスタジアムに、風が舞い込むように訪れてしまった。

けれども春の風は気まぐれだ。前々から平塚に行くことを決めていて、その日たまたまお誘いをしてもらった友人は、体調を崩してスタジアムには来れなかった。

そんな、とても気まぐれな春の風は、平塚の街に味方したのだと思う。

来訪者である私たちは、湘南に住む人たちと、その街でサッカーをするたくさんの人たちの熱気、そしてピッチで躍動する湘南戦士に、なすすべもなかった。

アビスパ福岡サポーターとは言うものの、ほぼ年に一回程度しかスタジアムに訪れられられなかった私は、スタジアムで見る6回目アビスパ福岡にして、初めての黒星を味わうことになった。

でも、そんな気まぐれな春の風に運ばれたのか、はたまた彼がそんな春の風に抗った結果なのだろうか。

私たちにとって大切な一人の男が、今年も私たちに束の間でも歓喜をもたらせてくれた。

その男の名前は城後寿。

私は彼の本当の功績をよく知らない。

しかし、ずっと昔からアビスパ福岡を応援し続けている人たちにとって、アビスパ福岡の背番号10番とは、もはや城後のことだ。

彼はその番号を、21歳の時からもう15年も背負い続けている。

それは輝かしいことでもありながら、とても愚かなことであったかもしれない。

彼が背番号10を背負い続けた15年間、アビスパ福岡の成績は芳しいとは言えなかった。

どれだけ彼が頑張ってゴールを決めても、チームは勝つことができず、J1はおろか、J2の下位に低迷したことすらあった。

それだけではなく、2013年には、自らが所属するクラブに、経営危機が報道され、チームの存続すら危ぶまれることもあった。

当然、そんな状況下でプレーする彼を、他のクラブが放っておくわけもなかったのだろう、いくらかのオファーがあっただろうということは報道されていた。

けれども、彼は、アビスパ福岡を選び、残り続けた。

そんな男が、圧倒された試合の中で、ゴールを決めた。

多くの長年のアビスパ福岡サポーター、ファンにとって、勝利とはまた違った形で、嬉しいものが彼のゴールだと思う、彼はアビスパ福岡というアイデンティティの大きな一部なのだ。

私に平塚へ誘う春の風をあおいでくれた友人もまた、彼の虜になってしまった一人だ。

彼のゴールを見たときに私は、隣にいるはずだった友人のことを思ってしまった、城後が大好きな友人に見てもらいたかったと。

もちろん、私も城後が特別に好きというわけではないが、城後がゴールを決めたということが、やっぱり嬉しかった。

そんな私は、3年前に岐阜のスタジアムで、彼のゴールを見ている。

あの年のアビスパは、J2で最下位争いをして、苦しいシーズンだったことは覚えている。

そして2022年2月23日、また城後のゴールを見ることができた。

私の数少ない現地観戦で、たった一人の複数のゴールを見たアビスパの選手になった。

今日も城後寿がゴールを決めた。

気まぐれな春の風は、まだ厳しく冷たくて、私に初めての悔しさをもたらしたとともに、つかの間の暖かさも、同時にもたらせたのかもしれない。

まだまだ、城後寿のゴールが見たい。



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