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アートのみかた

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図工や美術の授業が少なくなる日本。ですがどうやら世界では、サイエンス重視の意思決定では不十分だと感じ美意識を鍛える上位層がいるようです。このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテー… もっと読む
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記事一覧

グランマ・モーゼス展70代から始める素敵な画家人生

田舎のおばあちゃんが描いた絵が驚きの実績!? トルーマン大統領から表彰を受けたり、ドキュメンタリー映画がアカデミー賞ノミネート、TIME誌の表紙を飾るなど、大活躍のおばあちゃんです。 今回のnoteは実際に行った感想&ぶらぶら美術博物館の備忘録です。 アメリカの田舎で暮らす農場の主婦でした。妹の勧めで絵を描き始め、80・90歳と徐々に上達、101歳で亡くなるまでには既に国民画家として活躍するまでになりました。 人気画家になっても暮らしぶりは変わらず、展示では子供服やパッ

明治最後の浮世絵は血だらけで哀しい絵

三島由紀夫が「血みどろ絵」と形容して以来、血みどろ浮世絵と語られた月岡芳年の作品。 初めて見た時はとても怖かった。しかし、当時浮世絵は新聞や雑誌程度の役割しかなかったものに対し、月岡の浮世絵はどこか作品性を感じる。 連作「月百姿」を拝見した時は、その後ろ姿にドラマを感じました。ということで今回日曜美術館を拝見したのがきっかけで、月岡について記述しておこうかと思います🤲 「月百姿」シリーズ 54. 『名月や来てみよかしのひたい際 深見自休』明治18-25 「血まみれの絵」

芸術家はあだ名だらけ!?本名とかけ離れたトンデモニックネーム

本名を隠し顔を隠して配信することが普通になった今の時代。 インターネットができ、匿名でやりとりができる黎明期を越え、今はネット名がまるで本名のような識別性、固有性を持っています。そして一気に親しみやすさを感じますよね。 しかし時代を遡ってみると、過去の芸術家もあだ名で呼び合う風潮があったようです。今回はそんな芸術家・アーティストたちを紹介していこうかと思います。 改めまして。アートテラーとして名前を頂きました、良知です。 いただいたからにはそれらしいブログでも書こうかと思

note移転のお知らせ

2019年8月より、美術の音声番組をpodcast/audiobook.jpにて配信させていただくこととなりました。 こちらのnoteで公開していた美術に関するまとめ、さらにはデザイン思考/アート思考に関する情報は、そちらにて毎週配信をしております。 noteユーザーの皆様には、長らくご愛顧いただきありがとうございました。 今後も邁進するべく、新しい挑戦を繰り返していきます。 今回は一つの節目としてのご報告。こちらのnoteは、たまに書けるように残しておきます。ひとまず

【アートのミカタ30】シャガール Marc Chagall

【概要】100年前のアバンギャルド 絵画にイラスト、舞台デザインに陶芸、タペストリー、版画、ステンドグラス。さらには絵本まで。ジャンル問わずに活躍したロシア出身の画家。 さらにアウトプットが多彩なだけでなく、影響を受けたスタイル(インプット)も多彩です。 キュビズムにフォービズム、表現主義、シュルレアリズム…。 様々な前衛芸術に触発され、独自解釈から展開していたシャガールの作品は、どれも独創的でまさにアバンギャルドと言えるのではないでしょうか。 時代的にはエコール・ド・パ

【アートのミカタ29】ジョット Giotto di Bondone

【概要】暗黒時代の巨匠 何世紀も失っていた芸術に再び日の目を見せたフィレンツェの輝き。 そう賞賛したのは14世紀の小説家ボカッチィオです。(『デカメロン』というインパクト大のタイトルを書いた人) 現代の私たちにとってもっとも難解な芸術の時代であると言っても過言ではないかもしれません。なにせこの中世時代に描かれた絵画には、現代には見慣れてしまった写実性や内容の意味深さを全く感じられないからでしょう。 しかしこの中世(あえて暗黒時代と使いましたが)において、ジョットの存在はと

【アートのミカタ28】イワン・クラムスコイ Ива́н Никола́евич Крамско́й

【概要】北のモナリザを描いた人彼の名がマイナーなのは、我々日本人がまだロシア美術をあまり知らないからでしょう。 彼の代表作『見知らぬ女 Unknown Lady』を語るだけでも充分一記事かけてしまいそうなほど素敵な作品です。この邦題がとっても素敵ですし、この女性に隠されたストーリも、なんともロマンチック。 見知らぬ女 Unknown Lady 1883 ですがこのストーリーは後半にとっておき、まずはクラムスコイの生きた背景から芸術の軌跡を辿っていきましょう。

【アートのミカタ27】クリムトGustav Klimt

【概要】エロい女と金ピカ装飾前回、モローのという画家の紹介に「ファム・ファタル(悪女)」の話に触れました。今回題材とするグスタフ・クリムト(1862-1918)もまた、ファム・ファタルをテーマに掲げた作品が目立ちます。 クリムトの作品は、女性自身はとっても写実的に描かれている反面、装飾や背景がとっても平面的です。これはモローの時にも似たような感覚がありましたが、クリムトとモローの違いといえば、何と言ってもこの豪華な装飾です。 ユディト(1901) この作風に至ったウ

【アートのミカタ26】モローGustave Moreau

【概要】悪女の達人モローという画家を語るには、「サロメ」について語る必要があります。 何故ならこの神話に登場する、どちらかというと母親にそそのかされた慎ましやかな娘が、モローの手によって悪女へと堂々イメチェンを果たしたからです。 サロメとは(詳しくはリンク先をご覧ください。) 洗練者ヨハネにイビられた女性が、腹立たしさの末に「あいつの首チョンパしたいわ」と娘に告げて。その娘(サロメ)が本当に皿に男の首持ってくるというエピソードがあります。 西洋絵画は得てしてあまり喜怒哀

【アートのミカタ25】ボッティチェリ Sandro Botticelli

【概要】初期ルネサンスの巨匠彼の名は知らなくとも、この代表作に見覚えのある人は多いのではないでしょうか。15世紀前半から16世紀、正にルネサンスがノリに乗ったイタリアで活躍した画家です。ルネサンスといえば、レオナルド・ダ・ビンチより7歳年上ですね。 当時の基準からは珍しく、多彩なジャンルを描いていたマルチな画家だったそうです。宗教画・神話・寓話・肖像画・さらに文学的テーマを描いた作品など。教会や公的機関、王侯の一族など、依頼主も素晴らしいものだったようです。 現在では知ら

【アートのミカタ24】万葉集

【概要】令和で注目の和歌集新元号が決まり、その繋がりから万葉集が注目を集めています。 中国から借りてきた漢字を、自分達が使っていた口語言葉で読まれることで発展しました。その歴史の中で生まれた日本最古の歌集ですね。 「万」とありますが、実際には一万首もあったわけではなく、約4500首(全20巻、当時は巻物)なのだそうです。 さて何故、この「アートのミカタ」で歌集を取り上げるのかと言うと。 「美術」という言葉は元々輸入されたものです。西洋では人々の意識統一のために宗教を使い、

【アートのミカタ23】野田弘志

【概要】平成天皇の肖像画平成の世も終わりを迎え、令和に向かって期待が膨らむこの頃。 そんな中、先月3月に天皇に収められた肖像画が話題を集めています。 今回は、この写真を超えた美しさを誇る写実画家のお話をしていこうと思います。 なぜ美的センスをくのか。科学の発展に伴い、心を作る芸術的思考もより広く知ってもらいたい。 このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテーマに、少しでも多くの人にアート思考を築くきっかけにならないかと書いています。 まずはそれぞれの画家の特徴を左脳で理解し

【アートのミカタ22】伊藤若冲

【概要】極彩色の異端絵師2016年の若冲展では7時間待ちだったとされるほど、近年注目を集めていた絵師、伊藤若冲。少し前までは、あまり人気のある絵師だとは思いませんでしたが、日本のブームは凄まじいですね。 王道絵師たちとは打ってかわり、エキゾチックで奇妙な作風が、新しさを感じさせたのでしょうか。描写といい色使いといい、奇想芸術には圧倒されるばかりです。 今回は、そんな若冲についてまとめていきます。 なぜ美的センスをくのか。科学の発展に伴い、心を作る芸術的思考もより広く知っ

【アートのミカタ21】クールベ Gustave Courbet

【概要】印象派前夜の写実主義リーダーイケメン画家ギュスターヴ・クールべ(1819-1877) 歴史的にはヨーロッパ諸国1848年革命の真っ只中で、労働者階級の不満が爆発したことによる、国をあげてのいざこざが相次ぎました。 私は世界史の畑に居ないので詳しくないのですが、確かにこの18-19世紀は革命ばっかりなようですね。 ヨーロッパ中が、これまでの「当たり前」に反論し、ゼロイチで変えていこうと躍起だっていたのだと感じます。 さて美術史の分野では、その革命の着地点として「印象