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その34)自己実現は難しい?

ベーシックインカムになって、雇用も減り、タイムリッチの人ばかりになった世の中の場合、自己実現欲求を満たせるかどうかが、生活の中で幸せ感を感じられるかどうかのカギになってくると思います。自己実現とは簡単に言うと「自分が本当にやりたかったこと」です。規模の大きさは関係なく、自分の努力が加わって達成したり、それを目指したりすることは何でも自己実現といえます。

登山のように非常に体力を使うものもあれば、料理やダンスなど、修練によって極めていくものもあります。達成も過程も重要で、成長が感じられたら自己実現していることになります。引退した人がそば打ちやダンス、家庭菜園や旅行などをするのは、人生の総仕上げとして自己実現を目指すからだと考えられています。

自己実現欲求はマズローの5段階欲求説の最上位にあります。生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求が満たされた上で初めて実現可能な段階にあるといえます。自己実現を阻むものは、否応なしに自分を束縛するものです。仕事とか、家事、育児などがそれにあたります。社会的に認められていないと感じることも大きな要因になります。

自己実現には、自由な時間とお金の他、やりたいことをするための環境、承認欲求のクリアが必要です。承認欲求以外はベーシックインカムになった場合、実現したい内容によっては手に入るものばかりです。

人は、やりたいことならどんなに苦労してもやります。トライアスロンを完走したい、そのために体を鍛える・・・みたいな感じです。でも本当にやりたくないことなら、それはただの苦痛でしかありません。その気になれることで努力して、何らかの達成感が得られないと自己実現にはならないからです。

さて、何をしていても「これは自分がしたかったことだったんだろうか」となってしまう人はどうしたらいいのでしょう。何をしても続かない。既に極めている人がいてつまらないからやらない。それは大丈夫なんでしょうか。何をしたいのか自体がわからないという人もいるでしょう。これは自己実現どころか、自分探し状態です。

何もしたいことがなくただ時間を過ごすのは苦痛になりますし、認知症のリスクも増します。だからといって、無理やり自己実現を目指すのも無理があると思います。ただ、社会と何も関わりを持たないでいるのは、それだけでリスクになります。

この場合は何かのコミュニティやイベント、サークルなどに参加してみるのが良いのではと思います。新興宗教でもオンラインでも構いません。あっでも危ない宗教は嫌だな。大事なのは心にしっくりくることだと思います。人との関わりを持つのは精神上の健康に良いです。しっくりくるところに出会えるまで何度でも渡り歩いていくのがよいかも。

社会的に弱い立場で自己実現したい人もいるでしょう。この立場の人がいちばん苦しく思うのは、人格を否定されること、行動を強制されること、必要以上に気を使われることなどがあります。これの打開策の突破口として、私は「弱いロボット」の存在が役立つように思っています。

弱いロボットを提唱しているのは豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 岡田美智男教授です。「弱いロボット」は手伝ってあげないとなにもできない他力本願なロボットです。すぐ転んだり、まっすぐ歩けないようなのもいます。動きが弱々しいので、思わず助けてあげたくなります。これが「誰かを助けたい」「役に立ちたい」という欲求を癒やしてくれるのだそうです。自分は役立っているという承認欲求が満たされれば、実現したいことが見つかりやすくなり、どのような人でも自己実現に向かって歩み出せると思います。

ベーシックインカム社会は自己実現と否応なく向き合うので、このような感じになるのかもしれません。

情報も物資も必要なものは揃っている世界では
自己実現のためにわざわざ不便を選ぶ人が現れるでしょう
次回は、それについて考えていこうと思います。

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