見出し画像

学生が考えるビジネスプランで下田を創生〜LAC伊豆下田が「武者修行」の拠点に〜

場所やライフライン、仕事などにしばられることなく、好きな場所でやりたいことを楽しみながら暮らす生き方「LivingAnywhere」の実践の場であるLivingAnywhereCommons(以下、LAC)。

その拠点の一つであるLAC伊豆下田で、2021年3月16日から約2週間、地方創生につながるビジネスプランを考える学生向けビジネス研修「武者修行」が行われました。

「武者修行」とは?

そもそも「武者修行」とは何ですかというところから。

「武者修行」とは、株式会社旅武者が実施しているビジネス研修です。
全国から集まった学生たちがチームを組んでビジネスプランを企画し、ヒアリングをもとにプランをブラッシュアップしたり、企画商品を販売するために取引先を探したりしながらリアルビジネスを経験するというもの。

その経験を通して、主体的に考えて行動できる“自走式エンジンを積んだ人”に変態(自己成長)することを目的としています。

学生たちはLAC伊豆下田を拠点とし、「生き方・暮らし方(LivingAnywhere)×ローカルチャー(LocalCulture)のまち下田」をテーマに、その地域特有の課題を解決して地方創生に貢献することができるビジネスプランの作成に取り組みます。

LAC伊豆下田の新しい取り組み

画像1

事前研修でマーケティングやビジネスの基礎を学び、下田入りしたのは12名の学生たちです。

4つのチームに分かれた学生たちは、下田の街を舞台にしたフィールドワークや、企業にヒアリングを行うなどしながら、地域が抱える課題は何かを探っていきます。そしてチームごとに選んだ課題を解決するために、ファシリテーターのアドバイスを受けながらビジネスプランを考えていきました。中間報告では、厳しい指摘を受けながらも粘り強くプランと向き合い、さらに改善を重ねていきました。

私がLAC下田を訪れた日は、ビジネスプランの採用をかけた最終プレゼンテーションの日でした。

最終プレゼンテーションの審査員は、株式会社旅武者代表取締役の遠藤さん、LAC事業責任者の小池さん、LAC運営元の株式会社LIFULLの北辻さん、伊豆漁港共同組合の方、そしてLAC伊豆下田のスタッフと学生たちです。

LAC伊豆下田ではこれまでにも、運営元である株式会社LIFULLが主催した「地域事業創造リーダーシップ合宿」など、地方創生に関連したプロジェクトを実施してきました。しかし、学生を対象にしたプロジェクトは初の試みです。

プレゼンテーションに先立って小池さんは、「LAC伊豆下田での新しい取り組みです。いろいろな人が関わることで新しい変化が起こるだろうなと思い、実施を決めました。ビジネスプランについては、ビジネスのプロとして妥協なくフィードバックしますし、いいプランがあったら即実行したいです」とあいさつ。

ビジネスプランが採用されたら、LAC伊豆下田も協力しながら軌道に乗せていきます。学生たちは緊張した顔で話を聞いています。プレゼンテーション会場の空気は張りつめていました。

地域性豊かな企画の数々

トップバッターは、チーム朝型人間の「伊豆づくし野菜クレープ」です。ビーガンやベジタリアンが、食事に困ることなく自由に暮らせるような価値を提供することをコンセプトにしたビジネスプランを企画しました。

ラディッキオ(チコリ)、きらぴ香(いちご)、ニューサーマーオレンジやクレソンなど下田周辺で栽培されている新鮮な野菜を、米粉を使ったクレープ生地で巻いたもので、プレゼンテーション前に行った試食でも「おいしい!」と大好評でした。

この野菜クレープは、LAC伊豆下田のワークエリア・コミュニティエリアであるNanZ VILLAGE内のレストラン「NanZ Kitchen」の松崎シェフに協力してもらい商品化しました。松崎シェフからは、「これまでテイクアウト商品はなかったので、ニーズがあるのではないか。LAC伊豆下田の利用者にも、お昼ごはんなどにテイクアウトして食べてもらえたら」といった意見をもらえたそうです。

画像2

2番目にプレゼンテーションを行ったチームAMOZOのテーマは「漁業創世」です。

未利用魚に価値を生み出すことで、下田の漁師さんたちの収入の増加や、漁業の衰退を解決したいという意欲的なプランでした。

当初は交流の場づくりをテーマにしたいと考えていたメンバーですが、地元の方々やLAC伊豆下田の利用者に話を聞いたところ、すでに交流の場はあることに気付いたとのこと。そこから話を進めていく中で、サイズが揃わなかったり、漁獲量が少ないことで市場に出荷されずに捨てられたりしている未利用魚のことを知り、地域の課題として捉えました。

未利用魚の活用を考えたものの、販路の目処が立たなければプラン実行は難しい。チームAMOZOは飲食店などに交渉し続け、実施されることになれば「協力したい」といった声もたくさんもらえたと力強く説明していました。

画像3

3番目の発表は、チーム餃子による「ちょっと待ってよ!観光客」です。

下田を訪れる観光客の大半は宿泊せず滞在時間が短い、という現状を改善するため、地元の魅力ある人の情報をマップにまとめて提供し、「コミュニケーション旅行」を楽しんでもらおうという内容です。

チーム餃子のメンバーは当初、下田の魅力は美しい海や自然、歴史だと考えていました。

しかしフィールドワーク中に地元の方々にインタビューを実施したところ、本当に魅力的なのは“下田に住んでいる人たち”で、「観光客のみなさんに、ぜひ会ってほしい」という思いを強くしたそうです。観光協会を訪問し、作成したマップを配布できるよう協力を依頼するなど積極的に活動しました。

そして最後はチームdeco凹による「モバフィス」です。

ワーケーションを行っている人が車を利用したモバイルオフィスを活用し、非日常空間で仕事をすることで作業効率を高める、という体験価値を提供するビジネスプランでした。実際に下田を訪れていた人に、白浜海岸に設置したテント内で仕事をしてもらい、アンケート調査を実施しながらニーズを深掘りしました。

4チームの最終プレゼンテーションが終了し、各審査委員による総評と審査結果が伝えられました。

今回は残念ながら採用に至ったビジネスプランはありませんでしたが、最終プレゼンテーションで最も投票数が多かったチームAMOZOの「漁業創世」に最優秀賞が贈られました。

チームAMOZOのメンバーは、もっと実現性を高めることができたら採用までいけたのではと悔しさをにじませます。
「武者修行」を通して出会った下田の方々からとても優しく接してもらえたことが印象深かったようで、「お世話になった方々のためにも採用を勝ちとって実行し、恩返しをしたかった。ありがとうという気持ちを結果で返したかった」と何度も口にしていました。

参加者およびコミュニティマネージャーに感想を聞いてみた

画像4

研修が終わったタイミングで、参加者に声をかけてみました。

まずはLCA伊豆下田について聞いてみると「とても居心地が良かった」との声が。なぜ居心地が良かったのかと尋ねると、「コミュニティスペースにいると、みなさんから気さくにあいさつしてもらえたから」といった意見が聞かれました。

「仕事の話を聞くことができて参考になった」と話してくれたのは、チームdeco凹のメンバーです。

チームdeco凹は、ビジネスプランのターゲットを1人で仕事をすることが多いクリエーターと想定。さらに40代の女性、フリーライターという細かいペルソナ設定をもとにプランを練っていました。
そして偶然にも、LACに滞在していたクリエーターがそのペルソナ設定に近かったため、話を聞いて参考にすることができたようです。

その会話を通じて、「LAC伊豆下田に滞在しながら、時にはモバフィスで下田の街を走り抜け、絶景スポットや静かな場を選んで仕事をする」。そんなアイデアが生まれ、ビジネスプランを深めるきっかけを掴めたとのことでした。

画像5

LAC伊豆下田のコミュニティマネージャー・國部さんにも感想を聞いてみました。

「学生さんたちともっと交流したかったと言っているスタッフも多かったです。次に開催した際は、LAC伊豆下田の利用者によるセミナーや交流会などを企画し、一緒に刺激を受けられたらいいですね」

國部さんが言うには、普段は仕事をもつ大人の利用者が多いので、学生が集まっていることでいつもよりも賑やかな雰囲気だったそうです。

またチーム餃子の地元の方々を紹介したマップについては「とても新鮮だった」とのこと。

これまでも、LAC伊豆下田でも周辺の飲食店や観光スポットの情報収集を行ってきました。しかし、今まで國部さんも交流のなかった地元の方々がチーム餃子のマップに登場しており、「学生さんを通して、LAC伊豆下田のことを知ってもらえたのではないか」と感じたそうです。

良い化学反応は交流から生まれる

画像6

「武者修行」の参加者の熱意は相当なものがありました。

最終プレゼンテーションに至るまでの参加者の苦労や葛藤を見ていない私にも、参加者の熱い思いがしっかりと伝わってきました。

そして参加者の熱い思いを受け止め、惜しみなく力を貸してくれたのが地域の方々です。

地域コミュニティとの交流を大切にしてきたLAC伊豆下田を拠点にしながら、今回の研修では人と人とが熱く交流したからこそ、良い化学反応が起きたのではと思いました。

この2週間は、彼らにとって色濃く思い出に残るだけでなく、大きな学びを得られたはずです。
社会人になった時、あるいはそれぞれが暮らす地域で今回の学びをいかし、いつか下田との関わりが生まれると素晴らしいと感じました。

▼LivingAnywhere Commons伊豆下田

《ライター・吉川ゆこ》

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?