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刺激を受けて新しいチャプターに進める場所|LAC浅草コミュニティマネージャー・上田 拓明さんインタビュー

浅草の隅田川沿いに位置するゲストハウス「ChapterTwoTokyo」がLivingAnywhere Commons (以下LAC)の拠点に加わりました。

浅草は浅草寺・雷門・仲見世通り・東京スカイツリーなどの観光スポットがある日本を代表する観光地であり、江戸・東京の下町情緒が残っている場所でもあります。

ChapterTwoTokyo(LAC浅草)のコミュニティマネージャーを務めるのは上田拓明(うえだひろあき)さん。上田さんは海外放浪の旅、海外生活、会社員時代の経験や人との出会いを通して「とにかく楽しい場所を作りたい」という想いからChapterTwoTokyoを開業されました。

今回は、上田さんにChapterTwoTokyo(LAC浅草)を開業するまでの経緯や拠点の魅力、新型コロナウイルス流行をきっかけに創業したクルド料理のレストランについてお話を伺いました。

「ゲストハウス」に出会った学生時代


―― 学生時代に、世界各地を放浪されていたと聞きました。

学生時代に外国でバックパッカー旅をしていた時に「ゲストハウス」に出会いました。ドミトリー(相部屋)に泊まると、色々な国の人と話すことができたり、友達になれたりしてゲストハウスに良い印象を持ったんです。

帰国後、就職活動を行い富山県にある金属関係の会社から内定をいただきました。その会社は、海外に事業展開している会社だったので、入社するまでに外国語を勉強しておきたいと思いました。そこで、海外のお客さんとも話す機会が多く外国語の勉強になりそうなゲストハウスでアルバイトすることにしました。

――働いてみてどうでしたか?

色々な国の人と生活をともにするのがおもしろかったです。また、アルバイトとして働いていたゲストハウスを運営する会社の社長さんと家族みたいな関係でお付き合いをすることもできました。入社時期も近づき、アルバイトを辞める時には社長さんから「疲れたら戻っておいで」というお声がけもいただきとても嬉しかったのを覚えています。

画像1▲バックパッカーで海外放浪をしていた上田拓明さん

仕事に慣れていくなかで思考を止めている自分がいた。

それから、富山の会社へ入社後、営業職として働き始めました。最初の頃はまったく思うようにいかず大変でしたが、3年くらい仕事を続けるうちに慣れてきて、仕事をうまくまわせるようになりました。

会社の業績もあがり上場に向けて様々な仕事をしている中でミスをしてしまったことがあり、上司から「この仕事を何のためにしているんだ?」と指摘されたことがあったんです。

――本質的な問いかけですね。

その指摘を受け、これまでを振り返ってみると、仕事に慣れていく中で思考を止めている自分に気づきました。「なぜ自分はこの仕事をやっているのか」という意味を考えないことで、自分を目の前の仕事だけに集中させて、効率的に業務をこなそうとしていたんです。

もともと、この会社に入ったのは将来独立するためだったのですが、その目的さえも完全に見失っている自分がいました。

それから、「一度リフレッシュした方がいい」と考えてその会社を退職することにしました。

アルバイト時代に働いたゲストハウスの支配人に


――会社を辞めてからはどうされたんですか?

会社を辞めて以前アルバイトで働いていたゲストハウスの知人に連絡したら、ちょうど1人辞めるタイミングだったみたいで、そのまま就職することになりました。

――以前アルバイトで働いていた場所に戻ったんですね。

アルバイトの頃と仕事内容は違いましたが、やはりとても居心地が良かったです。職場での出会いをきっかけに結婚し、妻とは新婚旅行でサハラマラソンに出場したんです。

ーーサハラ砂漠でのマラソンが新婚旅行ですか!過酷な新婚旅行ですね(笑)

過酷でしたが、厳しい状況を一緒にくぐり抜けることで絆も深まりますよね。世界中から集まった参加者との交流から受けた刺激もとても大きかったです。

また、以前と比べて会社の規模がとても大きくなっていたので、複数の店舗で支配人としての立場を経験することができました。また、新店舗立ち上げの業務にも携わることができたのはとても貴重な体験でしたね。

様々な経験を通して「自分でも楽しい場所づくりをしたい」という思いがますます強くなっていたので、はっきりとした見通しはない状態でしたが退職することにしました。

夫婦で始めたゲストハウスChapterTwoTokyo

しばらくふらふらしていた時に、前職のゲストハウスが運営していた浅草の物件が空くとの情報が入りました。親しくさせていただいていたゲストハウス運営会社の創業者が「夫婦で何かやってみたら?」と声をかけてくれたんです。

僕は、昔から人が集まって何かをするのが好きで、とにかく楽しい場所を作りたいと考えていたのでゲストハウスをやることにしました。

画像2▲ChapterTwoTokyo開業準備の様子

――ChapterTwoTokyoの誕生ですね。

ChapterTwoTokyoでは、当時まだ珍しかったColivingという言葉を打ち出しました。

――Colivingに注目したのはなぜですか?

ゲストハウスに泊まりに来ている人たちは、たいてい観光をしにきているので遊びに出かけていきます。でも、中にはずっとリビングルームでパソコン使ってカチャカチャやっている人がいたんです。当時の僕はそれを見て「なんで、この人は観光に行かないのかな?」と疑問に思ってたんですよ。後になって、それがColivingというライフスタイルなのだと知りました。

そういう人はリビングルームにいる時間が長いので、必然的にスタッフとしゃべって仲良くなります。滞在日数も長いので、スタッフのようになってきて他のお客さんをもてなしたり、案内をしてくれたりと、周りの利用者さんにとっても良い存在だなと思ったんですね。自分でゲストハウスを始める時に、そんな人たちに来てもらうにはどうしたらいいんだろうと考え始めました。

――利用する側としてもそんな人がいるとうれしいですね。

開業すると、アメリカ、シンガポールなどの海外の方を中心に長期滞在のお客さんが来るようになり、ChapterTwoをとても良い空間に育ててくれました。今は、海外から日本に来ることが難しいので在留外国人の方や日本人の方が中心です。

そんな中で、利用者さんからLACの話を聞きました。LACの利用者さんも良い方が多そうだなと思ったので、運営責任者の方とお会いしてChapterTwoTokyoもLAC浅草として加わることになりました。

画像3▲ChapterTwoTokyoの外観

3日間あると関係性が一気に変わる

――ChapterTwoTokyo (LAC浅草)の魅力を教えてください。

ロケーションが魅力ですね。
浅草駅からここまで徒歩1分で来られます。ゲストハウスの入り口から駅のプラットフォームまで100歩くらいです(笑)。それから、都内の主要な場所に簡単に行くことができますし、羽田・成田空港から直接アクセスすることができます。周辺環境も良く、閑静な住宅街の中にありますし、浅草には魅力的なスポットがたくさんあります。

――浅草でおすすめスポットはありますか?

浅草寺の裏にある観音裏エリアがおすすめです。京都でいうと祇園のようなエリアで芸者さん文化があるような場所です。そこに隠れおいしいスポット、隠れオシャレスポットがあるので、そこでの散策は楽しいと思います。

画像4▲浅草を代表する観光スポット浅草寺。寺を抜けた界隈が観音裏エリア。

――おすすめの滞在日数は3日以上と聞きました。

そうですね。「3日間まったく同じことをやる」をおすすめします。同じ時間に起きて朝ご飯を食べて、同じ時間に昼ごはんを食べ、同じ時間に夜ごはんも食べる(笑)。

浅草はものすごくグルメなまちで、名店がたくさんあります。そんなお店のどこかに狙いを定めて1日目に行ってお店に慣れて、2日目にまた行って仲良くなって、3日目にも行ってより関係が深くなるような体験をしてほしいですね。ですので3日間以上滞在するのがおすすめです。3日間あると人との関係性が一気に変わるんですよ。

――ChapterTwoTokyo (LAC浅草)のルーフトップも魅力的ですよね。

ルーフトップからは、浅草のランドマークの1つである金の炎(フラムドール)が斜め向かいに見えますし、川沿いなので抜群の眺望になっています。

画像5▲ChapterTwoTokyoのルーフトップ

――気持ちよく仕事もできそうですね。

はい。仕事だけでなく、仕事の合間に息抜きしたり日光浴をしたりもできます。

――レストランも運営されているとか?

ChapterTwoTokyo (LAC浅草)と同じ建物の1階にある、クルド料理が中心の「中東の料理とワイン tsukino」ですね。こちらは妻が中心となって切り盛りをしています。

――なぜ、クルド料理のレストランなのですか?

ChapterTwoTokyo(LAC浅草)利用者の方はノマドワーカさんたちが多く、いろいろな場所に行ってらっしゃる方も多いと思います。そこで、僕たちホストも色んなところに行かないとなと思い、夫婦交互に2,3ヶ月スパンで旅行に行っていたんです。

妻がトルコに行った時、イスタンブールでAirbnb(空き家・空き部屋を貸したい人と、泊まる場所を探す旅行者とをつなぐオンラインサービス)を利用して泊まったところがトルコにいるクルド人のお宅だったんです。

クルドの人たち全体にいえると思いますが「あなたとわたしの境目がない」ような感じで、すごくもてなしてくれるんです。彼らのもてなしに本当に感動してこの人たちのことを知りたいと思ったんです。

クルドの方との運命的な出会い

クルドの文化や歴史などを勉強するようになってから、彼らの言葉で話したいって思うようになって言葉の勉強も始めました。クルドの人に何度も会いに行きながら、妻がライフワークとしてクルドの文化・音楽・料理などを日本でいろんな人に知ってもらう活動を始めました。

つながりが増えていくなかで、当時日本で唯一のクルド料理屋「メソポタミア」のオーナーさんと知り合い言葉や料理を教えてもらいました。

――クルド人の文化全体を学んでいて、その1つが料理なんですね。

コロナの前はお客さんの9割が外国人だったのですが、感染拡大で海外からの渡航がストップして外国人のお客さんもこなくなりました。そんななかで妻と今後どうするかの話をしてる時に、「今は“仕事でゲストハウス”、“趣味でクルド”って分けているけど、これを機に融合したらいいんじゃないの」という話になって、飲食店を始めることにしました。

画像6▲レストラン「中東の料理とワイン tsukino」

――それで、クルド料理のレストランが生まれたんですね。

融合と言いましたが、厳密にいえば今もゲストハウスとレストランは分けて考えているんです。ゲストハウスは「ChapterTwoTokyo」、レストランは「tsukino」と名前を分けているのは、レストランも本気でやっているからです。

ゲストハウス付属のレストランではなく、独立したレストランとしてゲストハウス利用者じゃない方でも気軽に来店できるように名前は別にしました。中東・クルドと聞くと人によっては「戦争、テロ、危険」というイメージを持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、僕らはレストランを通して中東・クルドの魅力的な文化や人を紹介していけたらと思っています。

クルド料理レストランがあることも、ChapterTwoTokyo (LAC浅草)の他にはない魅力だと思います。

僕らが住みたいと思える空間づくり


――ChapterTwoTokyo (LAC浅草)の施設について教えてください。

建物の2階、3階、ルーフトップがChapterTwoTokyo (LAC浅草)の施設になります。

シェアキッチン・リビング、シャワールームなど基本的な生活空間と、部屋はドミトリールームが1つと、個室が2つあります。LACで利用できるのは今のところドミトリータイプですが、ベッドはパソコンを置いて座って作業できるようになっています。全体的に僕らが住みたいと思える空間づくりを心がけていますね。

画像9▲使い勝手の良いドミトリーポットルーム

――ChapterTwoTokyo (LAC浅草)で、上田さんのお気に入りの場所はどこですか?

ドミトリールームの一番奥にある4番ベッドですね。構造上、秘密基地みたいになっています。ドミトリーにあるベッドは全て囲まれた構造になっているのですが、中でも4番ベッドは少し暗くて隠れている感じがします(笑)。とことん没入したい人にはいいと思います。

画像8▲共有キッチンが滞在者の交流スペースになっている

刺激を受けて新しいチャプターに進める場所


――今後ChapterTwoTokyo (LAC浅草)をどのような場所にしていきたいですか?

独立した人、自分で地に足をつけて立っている人はおもしろいんですよね。そうした方がたくさん出入りするような場所にしたいです。また、そんな人に憧れている方が、ここで刺激を受けてその人自身も新しいチャプターに進めるような場所にできたらいいなと思っています。

――読者へ一言お願いします。

僕は、今後もChapterTwoTokyo (LAC浅草)には、挑戦し続けている方、独立している方を受け入れ続けたいと思っています。

新しい扉を開くときは、新しい出会いがないと開かないこともあります。そうした新しい出会いを求めている方はぜひChapterTwoTokyo (LAC浅草)に来て下さい。

画像9▲上田 拓明さんと惠利加さん

《ライター・宮嵜浩


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