もうひとつの顔-戦前マンガ史における松本かつぢとクルミちゃん
松本かつぢには、よく知られている二つの顔があります。抒情画家の顔と、マンガ家の顔です。言うまでもなく、後者としてもっとも有名なのが、「くるくるクルミちゃん」の作者です。
かつぢは、大正の末に非常に人気を博していた蕗谷虹児に刺激を受けて抒情画家になることを決意したと言われていますが、同じ頃、アメリカ発で人気の出てきた漫画にも興味を持ち、デビュー当初から創作を始めます。抒情画は童画とともに大正の雑誌文化を彩った表現形式でした。虹児がその名を提唱した説もありますが、はっきりした定義