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告白水平線 #毎週ショートショートnote

海に来たのは、何年ぶりだろう?
少し時間ができて、近くの海岸まで車を走らせて寄ってみた。
 
もう少し話したかっただけだったのに、時間がなくてできなかった。
私の言葉が足らずに誤解されたし、それが積み重なって、周囲にも波及したから中傷までされたのかも。
 
そんなことを思い返しながら、私は逃げるようにこの海岸に辿り着き、車を停めた。
はるか彼方の水平線から寄せては返す波が、音を立てて大きく崩れた時、私は心の中であなたに告白した。
 
 
何となく、あなたの気持ちは、私にはわかるんだ。
あなたが待っててくれるのは嬉しいけど、私にはこちらの世界があって、そちらには行けないんだよね。
あなたと私のこれからの幸せのために、私はある人たちと大事な約束をしたの。
だから、私からはあなたに話しかけられなくなった。
それをあなたは知らないだけ。
 
 
波間には夕陽があたたかく輝き、オレンジ色のグラデーションがその日の終わりを告げる。
私はこちらの世界の住人。

完:410字


初めて、たらはかにさんの毎週ショートショートの企画に、参加させて頂きました。
創作が苦手な私が、フィクション物語に挑戦しておりますので、温かく見守って(読んで?)頂けたら幸いです。

こちらとそちらの世界を行き来していた「私」が、そちらの世界へ行けなくなった事情を、境界領域の海の水平線へ向かって告白する完全フィクションの物語にしてみました。

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