見出し画像

心を明け渡す

人に心を明け渡すのが苦手な性分である。
弱い部分をさらけ出して、傷ついた経験がある。
さらけ出さずとも人に裏切られてきたことも山ほどある。

結局いつだってピンチの時ほど孤独だったから。
一人で自分の心と向き合い、一人で立ち直ってきた。
おかげで強くなったし、早いうちから年齢の割に洞察力が優れた。

あらゆる物事の真理を見極めるのが早く、人の心の機微に敏感になれたおかげで人から頼られるようにもなった。求められなかった幼少期を過ごしたばかりに人が自分を頼ってくれることが嬉しかった。

けど、その一方で頼りにならない私と思われることを怖がった。
人の役に立てないと私に価値はないと長らく思っていた。

|愛した彼のプライドの高さは、私のプライドだった

私が人生で深く愛した彼は、25歳の青年ながらにその心は純粋無垢な少年のようだった。良い一面としては素直で、嘘のつけない屈託のなさが魅力。悪い一面としては無駄に意固地、必要のないプライドを振り翳していた。

男は頼り甲斐がないといけないんだ。
俺に意見をするやつはムカつく。
なんていう言葉をそのまま言ってしまうほどに無粋である。
オブラートというものがなかった。

そんな彼を見て私はいつも
なぜ、そんなに頑なに自分のプライドを大事にするんだろう。
もっと柔軟に柔らかく、あるがままの姿で生きればいいのに。
私が彼が男らしくても、男らしくなくても好きなのにな。
内心でそんなふうに感じていた。

どこから彼を子どもっぽいと見下していたのかもしれない。
けれど、よくよく考えればこの彼の高いプライドは、まさに他でもない。
私のプライドそのものだったのだ、、と別れて一年半経った今ようやく気づいた。

|正しさというプライド。


元カレと付き合っていた頃の私は
「正しさ」を武器にしていたように思う。

それが私のプライドだったのかもしれない。
何度か彼の理不尽さ、不条理さ、未熟さを問いただし
自分の正しさを押し通そうとしたことがある。

私にとって話し合いは、自分の意見を述べたいというエゴであった。
話せば分かり合えると思っていたけれど、それが彼を苦しめていたことを今なら理解できる。

私は、正論をふりかざして自分のプライドを優先させていた。
無論、彼も彼で自分のプライドを優先させていたので、気づけばいつしか
ゴングが鳴ることのない泥試合を2年も続けてしまったのだ。

その成れの果てが、音信不通という形である。
愛していたはずなのに、最後は愛ではなくプライドの戦いになった。

|心を明け渡す勇気が欲しい

実のところ、私はプライドが高いので友人にも滅多に相談をしない。相談をしたとしてもある程度、自分のなかで答えがあった上で意見として参考にしたいからというスタンスで相談に入る。私の相談はいつだって相談ではなかった。

本当は情けない、弱い、小心者という自分の未熟な部分など
家族や友達、恋人にだって見せてこなかった。

その未熟な部分を暴かれようものなら正論を装って噛みついた。

でも、今。
今の私は積極的に弱音をさらけ出してみたいと思うんだ。

|新しく出会った、完璧な彼

元カレと別れて一年半が経った今、ようやく素敵な男性に巡り会えた。
いうことのない完璧を絵に描いたような人である。

優しくて、ハンサムで、仕事ができて、友達や家族思い。
そんな人が自分の隣にいるなんて思いも寄らなかった。

と、同時にちょっと不安に思った。
彼と並ぶには素敵な女性でいなくてはいけないと。
無論、日頃から自分にできる最大限の努力はしている。

おかげさまで手に職をつけ、体を絞り、ファッションやメイクは鮮度を高く保ち、老若男女に関わらず人に優しくをモットーに生きている。

だからこそ、品行方正でなくちゃいけないと思った。
彼に自分のカッコ悪い部分をまだ見せていないから。

弱い部分を見せて、君はいらないと嫌われるのが怖くなった。
だって彼は完璧だから。

|良好な関係には、弱さが必要なのかも

だけど、ふと今日思ったこと。
私が彼にとってイイ子であればあるほど
彼は私を重荷に感じるのではないだろうかと。

本当は、連絡がちょっと遅いことに寂しさを感じてる。
本当は、もうちょっと会える時間が欲しい。
でも、言って断られたり、冷めらたりしたら嫌だ。

そう思ってなかなか口にできなかった。
ましてや会えない中でラインでする会話でもないと思って言えなかった。

だけど、私が我慢すればするほど
きっと頭の良い彼のことだから私の我慢を気付くだろう。

私が本音を言わなければ彼も本音を言わない。
本音が言えない関係なんて長続きもしない。

私が私の心の弱い部分を認め、受け入れ
そして関係性を構築する一つ一つの作業にいつも
ちょっとした勇気を重ねながら進めていることを
もっとさらけ出してみた方が良いのではないだろうか。

それは私からすると長年、積み上げてきた

・清廉潔白に生きなくてはいけない
・人に指摘される部分がないほど完璧でなくてはいけない

という概念を根底から覆すとても恐ろしく勇気のいることだ。

そして、今目の前にいる彼もまた
私と同じ課題を抱えている人なのではないだろうか。
とすれば、私から弱さを見せていけばきっとお互いにもっと楽に
自分らしくあるがままの形で共に生きていけるのではないかな。

今までの恋愛でできなかったこと。
それは、私が私の弱さを認め受け入れ、無駄なプライドを捨てることだ。
正しくなくていい、未完全でいい、不器用でいい。
それでも私は、愛し、愛される。

そんな恋愛を今回の彼と一緒に経験できるのだろうか。
無論、それは私次第である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?