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福祉の職場における人材育成に関する考察

みなさんの職場では、どのように人材育成が行われているのでしょうか。
実際の現場で教えたり(OJT)、座学で伝えたり(OFF-JT)、それらを組み合わせながら行われているのではないかと思います。


OJT(On The Job Training)
実際の現場で上司や先輩が仕事を教えること。

OFF-JT(Off The Job Training)
座学など通常業務から離れた場所で研修を行うこと。


OFF-JTは、座学で複数の職員に対して一度に講師が研修を行うため、質の担保が容易で、習得する技術や知識の均質化が期待できます。

OJTは、現場で仕事を進めながら先輩や上司から教わるため、イメージがしやすく分かりやすいです。一方でコーチングする側の能力や指導方針によって大きな差が生まれてしまうという懸念点も浮かび上がります。

ここでは、主にOJTについて掘り下げていこうと思います。

山本五十六の4段階法(導入、提示、適用、確認)

私は、職員育成の基本的な考え方は、山本五十六の教育における4段階法(導入、提示、適用、確認)の名言に詰まっていると思っています。

学生時代に、恩師から子どもに対する保育者の心構えとして教わり、大変共感した考え方です。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」

この言葉を指標にしながら、職員の育成を進めています。
では、具体的に大事なポイントを確認していきましょう。

育成する側が意識すること10選

・見本を示す
・留意事項は文字情報または言葉で事前に伝える
・本人に任せる
・事前に伝えていなかったことは指摘しない
・本人の意図を確認する
・指摘内容を精査する(どちらでも良いような内容は指摘しない)
・指摘する際は、二人の時に言葉で伝える
・「こうすれば、もっといいかもしれない」という伝え方をする
・できていることを褒める
・日々の業務を労う

指摘事項を伝える際、絶対にNGなこと

・メールやLINE等の文字情報で指摘すること
・感情的になること

上記については、必ず避けるようにしましょう。文字情報での指摘は、印象が強く残ってしまい、読んだ側の精神的なダメージが大きくなってしまいます。

必ず口頭で、言葉を選びながら、タイムリーに伝えるように心がけてください。当たり前ですが、感情的になることもご法度です。

感情的になる時点で、職員育成という視点が欠けており、自分本位な関わりになっていると自覚した方が良いでしょう。

何よりも、まずは現場職員を労う

職員への物事の伝え方をここまで話してきましたが、実はそれよりも前に声を大にして言いたいことがあります。それは、日々事故なく過ごせていること自体が素晴らしいということです。

この事実を決して忘れてはなりません。職員のできていないことやもっとこうしたら良いということに目を向ける前に、まずは現場職員の日々の業務を労うことから始めてください。これが福祉の職場において、絶対的に足りていないことだと私は考えています。

福祉の日常は、山あり谷ありですが、基本的には毎日同じような仕事内容の繰り返しです。その中で、現場職員は利用する人が楽しめるように、安全に過ごせるように、知恵をしぼりながら日々創意工夫しています。

意見をよく言う職員や上司の太鼓もちが上手な職員が評価されるような仕組みではなく、毎日真面目に勤務している職員や常に利用者のことを考えている職員をもっと評価するべきだと思います。

みなさんの職場ではいかがでしょうか?何気ない日常を評価してくれる上司や先輩職員はいますか。もしいないのであれば、上司の資質に問題ありと考えて差し支えないと思います。それほど、日常を評価するということは重要なのです。

昨今の注意するとすぐに退職してしまう問題について

ここで考えたいことですが、近年の福祉業界においても、採用しても注意するとすぐに退職してしまうという話をよく耳にします。

この話題を聞くたびに非常に残念な気持ちになります。福祉業界はお世辞にも給料が高いとは言えません。

そんな中でも、福祉の仕事を選び、自ら働こうとしてくれた職員をなぜ大切に育てようとしないのか。なぜ旧態依然のまま組織は変わろうとせず、退職を職員のせいにしてしまうのか。こう思うわけです。

人材育成において最も重要なこととは

私は、職員にプレッシャーをかけて育てる必要はないと考えています。障害福祉の現場は、トライ&エラーが基本です。様々な関わり方を試しながら、それぞれに合った正解の支援を見つけていくのです。

上司や先輩からプレッシャーをかけられると日常の支援でトライしにくくなってしまい、利用者との関わりが委縮してしまいます。のびのび働ける環境にこそ、支援が充実していくヒントがあるのです。

職場によっては、わざとプレッシャーを与えて職員を育てようとするところもあります。なぜそんなことをするのかと疑問に思います。

この時代に福祉を志し、障害福祉で働きたいと思った時点で素晴らしい資質の持ち主だと思うのです。だれもが尊重され、一緒に穏やかに過ごせることこそ、職員育成の基礎になると信じています。

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