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食欲の冬

脂の乗ったはまちをたべた。美味い。魚の油は体にいいのだ。海のもののコッテリ味はどうしてこんなにクセになるのだろう。
いつもの魚屋さんだが、ほんとお手柄だ。
しかし、最近こっそり浮気をしている。
比較的新しいフレンチビストロが美味い魚料理を時々出していることに気がついてしまった。小さな店で昼間しかやっていない。一度、ムール貝を頼んだら、ふっくらの貝と、とっても優しい味に貝の出汁が沁みたお野菜。さらに美味しいバゲットが出てきて、皿に残ったスープを浸して食べたらあんまり美味しくて、そこにいた人みんなを好きになってしまった。
その店はあくまでフレンチビストロで、魚にフォーカスしている訳ではないのだが、魚の料理が上手い店はドイツにはなかなかない。
これはコックの腕がだいぶいいな、と見当がつく。
今日その店が、冬の鱈を出すとSNSで謳っていた。絶対に食べたい。旨いものがあると知ると、俄然やる気が湧いてくる。ダラダラしてる場合じゃないとパジャマを脱ぎ捨てる。普段、午前中は死体みたいになっているか、ついたり消えたりする頼りない電灯みたいな私が、うりゃあと起き上がるんだから、世の中の美味しいものに関わる仕事をしている人たちには感謝しかない。
 音楽も誰かのそういう喜びや力になっていると期待して、同僚とどつきあいながら、指揮者の悪口を言いながら、今日も仕事をしている。


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