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止まり木

友人が、ちょっと行ってもいいかな、とうちにやってくることがある。
一人で気ままに暮らしていることをしっているからか、突然、連絡が来る。特にもてなしたりもしないのだが、座っておしゃべりをして休憩をしていく、おいしいチョコレートを食べよう、とか、疲れすぎているから寝かせてくれ、とか適当にくつろいでいる。私もやることがあれば手を止めないし、出かける時間がきたら追い出す。
 家に行くよ、という人は本当は少し話があるし、少し疲れている。それは個人的な答えのない話であったり、君はどう思う?であったり、さみしいって聞いてほしかった、とか色々なのだが、私はこういう頼みを断らない。
 
 うちで休んで数時間後の仕事でまた顔を合わせた人がなんだかばつの悪そうな顔をしている。なにもやましい事はないのに、秘密を共有したような、そんな顔だ。誰にも彼がうちにやってきたことは言わないから、彼もうちでお茶を飲みながらほろっと悩みを話したりするのだと思う。少し疲れた、と眠ってしまった。
 人は色々事情がある。言えること、言えない事、深くは聞かないし、ベストアンサーも出せない。ただ、疲れた、と弱みをもってうちに来る人を私は少し大事に思っている。休みなよ、とあったかいお茶を入れてあげたくなる。
 
 


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