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雫と、穏やかな光

私の家には、雫という名の猫がいる。

休日の朝、起きたばかりの飼い主の足元に
雫はおしりとしっぽを硬くして擦り寄ってくる。

お腹がすきました。朝ご飯はまだですか?
たまに貰えるあの小さいやつでもいいですよ?

猫の声  代理

まるでそう問いかけて来るかのような……
飼い主の重い身体すら動かしてしまう、強い眼差し。
雫の背中は朝日に照らされて柔らかく輝いていた。

毛繕いという猫のお仕事はとても丁寧で、
起きたてでも朝日を含んで毛並みが輝いている。
美しくて、柔らかくて、暖かい、包み込むような光。

猫と朝の光とともに、
穏やかな気持ちがぽこぽこと心に宿る。
急ぐことの無い休日の朝、雫と私の時間。
気ままな猫とともに暮らすということ。

小さな銀の袋を持つと雫はさらに追いかけ、
座った私の膝にすぐさま前足をのせて伸びてきた。
普段膝に乗らない子でもこのときだけは距離が近い。
じっくりと雫の顔を観察させてもらう。
そんなに目をうるうるとさせて……
これはそんなに美味しいものなのか、なんて思う。

(雫にそのつもりは無いかもしれないけど)
猫のお仕事 功を奏したと言うべきか、
穏やかな時間のお礼に、朝一のおやつをあげた。
しっかりと平らげて、とても満足げだ。
最後は口周りを整えていつものお顔に戻る。

猫のおしりをぽんぽんと叩いた私は
休日の特権 二度寝をすべく
穏やかな心でもう一度ベッドへ向かう。

水を飲み終えた雫もついて来た。
足元に上がってきて丸くなる。
温いかたまりを感じて 私はさらに安堵した。
穏やかな光に包まれて もう一度眠りについた。

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