抵抗値はスパイ暗号-おもちゃ病院日記

 ・フレミングの左手の法則
 ・フレミングの右手の法則
 ・オームの法則
 しばらく聞きもしなかった単語が、今おもちゃ病院でまた必要になった。

 当時、授業で聞いた時は絶対使うことはないだろうと、革新めいた気持ちがあったものだが、まさか必要になる日が来るとは思ってもいなかった。
 というわけで、電圧と電流と抵抗値をひいひい言いながら紙の切れ端に殴り書き解こうとしている。

「電圧は〇〇、抵抗が△△。与えた場合の電流は?」

 とりあえず必死についていくしかない。学校で習ったはず!習ったはずなんだけどどこに行った!と僅かながら他責思考を持って一旦責任を放棄し、ひいひい言いながら目の前の計算式にかじりつく。
 厳密に言えば、おもちゃ修理にここまでの知識がなくても良い。私は知りたいからお願いして教えてもらっている。
 「電気っていうのはフレミングの右手の法則で動いてるんだよ」「ここがこうでこうなって。」「逆ならフレミングの左手の法則ね」
 ひい。ふむふむ、ととりあえず頷きながらついていく。

「抵抗器というのはこうなっていてね、色がついた線が4本描いてあるだろう。これは数字を表している」
 …黒ならゼロ、茶色なら1。
記号か暗号みたいだ。なんだかスパイ映画みたいな話になってきた。
「黒ならゼロ、茶色なら1。これは茶黒茶だから『101』だ」
 101。
「つまり10の10乗ということになる」
ひい。心のなかで思わず悲鳴が出る。

「計算するとこの抵抗の数値がわかるというわけだ。いくつかわかるかな」
優しく聞かれているのだが、私の頭の中は若干パンクした。
10が10回。
「100です」となんとか答えた。
すると先生はにっこり微笑んで「そうだね。じゃあ103の場合は?」
10が10回と10回。…あれ?
「…1000です」なんとか答えた。
「じゃあ104は?」と先生が問う。
10が10回の10回の10回…
「?」
「10かける10の4乗だからね」
ひい。
黙って計算していると先生はにっこり笑ってこういった。
「計算せずに10の4乗はゼロが4つと覚えればいいよ」
あ、なるほど。
「10000です」
「そうだね」と先生はにっこり。

先生は優しいが、問題は全く優しくはない。
ちなみにそんな光景を他のおもちゃドクターはニコニコしながら眺めていた。
「俺はそういうのわからないなあ」
「よくまあやるよな」
と、わいわい話している。

うん、おもちゃドクターでもわからなくても良いのだ。
ただ私は知りたい。だから頑張ってついていく。

帰りに古本屋に寄り、教科書コーナーに行った。
今回、基礎知識を教えてもらい、自分に何の知識が足らないのかやっとわかったきがする。私に必要な本は専門書ではなく、教科書コーナーにある本だ。
今までネット検索できるほどの知識もなく、なんとなくはわかるが、説明しろと言われてもできない状態だった。何を知らないかを知らないから、他の人に的確な質問をすることもできない。

古本屋で目当ての本を探し、電流や電圧について基礎知識が書かれているページを見つけ「中2で学ぶやさしい理科の教科書」(のような名前)の本を買った。
電流や電圧について学ぶのは中2だったらしい。
ついでにテスターを使った電流のはかり方と電圧のはかり方の違いについても書いてあったのでちょうどよい。
『電圧があっても電流がないってそういうことか』と納得出来たりした。

教科書って凄いなと改めて思った。


お読みいただきありがとうございます。 引き続きおもちゃ修理がんばります!