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おもちゃを無料で治すボランティア「おもちゃ病院」のドクターやっています。 おもちゃ病院…

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おもちゃを無料で治すボランティア「おもちゃ病院」のドクターやっています。 おもちゃ病院で日々会う人々について書いています。

最近の記事

抵抗値はスパイ暗号-おもちゃ病院日記

 ・フレミングの左手の法則  ・フレミングの右手の法則  ・オームの法則  しばらく聞きもしなかった単語が、今おもちゃ病院でまた必要になった。  当時、授業で聞いた時は絶対使うことはないだろうと、革新めいた気持ちがあったものだが、まさか必要になる日が来るとは思ってもいなかった。  というわけで、電圧と電流と抵抗値をひいひい言いながら紙の切れ端に殴り書き解こうとしている。 「電圧は〇〇、抵抗が△△。与えた場合の電流は?」  とりあえず必死についていくしかない。学校で習った

    • イワヤの猫さん、時間制限のある修理-おもちゃ病院日記

       修理に2時間かかった。 今日は放課後等デイサービスで開催されたおもちゃ病院で、私はおもちゃドクターとして参加している。  「これを直してあげて」と受付の人から預けられたおもちゃは、子どもたちが遊んでいる間に修理され帰る頃には修理が終わり受け取りを完了する…かもしれない。 今日はそんなタイムスケジュールで動いている。 これが何を引き起こすかというと、おもちゃドクター達の修理タイムトライアルだ。 私も1台のおもちゃ(患者)を渡され『できれば帰るまでに修理が終わっているとい

      • 未知なものを知る楽しさ-おもちゃ病院日記

         「あれが嬉しくてね」 そう語る横顔は少年の顔そのものだった。 話す内容はおもちゃ修理に関することなのに、なぜなんだろう。 定年を超えた彼が語るのは『少年時代にやったことがあるおもちゃ修理の話』だった。 その横顔を見ながら、彼はキラキラと目を輝かせる。どれほど眩しい記憶なのだろうと彼を見ながら思う。 まるで世界の秘密を初めて覗き見て、一瞬で世界の広さと深さを知ったような。この世の素晴らしい瞬間をすべて集めて一瞬の時間を作ったような。 彼は今、どんなものも例えようがなく素晴ら

        • 「○ちゃんって、昔からすぐおじさんと仲良くなるよね」

          「○ちゃんって、昔からすぐおじさんと仲良くなるよね」 とぽつりと言われ、驚いた。思わず言われた言葉の中にあるツッコみ場所が何個あるのかを数える。 「昔から」「すぐ」「おじさんと」「仲良くなる」少なくとも確認したい上に気になる言葉は4つある。 幼少期から共にいる妹の言葉である。そうなるとこの「昔から」という言葉にはかなりの歴史があるはずだ。しかもしみじみと言われたのでは自身はなんだったのかと考えてしまう。 「すぐに」ってどういうこと。「じっくり」でもなにか怖いけれども。 「

        抵抗値はスパイ暗号-おもちゃ病院日記

        • イワヤの猫さん、時間制限のある修理-おもちゃ病院日記

        • 未知なものを知る楽しさ-おもちゃ病院日記

        • 「○ちゃんって、昔からすぐおじさんと仲良くなるよね」

          新人が新人を教える日-おもちゃ病院日記

           「おもちゃ病院」の「おもちゃドクター」を初めて2年が経った。  2年経った今でも初めて教えてもらうことは多く、本当に幅広く限りない遊びだと今も思う。  所属するおもちゃ病院でも新しく「おもちゃドクター」となった人が幾人か増えた。私が初めておもちゃ病院で教えたもらったことを、継ぐように新しい人に伝えると、隣に座っていた師匠が懐かしむようにくすりと笑った。  師匠から見れば、ひよこがひよこに教えて居るようなものなのかもしれない。でもたぶん、そういう光景を見るのも嬉しいのだろう

          新人が新人を教える日-おもちゃ病院日記

          4-3

          第3話(4,000字まで) 亡くなった子供のおもちゃ ある日、のおもちゃ病院。古いおなじキャラクターの絵がはいったおもちゃが持ち込まれる。 ドクターひとりひとりに渡されるおもちゃ。 カバーをあけると部品が古い。 そして、ものすごく遊んだ跡がある。 「なつかしいなぁ」笑顔で治すドクターたち。 その光景を依頼主はぼんやりとみている。 『本当は一緒に来たかったけれど』と空のままの隣の椅子を見る。 ドクターが修理するそばで見学の小さな子供たちが「これなに?」と近寄っておもちゃ

          3-2

          第2話以降のストーリー(3,000字まで) ひも付きのラジコンで遊ぶ子供2人 「貸してよ!」とひもをひっぱり動かなくなってしまう。 喧嘩を見ていた母親はあきれ、ラジコンを持ち上げる。 「あーぁ。昨日買ったばかりなのに」 子2人を引きつれおもちゃ病院に行くことを決意する。 子2人を連れ、疲れ果て建物に着くと、子供たちはまた喧嘩をし始める。 ため息をつく母親。 おもちゃ病院につき、受付をする。 机の上に置かれたおもちゃやドクターが治すおもちゃに夢中になる子供たち。 おもちゃ

          2-1

          第1話のストーリー(1,000字まで) マル 主人公 おじい おじいちゃん。主人公マルが「おじい」と呼ぶ 母 主人公マルの母 古い公民館でおもちゃを解体し、必死に螺子を回すおじい。机に転がる螺子を一つ取り、おもちゃにはめる。何かを得たようにニッと笑うおじい。 マル『僕のおじいちゃんは、おもちゃドクターだ』 場面はかわり、マルの自宅。 おじいが薄いケース鞄を手に出かけようとする。すると背後からマルの母が声をかける。 母「もう、お父さん。またお出かけですか」 おじい「ああ

          #週刊少年マガジン原作大賞 応募

          #週刊少年マガジン原作大賞 #連載部門 キャッチコピー(1文で50字まで) 『ぼくのおじいちゃんは「おもちゃドクター」だ』 あらすじ(300字まで) 週末おもちゃドクターとして「おもちゃ病院」で働く「おじい」。 おもちゃ病院では、おもちゃを「患者」、修理を「治す」、「治療」と言い換える。ある修理をきっかけに「マル」はおもちゃドクターになり、おもちゃを治すたびに出会う人々と、現在や過去を通し沢山の人と出会う。 毎回おもちゃ病院に行くおじいについていく「マル」。 おもちゃ

          #週刊少年マガジン原作大賞 応募

          水道のおもちゃ -おもちゃドクターの日記 #14

           妹が遊びに来た。日々大きくなる甥はもう言葉で会話ができるまでに成長したらしい。  一月でこんなに大きくなるのか、と驚いていると「離れているとそう思うよね。でもね。一緒に暮らしていても、いつのまにこんなに大きくなったの?ってびっくりするんだよ」と言われた。  部屋に上がった甥はいつものごとく私の部屋を「児童館」か何かと勘違いしてにこにこと歩き回る。  妹はいつものごとく小さなソファーに座り、いつもとは違う見たことがない水道蛇口のおもちゃを取り出した。  ああ、壊れたおもちゃ

          水道のおもちゃ -おもちゃドクターの日記 #14

          壊れた玉転がしゲーム -おもちゃ病院ドクターの日記#13

          おもちゃを傾けてカラカラ音がするようなら何か部品が外れていると思ったほうが良い。 そう教えられてから、おもちゃを預かったら静かに振ることにしている。 音の原因としては ・歯車が外れている ・部品が割れている といった理由が多い。 先に結果を言うと今回はそのどれでもなかった。 何度かおもちゃ修理を進めると、開けてみてから「え?」と驚くことがある。 今日はそんなおもちゃだった。 先におもちゃの説明をしておこう。 預かったおもちゃは「玉転がしゲーム」と呼ばれている。昔からある

          壊れた玉転がしゲーム -おもちゃ病院ドクターの日記#13

          「みんなで遊ぶ」おもちゃ病院 -おもちゃ病院ドクターの日記#12

          お客さんが誰も来ない。そんな日もある。 おもちゃ病院への来院がない場合に備え、壊れたおもちゃを1つカバンに入れて出向くことがある。 ひとりで修理したい場合はほっといてくれるが、本人が望めば周りのドクター達がいくらでも助けてくれる。 今回はそんな1日だった。 例えばおもちゃ病院ではこんな具合に修理が進む。  机に修理するおもちゃを置いてから、工具をカバンから出し並べると、『これはなんだ?』とドクター1が通りすがりに立寄り、視線で問いかけるので「自宅から持ってきたおもちゃ

          「みんなで遊ぶ」おもちゃ病院 -おもちゃ病院ドクターの日記#12

          泣かないぬいぐるみ  -おもちゃ病院ドクターの日記#11

          「孫が泣いてよ 、困ってるんだ。ずっと泣いてな、ほんと困ってんだ」 と袋をガサゴソとあさり、少しくたびれたぬいぐるを渡された。 聞けば、孫が遊んでいる途中、手にぬいぐるみを持ったままいきなり泣き出し「どうした」と聞いても泣くばかりで何に困っているのか分からなかったそうだ。 私は「うんうん」と聞きながら「犬のおまわりさん」という童謡を思い出した。 話を聞いていると「泣いてばかりいる」孫を目の前にしオロオロしたご家族が目に浮かぶ。 というわけで、『どうやらぬいぐるみの何かが

          泣かないぬいぐるみ  -おもちゃ病院ドクターの日記#11

          妹が遊びに来た話②-おもちゃ病院ドクターの日記 #10

          今日は妹が遊びに来たのだが、例のよってまたホラー話になったので書いておく。 無事に私を「おもちゃ病院ドクター」と認識した妹だが、 今度は壊れたラジコンを持ってきた。「これ、直る?」 「あぁ、あれか」と思いながら受け取った。というのも、どうやったら直るかを数日前から妹に連絡をもらっていたのだった。 まずはLINEで 1.放電 2.充電時間の短縮 3.再起動 などのやり方を細かく指示し試してもらっていた。 「何をやっても動かなかったよ」と妹。 ふうん、そうなんだ。とラジ

          妹が遊びに来た話②-おもちゃ病院ドクターの日記 #10

          ピンク色の電話機 -おもちゃ病院ドクターの日記#9

          手渡されたのはピンク色をした電話の子機(こき)だった。 公衆電話で話すときに持つ部品の大きさで、電話線がない物といえば通じるだろうか。電卓を細長くしたものを想像してもらえれば実物に近いと思う。 昔は携帯が無かったため、どの家庭も電話線を引き、公衆電話を小さくした様な電話機(親機(おやき))を設置した。そのままだと1箇所でしか電話が鳴らない為、親機とは別に「子機(こき)」と呼ばれる通信型の携帯のような電話機が置かれていた。 そういう時代背景もあり子機のおもちゃも存在するの

          ピンク色の電話機 -おもちゃ病院ドクターの日記#9

          妹が遊びに来た話-おもちゃ病院ドクターの日記 #8 

          今日は妹が子供を連れて遊びに来た。 ちょっとしたホラー話になったので一応ココに書いておく。 ちなみに2023年の春は、3年に及ぶコロナ禍の猛威により国全体の大規模な隔離生活を推奨され、久しぶりに逢った親戚が知らない間に大きくなっていることなど珍しくない時代だった。 * いつも通り、練習用に購入したおもちゃを修理して遊んでいると玄関のベルが鳴った。 妹を出迎えてからお茶の準備をするために台所に移動する。 妹は私と向き合う形でこたつに入り、何気なく部屋を見渡し、一角を見てそ

          妹が遊びに来た話-おもちゃ病院ドクターの日記 #8