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泣かないぬいぐるみ  -おもちゃ病院ドクターの日記#11

「孫が泣いてよ 、困ってるんだ。ずっと泣いてな、ほんと困ってんだ」
と袋をガサゴソとあさり、少しくたびれたぬいぐるを渡された。

聞けば、孫が遊んでいる途中、手にぬいぐるみを持ったままいきなり泣き出し「どうした」と聞いても泣くばかりで何に困っているのか分からなかったそうだ。

私は「うんうん」と聞きながら「犬のおまわりさん」という童謡を思い出した。
話を聞いていると「泣いてばかりいる」孫を目の前にしオロオロしたご家族が目に浮かぶ。

というわけで、『どうやらぬいぐるみの何かが動かないらしい』と理解され来院されたそうだ。

「孫がほんと泣いてよ。昨日も泣きつかれてそのまんま寝てしまってよ、ほんと困っててな」と言ってハの字の眉毛を更にハの字にし、悲しそうな顔をなさりながら机の上に置かれたぬいぐるみを眺める。

今回事前のヒントは無さそうだ。まあ開けてみれば何か分かるかもしれない。とりあえず「わかりました、一度お預かりしますね」と受取った。

ぬいぐるみのおもちゃなので、修理は1ヶ月とした。

他のおもちゃドクターに患者(おもちゃ)を見せ確認する。
すると、手の1箇所を押すと動くおもちゃだとわかった。

ぬいぐるみのおもちゃは修理が若干困難だ。
なぜなら大抵のおもちゃはぬいぐるみの縫製をとり基盤を取り出さなければいけない。しかも修理後縫い直さなければいけない。

時折、縫い目が若干ズレていたり、脱毛症のような跡が時々できたりすることもある。

とりあえず分解し中を確認する。
他のおもちゃドクターと一緒に確認する。どうやら配線が一本切れているらしいとわかる。

基盤は胴体にあり、配線は手の先に伸びている。それがなにかの拍子で切れてしまったようだ。
まあよくある断線のパターンだ。実際、多くの場合断線は接続部で起こる。

切れた部分をハンダゴテでつけ直し、ぬいぐるみの切りあけた部分を縫製する。

修理の完了だ。

 今回は配線が壊れた痕跡があり、物理的に切れていた。割と簡単な部類の故障だったが、誰もがすぐに治せるわけではない。
お子さんからしても、遊んでいる時におもちゃが急に動かなくなるなんてある意味ホラーだろう。

誰か助けてくれないかという打開策の1つにおもちゃドクターという団体が存在している。
そこに属しいてるというのは、ちょっと誇らしい。

#おもちゃドクター







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