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壊れた玉転がしゲーム -おもちゃ病院ドクターの日記#13

おもちゃを傾けてカラカラ音がするようなら何か部品が外れていると思ったほうが良い。
そう教えられてから、おもちゃを預かったら静かに振ることにしている。

音の原因としては
・歯車が外れている
・部品が割れている
といった理由が多い。

先に結果を言うと今回はそのどれでもなかった。
何度かおもちゃ修理を進めると、開けてみてから「え?」と驚くことがある。
今日はそんなおもちゃだった。

先におもちゃの説明をしておこう。
預かったおもちゃは「玉転がしゲーム」と呼ばれている。昔からあるおもちゃで、私の中では「個人的ベストゲームランキング上位」の「アスレチックランドゲーム」などに似たおもちゃだ。

将棋の盤くらいか、オセロを開いた程の大きさで、分厚い板状にランダムに穴が空いている。手前のレバーを動かすと穴の中から棒状のものが出てきてスタートから転がったボールを押し、ゴールを目指すゲームだ。

ただ今回は手動レバーの動きがおかしい。手前に引けたかと思ったら次は途中で止まる。バネが動いている音はするのだが何かおかしい。
その間もずっとおもちゃの中ではカラカラと音がする。このときは『歯車か何かが中で外れたのかな?』と思っていた。

歯車が壊れていたり、部品が割れていた場合、固定されていない部品が動かないよう裏蓋は慎重に外さなければいけない。
裏蓋のネジを外してから、そのままそっと全面に貼られた板を剥がす。

意外だったのだが、何も壊れてはいなかった。


プラスチックの割れもない。そもそも歯車も使っていない。すべてバネだけで動いているおもちゃだった。

じゃあ何がカラカラいっていたのか。

さらによく見ると小さなプラスチックの玉が目に入る。

……「BB弾」に見える。
……いや、「BB弾」がこんなところにあるはずがない。

予想外のことが起こると目の前に見えるものすら信じられなくなるものだが、目に入ってきたものは小さくて丸いプラスチックの玉だった。

BB弾とは通常、エアガンなどの玉として使われ、迷彩服を着て行うサバイバルゲーム等で使われるものだ。

おもちゃがサバイバルゲームの激戦区に放置されていれば納得もできるのだが、もちろんそんなはずもなく。
数秒ほど修理もせず『なんでここにあるんだろう…』と考えてしまった。

とりあえずピンセットでBB弾を取り出し、試しにおもちゃを動かしてみるとスムーズに動く。
たぶん内部でBB弾がネジや部品に絡まり動かなくしていたのだろう。

改めておもちゃの表側を見る。

すると……なんというか、おもちゃの部品が吹っ飛んで無くなっている理由がわかった気がした。たぶんBB弾が部品内に引っかかったまま無理矢理動かし、バネ式のハンドルが耐えきれず表の部品を文字通り吹っ飛ばしたのだろう……。

たぶん、このおもちゃの持ち主は、本来大きめのプラスチックの玉を動かすゲームに、小さなプラスチックの玉をばら撒いて参戦させたのだと思う。きっと面白くて良い案だと思ったことだろう。
BB弾が縦横無尽に動く様子は面白かっただろうけれど、小さすぎるプラスチックの玉は部品の隙間から内部に入り込み、全てを壊していったのだと思う。
その時の慌てぶりが目に浮かぶ。

力任せに動かしたんだと思われる内部基盤に入ったヒビをそっとさわり強度を確かめる。無理やり引っ張った跡が白く浮き出ていた。

まあ楽しんだのなら何より。
おもちゃも本望というものだろう。

想定外の遊び方をする子供達、その発想を眺める遊びに私はまだまだ飽きそうにない。






お読みいただきありがとうございます。 引き続きおもちゃ修理がんばります!