『ポエティカル行路』 2023.11.16

2023.11.16(荒川を眺めに)

1.

不忍通りを北西に上がる。
今日の世界へあいさつ。
新鮮な朝の手触りが好きだ。

クリスマスイリュミネーションをイチョウの木に取りつける作業が行われている。

準備中のラーメン屋からは麺をゆでる匂い。

動坂下の交差点を左に折れ、田端駅へ、もう北区にいる。

どの道を進むか、人生の小さな選択を歩いているこのささやかな時の中に感じる。

ぽかぼかと陽の光を背に浴びて扇大橋までの道を歩く。

ここ数日、やっていると心に詩がうまれるような仕事を見つけることは出来ないものかと考えている。

それはきっと自分とその仕事との化学反応のようなものによるだろう。

詩を書くことを本職としたいと考えているわけではない。

実を言うと今まで詩が書けたと心からの確信を得たことはない。それらしいものがうまれている気がするだけだ。

詩が心にうまれることと、それを書くことは別のことであると思う。

そうした考えを手放して歩き続けていると、つるんと光る川面が視界に入り、橋の上からあらかわ遊園の小さな観覧車が見える。

隅田川を越え、荒川の上も歩く。
長い橋を二つ渡る。

2.

昨日、今日と二日続けて道でアイスを食べる人を見かける。

荒川べりのぽかーんとした空気の中を歩き続けたらどんなだろうと想像する。

ピカピカの白バイが2台通り過ぎるのを眺める。

コンビニで買った水を小脇に抱えたまま鉛筆でメモをとる。荒川まで行こうとの今日の小さな旅の目的は一応完結しているのだが、むしろその後の少し気が抜けたゆるい歩行が今日の日に合っているような気がする。

再び隅田川を今度は反対の方向へ向かって渡る。あらかわ遊園がすぐ近くに見える。

隅田川の水がすっとそこにおさまって静かに清潔に流れる感じも悪くない。

川にもそれぞれの表情がある。

道の途中のそば屋へ立ち寄る。
木曜割引ということでかつ丼セットを頼んでしまったため、お腹いっぱいとなり、いっそう気がゆるむ。お昼寝しながら歩いているような気分。

田端駅経由 荒川土手行きのバスとすれ違う。終点が荒川の土手というのがシュールでいい。

街で見かける真面目な顔でやたらとノートに書き込みをする人、たいてい少し頭のネジがはずれたような感じの人が多いのだが、僕もまったくそれと同じようなことをしているのだから、と苦笑しつつ歩みを進める。

何かをノートに書き込んでしまえば、それについてそれ以上考えなくてすむ。

純粋な歩行の助けにメモ書きはなり得る。
思考をポケットに落として街を歩く。

明日は近隣をぶらついてSide Streetsを掘ろうと思う。

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