congratulation

大学の卒業式に出席した。
式典で印象深かったのは、高校までのそれとは違って別れの寂しさのようなものがなかったことだ。成績優秀者の表彰、学長の言葉、学生代表の答辞が行われるだけのシンプルで乾いた式だった。
私個人に関しては、嫌いな同期と式の時間が被っていたため終始ピリピリしていた。最後の最後までこんなことを考えている自分に呆れてしまう。

式が終わり、仲の良かった同級生たちと写真を撮った。私はポラロイドを持って行っていたので、いつもよりおめかしをした女の子たちの写真をたくさん撮り、よく撮れていたものはプレゼントした。
会えるのは最後かもしれないというのに、少しも湿っぽい感じにはならなくて「また会おうね!」と言って写真を撮ったらすぐに別れた。きちんと別れたというより、みんなそれぞれ部活やサークルの集まりに引っ張りだこで、気がついたら彼氏と私と共通の友人(T助)の3人だけになっていた。

3人ともその後の予定がなかったので、その辺をぶらぶらすることになった。T助が明日彼女とディズニーに行くというから、デート服を見繕いに行き、カフェにも入った。ケーキを食べたあと、ビルに登って65階から夜景を見た。夜景を見ながら、全然帰りたくないねと言いあった。
私たちは大学で毎日一緒にいたけど、T助は関西で働くので今までのようには会えなくなってしまう。大人だからお金もあるしいつでも会いに行けるとは思うのだけど、無性に寂しくなってしまった。二人も同じように感じていたようで、3人でポツポツと話しては長く黙り込んでいた。

ビルを降りたら良い時間になっていて、海辺を歩いて帰ることにした。コンビニでお酒とお菓子を買って行く。海に着いた時にはさっきの泣きそうに寂しい気持ちはなくなっていて、お酒を片手に「毎年夏にはキャンプしたいよね、お互い家庭を持ったとしたら何世帯かで参加したりしてさー」とか、明るい未来の話をするのに忙しくなっていた。

大学生だった時間は終わるけど、その後の人生はまだまだ長く続く。私たち3人はもしかしたら長く会えなくなるかもしれないし、私と彼が別れて、3人の仲自体が崩れる可能性だってあると思う。そうだとしても、卒業式の日に「寂しいから帰りたくない」と言いあえる人たちに出会えた幸運をずっと噛み締め続けて生きて行く。


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