バレンタインデーの日の日記です。

バレンタインデーのお菓子屋は忙しい。
いつも混んでくると感じ悪い人なんかもくるから身構えるけど、今日だけは特別。みんなに少しだけ寄り添える。

ハート型のチョコやらチョコ味のケーキやらをたくさんの女の人たちが買っていく。お得意様のお客さんでも、いつもより商品を見つめる顔が真剣そうだ。
「このラッピング、赤いリボンにしてください」
「ケーキにハート型のピック刺してもらえますか？」
と言われたら、張り切って刺したり包んだりする。

もう少しで閉店という時にツーピースを着た中年の女性がやってきた。
むんずとボンボンショコラの3個入りを掴んでレジまで持ってくる。紺色のお洋服と渋い紫色のチョコレートの箱がやたらと似合っていて、とってもカッコよかった。

「紙袋をつけますか？」と聞いたら、「自宅用だから…要りません」と少し苦笑いで言う。なんて素敵なんだろう。帰ってパートナーか家族に渡すのだろうか。

店を閉めて閉店作業をする。店長はお子さんがインフルエンザにかかってしまい、奥さんからもチョコレートをもらえていないらしい。「だから僕が買って行こうかと思って」と言っていた。

タイムカードを押したらまっすぐに帰る。
明後日に会う約束をした人のために今夜はチョコクッキーを焼かなくてはいけない。