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英語の冠詞を使い分けるコツ ─ 定冠詞の場合

冠詞について、学校英語では、「初めて出てきた名詞には不定冠詞(aまたはan)を、2度目に出てきた場合には定冠詞(the)を使う」と説明されます。が、これから説明してきますが、実際に冠詞を自分で使う場面となると、こんなとても簡単な説明だけでは、分からなくてもしょうがないと言うのが実情です。

ということから、まず、今回は「定冠詞」について掘り下げてみようと思います。というのも、定冠詞には、じつはいろいろな使い方があって、不定冠詞よりも複雑だからです。ここがわかると冠詞の難しさ、そして使い方のコツがわかると思います。

そもそも「定冠詞」とは何か

まず、定冠詞とはどういうものか、辞書の定義から見てみましょう。

ヨーロッパ諸語にみられる冠詞の一つ。不定冠詞に対して、それを付した名詞が、特定の、あるいは既知の事物や人を指すことを示す。

日本国語大辞典

定冠詞は、聞き手・読み手が指示対象(その名詞が指し示す対象)を特定できるという前提で使用される。

Wikipedia

ポイントは「特定」「特定化」

こうした定義からすると、定冠詞は指している内容を受け手が「特定」できる名詞に付ける冠詞です。この「特定」できること、「特定化」が、非常に重要なポイントです。

そして、学校英語では、「特定化」の一種として、「前に出てきたもの、既出のものにはtheをつける」と説明されるわけです。

ここでは、さらに、定冠詞の本質をつかまえるために、この「特定」「特定化」とはなにか?について深掘りをしましょう。じつは、「特定」「特定化」とはどう言うものかが、定冠詞の「複雑さ」の原因となっており、定冠詞の理解に欠かせないからです。なぜなら「特定化」には複数のパターンがあるからです。

定冠詞の起源は、「それ」を表す指示詞

「特定」「特定化」とは何かについて深堀りするために、定冠詞の起源について遡ってみます。

じつは、ヨーロッパの主要な言語のもととなっているラテン語には冠詞がありませんでした。が、ラテン語の子孫であるロマンス諸語のイタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語には冠詞があります。ラテン語がロマンス諸語に分化し、それぞれ発展していく中で、定冠詞が深化していきました。

ただ、冠詞がないラテン語にも、定冠詞の萌芽と呼べるものがありました。それが「それ、その」にあたる指示詞です。その後、ロマンス諸語では、次第に指し示す役割を弱めて、話題にのぼった人やものについて提示するという、現代の定冠詞としての役割を明確にしていきます。

英語の定冠詞theも「それ、その」が基本

英語の祖先は、ゲルマン諸語になりますが、定冠詞theは「それ」を表す英語の古い指示詞がもととなっている点は同じです。

このように、定冠詞は、起源からして、「指示性」というものが基本的な性質なのです。ですから、定冠詞の「特定」「特定化」とは、弱まってはいるものの、「それ、その」という指示性です。

定冠詞が示すのは、相手がそれだとわかってくれること

ちなみに、辞書で確かめると「特定」とは、読んで字のごとく「特にそれと定まっていること」(日本国語大辞典)です。だから、定冠詞は「話し手が相手に伝えたい名詞について、自分の指しているものを相手が分かってくれる」ということを示しています。

ここで、学校文法の説明を思い出しますと、初めて出てきたものには不定冠詞、直前に話したもの、既出のものには定冠詞をつけると言われたのではないでしょうか。既に話したものは「特定」できますから、「自分の指しているものを相手が分かってくれる」という条件にぴったり当てはまります。
しかし、難しいのは、こういう場合だけが「特定」「特定化」ではないことです。

このほかの特定化の種類:「1つしかないもの」

例えば、太陽、月などの一つしかないものに定冠詞をつけることになっていますね。これはなぜでしょうか?

というのも、太陽、月が一つしかなくそれがなにを指すかを、一応の常識人であれば誰もが知っています。このように、だから、「相手がわかってくれる」、すなわち「特定」されている状態と言えます。世の中に一つしかないものは、いやでも自動的に「特定」できるので定冠詞を付ける。これも「特定」の例になります。

英語の冠詞で一番難しいところ ─ 「総称表現」

ここまでは、定冠詞について、学校英語でもある程度、説明がされている点です。これからいよいよモヤモヤとした領域、一番難しいところに入ります。これが総称による「特定」のケースです。

「猫」という名詞について考えてみましょう。「猫」と言う時に、いつも近所を歩いているあの「猫」とか、隣で飼っているタマであれば、個別の具体的な猫でして、家族であるとか近所の人とか、それを知っている人たちの間では、「特定」できます。

Two cats

「猫は動物である」という時の「猫」とは

それでは「猫は動物である」という時の「猫」はどうでしょうか?

この「猫」は、隣の猫や自分の飼っている個別の猫ではありません。動物学の分類上で言えば、ネコ属のイエネコに属している、皆が思い浮かべる、あの猫一般を指しています。この「猫」は、特定の具体的な個体である猫ではなく、一般人であれば「ああ、猫ってこういうもんだよね」と思い浮かべる一般的・抽象的な猫というものの総称です。こういう名詞の捉え方を「総称表現」と言います。

じつは、総称表現は、仕事などで抽象的な事柄を扱いたい時に頻繁に使用します。そして、人間が社会をつくって、場合によっては、抽象的な概念を伝え合おうとする時に必ず必要となる表現です。その割には、学校文法ではほとんど触れていないと思います。

さらに、運の悪いことに、英語の総称表現はちょっと複雑です。

「猫は動物である」という場合の「猫」について、特定という視点から検討します。

この「猫」は、うちの猫や隣の猫のように具体的な個体が「特定」されていません。このように抽象的ではあります。が、動物の中で「猫」という特徴を持っているもの、という意味において、だれもがイメージを浮かべることができます。ということは、「猫は動物である」と言われた時には、受け手は「ああ、あの猫と言うものだね」と了解できます。これは、受け手は話し手が伝えようとしている「猫」の概念について了解しているという意味で「特定化」されていることになります。

総称表現のときに冠詞はどうするのか?

それでは、こうした抽象的な一般概念について伝えようとする場合に、冠詞をどうするのか?が問題となります。

先に、比較のために、ラテン語起源の、イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語の場合で言います。この場合には、定冠詞を名詞につけます。それは、ああ猫というものだねと聞き手も一般概念として了解している、すなわち「特定」できていると考えるからです。ここでも「特定」できれば定冠詞をつけるという原則が生きています。

なお、定冠詞+名詞単数形とするか、定冠詞+名詞複数形とするかによって、ニュアンスが異なってきますが、ここでは詳しくは触れません。結論だけ言うと、定冠詞+複数形がより一般的です(普通名詞の場合)。

英語の総称表現はとくに難しい

それでは英語ではどうするでしょうか?
単純ではない、というのが結論です。だから難しいということです。

以下では、総称表現について、冠詞と名詞の組み合わせで検討します。

定冠詞+名詞単数形(the cat) による総称表現

まず、定冠詞+名詞単数形the catですが、これは英語でも一般概念を表すために使うことがあります。文法的に誤りではありません。ただ、非常に硬い表現で、哲学や科学論文などで使います。日本語にあえて訳せば、「そもそも、猫なるものは」というところでしょうか。
というのも、この総称表現は、さきほど紹介したラテン語系の言語の表現、とくにフランス語の語法をまねた表現だからです。したがって、いまでも公文書や論文のような固い言葉でしばしば使われますが、話し言葉ではまず使わないということになります。

定冠詞+名詞単数形(the cats)の場合

これに対して、イタリア語やスペイン語などでよく使う、定冠詞+名詞複数形は、総称表現ではまず使いません。例えば、the catsと言ったとすると、これは一般概念ではなく、前に出てきた具体的な「そのネコたち、あの猫たち」の意味になります。「特定された個々の個体すべてが」ということです。これが英語独自のところになります。

では、英語で総称表現をしたい場合に最も使われる表現はなにか?が次のテーマです。

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