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Lapin Ange獣医師の「ネットで見たんだけど・・」 #7: この子イビキすごい! えっ,ワタシ?

前回,ワンちゃんの食糞について解説しました。 その姿や仕草の可愛さ,愛くるしさゆえに,目撃したときの衝撃が大きいものですが,今回も,愛らしい見た目に似合わない「イビキ」のお話です。

病気?

真夜中,寝室に響く異音,ダークサイドからの呼び声かと目を覚ますと,正体はワンちゃんだった,という経験がある方もいらっしゃるかと思います。 パートナーに文句を言おうとしたけれど,イビキの元は愛犬だったと判り心配になったかもしれません。 これは正常? 鼻か喉が悪い? 気管の問題? ネットに多く見られる解説によると,ワンちゃんのイビキの原因は,概ね人間のそれと大差ないようですが,本当のところ,どうなのでしょうか?  最近,petMDの獣医師 Dr. Rania Gollakner が,ワンちゃんのイビキの原因と対策について寄稿しましたので,その内容をご紹介します。

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イビキの原因

体の形態

犬のイビキの一般的な原因は,気道の構造によるものです。 短頭種,すなわち吻が短いことは,イビキの解剖学的な原因になりやすいです。 フレンチ ブルドッグ,イングリッシュ ブルドッグ,パグ,ペキニーズ,ボストン テリアなど,これらの犬は,呼吸困難やイビキを誘発する,次の様な構造的な問題を有している可能性があります。

  • 軟口蓋が長い:軟口蓋は,上顎の奥の方(熱いものを食べて皮がめくれる硬い部分よりも奥の柔らかい部分)で,​​短頭種に見られる長い軟口蓋は,気​​管の開口部を部分的に塞いでいます。

  • 鼻孔(鼻の穴)が狭い:これにより,呼吸が困難になります。

  • 気管が狭い:犬が息を吸うときに,狭い気道が収縮します。 (柔らかいストローで,マックシェイクを飲むことを想像してください)

  • 喉頭の形成異常:この組織は気道の両側に位置し,気流を妨げます。

アレルギー

アレルギーにより,気道の組織が腫れたり,炎症を起こしたりすることがあります。 気道の水腫(むくみ)は気流を制限し,イビキにつながります。

肥満

肥満は,種々の健康障害に加えてイビキを引き起こす可能性があります。 気道の周りの余分な脂肪は,気管に圧力をかけ,気道を狭めます。

姿勢

睡眠時の姿勢が,一時的なイビキの原因になることがあります。 たとえば,犬が仰向けになっていて,舌が喉の奥の方に弛緩(ダランとゆるんだ状態)していると,いびきをかく可能性があります。 また,犬がぬいぐるみなどに首を置いていると,首に圧力がかかり,イビキをかく可能性があります。

感染症などの病気

アレルギーと同様に,感染症などの病気によって,気道の組織が腫れたり炎症を起こしたりすることがあります。 イビキを誘発する可能性がある一般的な病気は次のとおりです。

  • 上気道感染症

  • ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)

  • 膿瘍

  • ダニ

  • 真菌(カビ)感染症

腫瘍など

犬のイビキの原因として,気道内の腫瘍や増生組織が気流を妨げる場合があります。  鼻ポリープなど,一部の腫瘍は,良性であるけれども,呼吸を妨げるため,問題となる可能性があります。
他に,鼻の癌や鼻線維肉腫など,悪性腫瘍の場合もあります。 これらは,ポリープと同様に気道を塞ぎますが,体内の他の部分に広がることもあります。

体液の貯留

病気や外傷によって,鼻腔内に滲出液や凝血塊(凝固した血液)が貯留することがあります。 体液の貯留は気道を狭め,空気の流れに影響します。

異物

犬は匂いを嗅ぐことで,環境を探査します。 そのため,誤って異物を吸い込んでしまうことがあります。 異物は,イビキだけでなく,くしゃみや鼻汁など,他の臨床的兆候を引き起こす可能性があります。

気にすべきイビキは?

飼い主にとって,犬のイビキが心配すべきものかどうかを判断するのは必ずしも容易ではありませんが,考慮すべきことの一つは,それが最近起こったものかどうかです。 以前はなかったものが,最近になって起こったというのは,調べるべき変化であることを示唆しています。 イビキに伴って,鼻汁,くしゃみ,活動性の変化などの臨床的兆候が見られる場合にも注意する必要があります。

短頭種のイビキは正常ですが,起きているときも含めて常に発生する場合は,快適な呼吸に影響を与える可能性があり,特に暖かい季節やストレスの多い時期には,呼吸器系の危機に陥る危険があります。 場合によっては,気道を塞いでいる組織を除去する手術により,QOL (Quality of Life) が大幅に向上することがあります。

犬のイビキが気になる場合は,獣医師に相談してください。 イビキがどのように始まったか,何をしたときにイビキが発生したか,イビキが改善したとき,悪化したとき,他の異常な兆候の詳細な履歴を獣医師に示すことが,原因を特定するのに役立ちます。  X線,CTスキャン,内視鏡検査などの検査は,イビキの原因を明確に診断するのに有効です。

犬のいびきを止める方法

イビキをかく犬を静かにするには,次のことを行う必要があります。

  • 気流を妨げているものを取り除く

  • 気道を広げる

  • 姿勢を調整する

長い軟口蓋,異常な喉頭組織,異物,腫瘍などは,通常,外科的に除去することができ,それによって気道を通る空気の流れが改善されます。
イビキがアレルギーや感染症によって起こされている場合は,炎症の根本的な原因を治療することで改善される可能性があります。
過剰な体重(脂肪)を減らすと,首の周りの圧力が軽減され,イビキも止まります。

結論

今回の Dr. Rania Gollakner の稿は,特に目新しい内容ではなかったかもしれませんが,このように原因となる異常や疾患を並べられると,聞き流していたイビキもちょっと心配になりますね。 可愛いだけのヌイグルミと違い,生きたワンちゃんと暮らすことは,たくさんの心配や,ときには悲しみも引き受けることになりますが,それも含めて,限りない楽しみや喜びを得ることだと思います。 巷では「蛙化」なる言葉が取り沙汰されていますが,愛するワンちゃんなら,大きなイビキもまた可愛いと思えることでしょう。 ワンちゃんと思ったイビキの主がパートナーだった場合は・・・できれば平和的に解決してください。


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