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さよならだけが、人生か。

さよならだけが人生だ。
人生は出会って別れてのただ繰り返し。人との出会いには、必ず別れがやってくる。

家族、友達、恋人、仲間、自分と一緒にいてくれる人たちと、いつか来る別れに向かって歩いているのだ。
  
では、わたしたちはさよならをするために出会うのだろうか。いつか別れてしまうのなら、なぜわたしたちは出会うのだろうか。
たまに、そんな考えてもしょうがないようなことを考えては、切なさのループにはまってしまう。

そんなとき、観ていた映画のある言葉に心が強く惹かれた。

「さよならだけの人生じゃ、つまんねーぞ!」

映画『色即ぜねれーしょん』(2009)で、銀杏BOYZの峯田和伸演じる、ユースホステル管理人・ヒゲゴジラが言っていた台詞だ。
わたしは自分自身のもやもやした部分をつつかれた気がして、はっとした。

そうだ、わたしはいつだって別れを前提にして生きていた。

「ずっと仲良しでいようね」、「一生一緒だよ」、「来年もまたここに来よう」
大好きな人たちといつまで一緒にいられるのかなんて、曖昧で不確かなものを信じるのが怖くて、こんな風に未来の話をするのが大嫌いだった。

きっと、相手に合わせて返事をしていたわたしの顔は、そのたびほんの少し引きつっていたと思う。
そんなこと言ってても、一年後、一か月後、明日のことだってわからないのに。
だから、もしダメになってもできる限りダメージを受けないように、いつか来る別れを意識するのが当たり前になっていた。

でもそれって本当に相手を信頼して、深い関係を築けていたのだろうか。わたしはどこかで諦めていたんじゃないか。ふと、そんなことを思ってしまった。

別れはたしかに必ずやってくる。大切な人たちとの関係にも、いつか終わりが来る。それはシンプルに関係が綻んだ末の別離かもしれないし、抗いようのない何かによるものなのかもしれない。

もしかしたら、今この瞬間にだって別れがやってくる可能性もある。このご時世、何が起こるか分からない世の中だから。ミサイルが飛んできたりとかね。
だからやっぱり、大好きな人たちとの未来が当たり前に来るなんて思えない。

でも先のことを気にしすぎるあまり、わたしは目の前の相手を本気で信頼することができていなかったということに気づいた。
「絶対」のない未来の約束はしたくないけれど、今この瞬間一緒にいて、わたしを受け入れてくれる人たちがいることは紛れもない事実で、それはわたし自身が一番分かっているはずなのに。

予防線をはって、別れに対する耐性をつけていたつもりが、結局わたし自身が一番さよならを恐れていた。
不確かなものにとらわれて、勝手に苦しくしていたのは自分自身だった。

ここで初めて、あの映画のメッセージが分かった気がした。

タイトルにもかけられている仏語【色即是空】。
それは、この世にある一切の物質的なものに実体はなく、空(くう)であるということ。こうだと思っていてもすぐに変わってしまう。何ひとつたしかなものはない。この瞬間瞬間、全ては過去になっていく。
そんな刹那のなかで今わたしができることは、「いま、この瞬間」を大切に生きることなのかもしれない。

さよならだけが人生だ。
たしかにそうかもしれない。でもそれだけを思って生きる人生はどうしたって悲しい。
だから今はただ、刹那的なこの瞬間に強烈なスポットライトをあてて、自分が大切に思う人たちを信頼すること。心がしあわせで満たされるならそれでいいんだ。
その結果として、未来はきっと勝手にできていくのだから。

#エッセイ #コラム #刹那

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