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【小説】夜明けのすべて

#ネタバレ

小説と、同名の映画についてのネタバレをがっつり含みます。
すでに読んだ人や読む予定のない人に感想をまくし立てて話すかのように、とりとめなく書き連ねていきます。


藤沢さんが怒りを爆発させる理由、わかる。

上司が仕事を振るときの
「あ、コピーね」

誕生日を迎えた友人の
「もう40人に祝われちゃった。返信するのが大変〜」

私なら、余裕がないときは苛立ってしまうだろう。
怒り出す理由のチョイスが絶妙にリアルだと思った。私は、藤沢さんが理不尽に怒っているとは思わない。 
山添くんが炭酸飲料のペットボトルを開ける音で怒り出したのは突飛に感じたが、映画では少しアレンジされていて、あーこりゃ怒るわ、と思った。


山添くんが初めて発作を起こし、病院に行くが原因が見つからず心療内科を予約したときの「早く心療内科に行きたい。そこに行けさえすれば、この苦しい状態をすぐに治してくれる」という切なる期待がリアル。
そして医師に「治るのに10〜20年はかかるよ」と言われ、絶望するところまでがセット。残酷なまでにリアル。


山添くん、藤沢さんと話すときの一人称が「ぼく」「俺」でころころ変わる。どんな意図があるのだろう。本音をさらけ出して、ありのままの自分でいられてるときに「俺」になるのかな。


映画の感想をまくしたてるシーンとお見舞いのシーンが特に好き。


最後の
「藤沢さんを好きになることはできます」
「山添くんを好きになりそう、ではなく、好きになることができる」
友達でも恋人でもない、同士のような助け合える関係で物語は進むが、最後は恋愛をほのめかしている?


物語を通して、山添くんのほうが変化が顕著。人と関わるようになったり、できないことの代替案を見つけて実践するようになったり。
藤沢さんは、物語の中でどう変化しているのだろう?山添くんと比べると見えづらい。
苛立ちを鎮める方法(草取り)を見つけたこと。
どう思われるかを気にせず話せる相手に出会えたこと。
人に喜んでもらうのが好きだと気づけたこと。
他には?


そして、表紙。砂時計。
上の砂が下に落ちる。
ひっくり返すと、さっきまで下だった砂がさっきまで上だった方に落ちる。
一方が他方へ、交互に与え合う。
助け合う。

そんなイメージが浮かんで、とても素敵だと思った。
さらに最近気づいたのは、上の砂の上(砂時計の外)から砂が注がれていること。
上の砂の藤沢さんが、これまで周りの人から注いでもらったものを、山添くんへ注ぐ。
優しさのリレー。

青い背景に黄色の砂。夜空に光る星のようです。

私は藤沢さんと山添くんの要素を少しずつもっていると思いながら読み、二人が夜と朝を繰り返していく様子に、自分のこともうなずいてくれていると感じ、嬉しくなりました。

二人の会話や独白が好きです。
映画化の話を知ってからは、萌音氏と北斗氏の姿を想像しながら読みました。藤沢さんが音痴に歌いながら映画の感想をまくしたてるシーンは、歌姫の萌音氏がどう歌うのだろうとワクワクしました。このシーンこそ映画で見たいと思ったけれど、曲や映画の著作権の関係で難しいだろうなと諦めたり。


また別のnoteで、映画の感想を綴りたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。