マガジンのカバー画像

短めのやつ

20
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】ナノドラマ

歴史の教科書を読んでいたらいつの間にか自分の中で人間の価値が低くなっていることに気づく。 そしてその人間のために命を賭している人たちの存在を知って、ひどく自分が惨めなものに思えてくる。

【短編小説】プリズン・ブレイキングダウンその後…。

「ハァ…、ハァ…」  男は、一心不乱にツルハシを振り下ろし続けていた。  やがて男の正面から一筋の光が差し込み、それと同時にパラパラと光の周りの小石が崩れていく。 「ハァハァ…。やった! 脱出成功だ!」  男は、両の拳を天に突き上げ喜んだ。数瞬遅れてカランカランとツルハシが地面に落ちた金属音が辺りに鳴り響く。  男は興奮しながら光の範囲を広げていく。そしてその光が人ひとり入ることができるほどの大きさになると、男は躊躇わず光に向かって右足を一歩踏み入れた。  ーーその、

【詩】総力戦線

いつだって世界は危ういバランスの上で成り立っていて、世界を救うまでとは言わないがここ日本でも誰かが同じ分野で世界の誰かと戦っていて、戦っていない人間もその戦っている人間をどこかの分野で支えている。

【詩/詞】私以外全員人生2周目。

「優しい世界」という言葉がキライ 成立しているのならそれでいいじゃん じゃあアナタはいったいどの世界の住人なの? その言葉も結局誰かのお下がりじゃん 幼い頃からハッピーエンドの義務教育を受けてきた私たち 「子供はこういうのが好きなんでしょ」なんてエゴが見え見えの物語 気付いてるんだからバカにしないで この世界の真実に気付いたきっかけはやけに単純だった 人が普通にできることが私には何一つできなかったんだ だからって私に病名なんて付けないでね 言い訳せずにアイツらを見下ろしてこ

【短編小説】トークン

「俺が実の息子を間違えるわけねーだろ!」  そう言って、息子に化けた変身能力を持ったモンスターを殺そうとして実の息子を自らの手で殺めてしまったあの日。あの日からもう十年になる。  息子の葬式は取り行わなかった。いや、行えなかったという方が正しい。何故なら、息子は今もこうして俺の目の前に生きているからだ。  俺の息子と同じ風貌をしたソイツは、十年前と変わらない、あの時のあどけない姿のままこちらを見てニコニコと微笑んでいる。  ソイツは、息子が死んで1週間が過ぎ、俺が酒に溺

【黒歴詞#27】メサイア・コンプレックス

劣等感の存在が僕を助けた事もあったよ 自分の存在がいつまでもちっぽけで 大きくならなきゃってただ藻搔いて 生きる事すら独りじゃ満足に出来ない僕にも ヒーローに憧れた事があったんだよなあ いつからだろうヒーローが あんなに憎く思えてきたのは いつからだろうそんな僕が こんなに醜く思えてきたのは 足掻いて藻搔いて媚諂って血反吐吐いて いつか僕だって前向けんだって 胸を張って 壊れちゃったんだよ あなたは言うんだろう「努力する事も知らないで」なんて 分かってんだよ 僕よりも何倍

【詩】ヒールターン

人は皆、自分が許されるための正義を持っている。 そして自分を守るため、いとも簡単にその正義を捨てる。

【黒歴詞#15】フロムクラウド

ハロー、こんにちは 湧き上がる歓声が今 僕のポケットから鳴り響いて 耳元のイヤホンに届いています だからといってどうというわけではないくせに 少し誰かに今の気持ちを伝えたい 文字では形容できない そんなこの気持ちを あなたは今起きているのでしょうか 何をしているんでしょうか 昼頃はそんなどうでもいいことが少し気になってしまいます 暇だからかな? 雲に乗って浮かびたい 一秒足りとも無駄にしたくない この時を大切にしたい でも明日の昼には思い浮かべることすらないんだろうな ま

【短編小説】置いていかれた者達

『速報です! たった今ヒーロー戦隊「ドラゴンジャー」の面々が暗黒帝国軍のアジトへと突入した模様です! ……それでは続報が入るまで再び「ドラゴンジャー」のこれまでの歴史をまとめたVTRを――』  無言でモニターを眺めていたドラゴンジャーブラックは、見慣れたドラゴンジャーの活躍シーンが流れ始める前にリモコンを押して電源を切る。  そんな中、ガチャガチャと鍵が開く音が聞こえたかと思えば、終末とは考えられないほどコミカルな足音が近づいてきているのをブラックはいち早く察知していた。

【黒歴詞#30】あすなろ

明日には終わりがあって いつかに始まりはやって来ないよ 子供の頃に配られた真っ白なキャンパスに埃を被せて今日も部屋の中を探している どうしようもない絵描きのお話 不恰好な棒人間を描いた それが始まり 明日には描けるよ 明日には描けるよ 今日の苦労を先延ばしにしていた そんな日々を後悔した過去 自分より下の人間を見て安堵した夜もある 思えばそんな人間に誰かを共感させることなんてできないよな 明日には終わりがあって いつかに始まりはやって来ないよ 子供の頃に配られた真っ白な

【短編小説】深海図書館

 止まない雨は確かにそこにあった。  雨はずっと降り続けて私たちの街をごくっと飲み込んだ。  大人たちは暗い顔のままどこかへ消えてしまったが、私は世界が大きなプールになってとても、とてもよろこんだ。  だから私に罰が下ったのだ。  その日の私はひどく落ちこんでいた。 「遠波さん、どうしてあなたは大きい声で歌わないの?」  それは高校に入学して初めての合唱コンクールに向けて初めての放課後練習をしている時のことだった。  先生は練習をいきなり止めて、私の腕をひっぱりクラスメ

『鈍情』【20字小説】

尖りを利鞘に納め、ぬるま湯で腐り乱した。 小牧幸助さんの行われている素敵な企画、『小牧幸助文学賞』に参加させて頂きました。 「純情」じゃないです「鈍情」です。「ドンジョウ」でも「なまくらなさけ」でも読めるしどちらもとても語呂が良い感じです。本来はもっとシンプルな内容だったのですが、言葉遊びが楽しくなってきちゃってどんどん難解になっていきました。兎にも角にも「利鞘」に全てが懸かっています。

『戦力外通告』【20字小説】

「奥の部屋で遊んどいてください」 …えっ? 小牧幸助さんの行われている素敵な企画、『小牧幸助文学賞』に参加させて頂きました。 実話と言えば実話なのですが、実体験ではなく外出中に偶然聞こえてきた会話で面白かったランキング2位に入ったものを20字に収めるために軽くアレンジしてみました。唐突にギャグ漫画とかを描き始めない限り使い所が無さすぎてメモ帳でこのまま息を引き取るかと思われたものだったので、蘇生させる機会を頂けて感謝です。

『あの方舟の』【20字小説】

番に成れなかった方舟の乗客がいるはずで。 小牧幸助さんの行われている素敵な企画、『小牧幸助文学賞』に参加させて頂きました。 あの本のあの一節の内容です。小説の本文中にあの本から引用とかできたら格好良いからいずれ読破したいなーとは思いつつも中々勇気が出ません。なんせぶっといんであの本。