顧客分析の方法7選【事業計画書の作り方⑤-1】
おはようございます。現役信用金庫マン 兼 中小企業診断士事務所代表の山西です。当noteでは、経営力強化につながる情報を経営者や支援機関に向けて発信しています。
前回は、企業ドメインの設定方法をお伝えしました。
企業ドメインの設定は、市場分析をする上で必須の作業です。そして企業ドメインを設定した後は、いよいよ市場分析に入ります。
市場は主に3者で成り立っています。
これらのステークホルダーの関係性を分析することを3C分析と言います。一般的に市場分析では、企業が自身でコントロールできない「顧客」「競合他社」について分析します。
今回の記事では、顧客分析の様々な方法についてお伝えします。
Ⅰ.目的
顧客分析は何のために行うのでしょうか。
顧客分析は、適切なターゲティングのために行います。ターゲティングの前半作業であるセグメンテーションのために必要なのです。
ターゲティングと言えば、例えば「30代女性をターゲットにしている」というように年齢や性別を基に使われることが多いですが、この年齢や性別での区切りが意味ある区切りでないといけません。
売る商品が30代女性にも40代女性にも魅力的なのに、わざわざ30代女性に絞るのであれば非常にもったいない話です。30代であることに意味はあるのか、40代には受けない理由はあるのか、十分に考える必要があります。
予め顧客分析を行うことで、この商品は30代女性には満足度が高いが、40代になるとそれほど高くなくなる、という結果を知っていれば、30代女性をターゲットにすることで、より効率的に販売することができます。
このように適切なターゲティングのためには、適切な顧客分析が必要なのです。
Ⅱ.顧客分析7選
1.デシル分析
デシル分析とは、顧客の購入金額の大小に応じて10個のグループに分ける手法です。※「デシル」はラテン語で「10等分」という意味。
全ての顧客を期間内の購入総額順に並べて、10等分するだけでできます。そうして分類されたグループの中からターゲットを選択することになります。
例えば「10番目のグループは購買総額が少ないので、単価を●●円に引き上げられるよう施策を考えよう」「1番上のグループはすでに当社のファンなのでより少ないコストでさらに単価を上げられそう」等と考えます。
デメリットも大きいため、実際には活用可能性が大きいとは言えません。例えば、昔はよく購入してくれていたけれど最近は来てくれていない、直近で大きい購入をしてくれたが、1回のみの取引で終わりそう、というような深さをデシル分析では無視してしまいます。
2.RFM分析
RFM分析とは「Recency(最新購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(累計購入額)」の3つの切り口で顧客を分類する方法です。
それぞれ3つの切り口ごとにスコアを算出します。
・Recency・・・購入日の近さに応じたスコア
・Frequency・・・購入頻度の高さに応じたスコア
・Monetary・・・購入金額の高さに応じたスコア
基本的にスコアは高いお客さんが、当社への貢献度が高い顧客です。
これらの切り口に応じて顧客をグループ分けします。
例えば、
Aグループ:R・F・Mいずれも高い
Bグループ:R・Fは高いが、Mは低い
Cグループ:R・Mは高いが、Fは低い
という感じです。
これらの中から1つあるいは複数のグループを選択し、メインターゲットとして設定します。
RFM分析では、デシル分析と比較してより深いインサイトが得られる可能性は高まりますが、定性的な情報を扱わないため、消費者の個性を組み込んだターゲティングには繋がりづらいデメリットもあります。
3.セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、顧客を切り口に応じてセグメント(細分化)する手法です。
上記2つの手法と違い、定性情報を使うのが大きな特徴です。
色々な切り口が考えられますが、一般的には4種類の切り口(変数)があります。
・デモグラフィック変数・・・顧客属性(年齢、性別等)
・ジオグラフィック変数・・・地理的変数(居住地等)
・サイコグラフィック変数・・・心理的変数(趣味・価値観等)
・ビヘイビア変数・・・行動的変数
どの変数を使用すべきかは、分析の目的や対象者によって異なります。しかし、基本的には、サイコグラフィック変数やビヘイビア変数がより深いインサイトを得られる分析とされています。この辺りは次回の記事で詳しく説明します。
定性的な切り口で分析するセグメンテーション分析は、手間がかかる分、より深いインサイトをえられやすいです。
4.コホート分析
コホート分析とは、同一の性質を持つ集団(cohort)に分けて購買行動を分析する手法です。
コホートとは、年齢や世代、時代によって分けるのが分かりやすい例でしょう。Z世代、ゆとり世代、氷河期世代、団塊の世代等です。
あらかじめ分けてから分析する点に特長があります。行動を分析し、その行動の性質によってセグメントする方法が多いですが、コホート分析は予めグループ分けした後に分析に臨みます。
そのため、グループに分ける大変さは少なくて済むメリットがあります。一方で、グループ分けが簡単な手法は、深いインサイトが得られづらいデメリットが付きまといます。
5. LTV分析
LTV分析は、顧客生涯価値を分析する手法です。
LTVとは、LifeTimeValueの頭文字を取ったもので、顧客生涯価値を意味します。要は、1人の顧客が一生の間に当社にもたらす利益のことです。
LTVの算出には様々な計算式がありますが、下のような式が一例です。
上記式は、実際にソフトバンクで使用されているものです。
LTV分析の特徴は2点。(1)売上ベースではなく利益ベースで当社への貢献度が分かる点、(2)時間軸を分析に織り込んでいる点です。
このような特徴から、LTV分析を行うことで、真の意味で当社に利益をもたらす優良顧客を識別することができます。
≪メリット≫
・真の優良顧客が識別できる
≪デメリット≫
・算出するまでの手間がかかる
6. CPM分析
CPM分析(Customer Portfolio Management)は、ナーチャリング(顧客育成)のために、顧客を分類する管理手法です。
様々なやり方がありますが、次の4つの要素をもとに、顧客を10のグループに分類するのが一般的です。
・購入総額
・購入回数
・在籍期間
・離脱期間
これら4項目を基に、顧客を次の10グループに分類します。
・初回現役客
・よちよち現役客
・コツコツ現役客
・流行現役客
・優良現役客
・初回離脱客
・よちよち離脱客
・コツコツ離脱客
・流行離脱客
・優良離脱客
「あのお客さんは昔はよく来てくれてたのに、今は来ないな~」(優良離脱客)という感じで直感的に理解しやすく、継続的にフォローしていくのに優れています。
また、今後のアプローチ手法を考える際に、どんなアプローチ手法が良いのか考えやすいのも優れている点です。
7.ABC分析
ABC分析とは、パレートの法則(80:20の法則)に基づいて顧客を分類する手法です。パレートの法則とは、2割の原因が、8割の結果を生み出しているとする法則です。
顧客を当社への貢献度(売上高等)が高い順に並べ、上位2割をAランク、下位2割をCランク、その他をBランクとして分類します。パレートの法則に基づいて、このAランクが当社の売上等の約8割を生み出していると考えます。
Aランク顧客へのアプローチを中心として、BランクをAランクへ上げるにはどうすべきか、Cランク顧客へのアプローチは継続すべきか等、ランク別のアプローチを考えていきます。
Ⅲ.本当に使える顧客分析の方法
たくさんの分析手法を紹介しましたが、それぞれメリット・デメリットがあります。オススメなのは複数の手法を組み合わせるハイブリッドなやり方です。
その中でも、セグメンテーション分析をベースにするのがオススメです。これは、各分析の中で最も深いインサイトを得られる可能性が大きいためです。
他の分析手法はこのセグメンテーション分析を補うために使います。すなわち、分析の手間がかかるというデメリットを補いつつ、セグメンテーション分析で出てきた切り口(分類方法)が本当に正しいのかを検証するために使用します。
例えば、ABC分析で調査対象者を決めて、定性情報を切り口にセグメンテーションした後に、どのセグメントが魅力的なのかをLTV分析で検証する、というような流れです。
次回予告
次回は、具体的な顧客分析のやり方を紹介します。セグメンテーションやターゲティングに繋がる重要箇所なので、ぜひご覧下さい。2月17日(土)投稿予定です。
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