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最高のマーケティングについて考えてみる【後編】

おはようございます。現役信用金庫マン 兼 中小企業診断士事務所代表の山西です。当noteでは、経営力強化につながる情報を経営者や支援機関に向けて発信しています。

前回、前々回と、最高のマーケティングを考える上で「マーケティングの正体」「最高のマーケティングが実現された状態」について考えてみました。

今回はその後編ということで、最高のマーケティングの条件について、つらつらと考えていきます。

前回までのまとめ

マーケット・・・人々が売買する場、需要と供給を一致させる場
マーケティングの正体・・・消費者の課題発見から解決に至る一連の仕組みづくり
最高のマーケティング・・・消費者の課題が発生した瞬間に、ちょうど解決されること

最高のマーケティングを実現するための条件

まず結論として、最高のマーケティングを実現するためには、少なくとも以下の2つの条件を満たす必要があります。

条件①:需要予測できている
条件②:可動率が高い

それぞれ説明していきます。

条件①:需要予測できている

前回、最高のマーケティングを実現するためには、課題が発生した瞬間にすでに解決している必要があるとお話ししまいた。

つまり、消費者の課題が発生してから動いたのでは遅いのです。課題が発生する前から需要を見積もり、発生するタイミングに合わせて供給する必要があります。

近年では、AIの発展により、需要予測ができる環境が整いつつあります。統計解析には難しいモデルも多いですが、シンプルなモデルとしては回帰分析があります。

需要予測の例として、回帰分析を簡単にご紹介します。

回帰分析とは、2つのデータの関係性を調べる分析手法です。一般的に、目的変数と呼ばれるデータを、説明変数と呼ばれるデータでいかに説明するかを解析するものです。

説明変数の数の違いにより、単回帰分析と重回帰分析の2通りありますが、今回は分かりやすい単回帰分析(説明変数が1つ)について簡単に説明します。

回帰分析の例としてよく挙げられるのが、アイスクリーム屋の例。気温が上がれば売上が上がる関係性は容易に想像が付くでしょう。

気温と支出金額のデータを取って散布図としてプロットすると以下のようになります。点線は近似曲線と呼ばれ、プロットされたデータを最もそれっぽくなぞった直線になります。

一般社団法人神奈川県中小企業診断協会(https://sindan-k.com/1-takano/)

平均気温が上がれば支出金額が増えることが一目で分かりますね。そして注目すべきは、以下の式。

y = 40.248x + 138.17

これは、回帰式と呼ばれるもので、目的変数と説明変数の関係性を式で表したものです。

説明変数x(気温)が1上がれば、目的変数y(支出金額)が40.248円上がる理屈です。気温(x)が30℃なら支出金額は約1345円(40.248×30+138.17)になります。

これにより、将来の需要予測が可能となります。説明変数を使って将来の目的変数の値が分かれば、いつ、どれだけプロダクトを用意すれば良いか予測が付き、ちょうど良いタイミングで供給できるようになります。

需要予測はBtoCの事業者だけに必要されると思いがちですが、BtoBの事業者にも必要です。あくまで供給は「消費者」の需要に依存するためです。

あくまで大切なことは、目的変数を設定して、何が説明変数なのか考えようとすること。消費者が課題を感じ、需要が発生した瞬間に提供できる仕組みをマーケティングの取組みとして築き上げていきましょう。

条件②:可動率が高い

「可動率」と書いて、「べきどうりつ」と読みます。トヨタ生産方式の概念です。

可動率とは、設備を稼働させたい時にさせられる度合いのことです。保全によってもたらされる設備の信頼性を示します。

あくまで需要を起点としてそれに合わせて供給していくためには、いついかなる時でも設備を動かせる必要があります。

需要が分かったから商品を作ろう、と思った時に設備が動かなければ供給することが出来ません。

物理的な設備に限らず、いついかなる時でも供給できる環境が「可動」だと考えれば良いでしょう。当然、「需要は予測できました、でもプロダクトを用意できませんでした」では話になりません。自分のタイミングで生産できない以上、保全は非常に重要な要素になります。

最高のマーケティングを実現するためには、消費者の需要を予測できた上で、それに沿っていつでも「ちょうど」プロダクトを用意できる環境が必要となります。

おまけ①

一般的な事業プロセスと、最高のマーケティングが実現された状態の事業プロセスの比較です。

①消費者の課題発生
②企業による課題の発見
③企業によるプロダクトの準備
④企業によるプロダクトの提供
⑤消費者によるプロダクトの消費
⑥課題解決

一般的な事業プロセス

①企業による消費者の需要予測
②企業によるプロダクトの準備
③消費者の課題発生=プロダクトの提供=プロダクトの消費=課題解決

最高のマーケティングが実現された事業プロセス

おまけ②

最高のマーケティングを実現するために大切な問いを掲げておきます。自社のマーケティング環境の整備の際の参考になれば幸いです。

①誰の課題を見つけるべきか
②どんな課題を持っているか
③どんな価値を提供するか
④どんなプロダクトを提供するか
⑤どんなプロセスで提供するか
⑥どのようにプロダクトを認知してもらうか
⑦どのようにプロダクトにアクセスしてもらうか

まとめ

・マーケティング…消費者の課題発見から解決に至る一連の仕組み作り
・最高のマーケティング…消費者の課題が発生した瞬間に、ちょうど解決されること
・最高のマーケティングの要件①需要を予め知る仕組みがあること②可動率が高いこと

次回予告

次回は、「最高の事業計画の5要素」について投稿します。12月9日(土)投稿予定ですので、ぜひご覧下さい。

当noteでは、毎週土曜日に、経営者や経営支援者に向けた経営力強化につながる投稿を行っています。仕事のご依頼、お問い合わせは画面下の「クリエイターへのお問い合わせ」よりお願いします。

投稿者(山西良明)プロフィール

強い企業を作る」ことを理念に、中小企業の経営力強化に向けた支援をしています。

【経歴】
・現役信用金庫マン
 2014年より信用金庫で勤務中。営業、業務推進、融資審査、事業支援を経験。
・中小企業診断士事務所代表
 信用金庫で働きながら、2021年に中小企業診断士として個人事務所を開業。認定経営革新等支援機関として登録。

【強み】
①「資金繰り支援」と「本業支援」という両輪の経験を「現在進行形で」持っていること
徹頭徹尾やり切る性格。広く色々なことができるタイプでは無いですが、限られたことを徹底してやり尽くす性格です。

【現在受け付けている業務内容】
①経営パートナー契約
 中小企業様とのパートナー契約により、経営力強化を目的として、毎月訪問(又はリモート相談)で支援をしています。
事業計画書協同策定・実行支援
 創業/経営改善/事業再生等に向けた経営力強化支援を行っています。事業者様とともに事業内容を見直し、共同で事業計画書を策定、フォローしています。
資金繰り改善支援
 資金繰りに関する分析および提案、実行・フォローに至るまでのトータル支援をしています。資金繰り改善支援の一環として、融資承諾支援、補助金申請支援も行っています。
 (1)資金調達支援
  利益向上を目的としたご融資の承諾に向けたご支援を行います。お借入に関する事業計画書(設備投資計画や創業計画書等)策定支援および交渉に関する諸支援です。
 (2)補助金採択支援
  利益向上を目的とした補助金採択に向けたご支援を行っています。持続化補助金、ものづくり補助金、事業再構築補助金など。メインは補助事業計画書策定支援です。補助金交付決定金額の10%を基本とした成功報酬制で受け付けています。

【主な保有資格】
・中小企業診断士
 コンサルタントとしての唯一の国家資格。2017年取得
・販売士(リテールマーケティング)1級
 BtoCのマーケティング資格。2018年取得
・応用情報技術者
 IT系国家資格。2021年取得
・認定事業再生士
 事業再生の国際資格。2022年取得

【尊敬する人】
・三枝 匡(事業再生専門家)
・森岡 毅(マーケター)

【趣味】
・マラソン
 地元大会で2時間30分切りでの優勝を目指し、年365日走っています。
・読書
 海外SF、文芸誌、ビジネス書を読みます。愛読書は『三体』『V字回復の経営』

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