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王道を学びたい(ラブコメ分析)①

『婚約者さまからは逃げられない』(柚月純先生)とは?


コミックシーモアさんで今、無料で読めちゃうラブコメ「婚約者さまからは逃げられない」がめちゃくちゃおもしろい。(このタイトルのせいで、面白さが伝わりにくいな・・・)

花より男子を思わせるような経済格差のあるヒロインとヒーローの設定など、王道のラブコメなんだけど、とにかくテンポがよくてページをめくる手が止まらない。しかも、キュンッは押さえつつコミカルな描き方がうまくて、

学園ものなのに、恋のキラキラ以外を見知ってしまった(吸いも甘いも知り尽くした)アラフォ世代にも受け入れられそう。韓流好きな世代ですね。

ということで、王道ラブコメを分析することにしました。


ラブコメ漫画の型は2つのどちらか(ではないか?)


まず、まだ1巻しか出ていないのだけど、この漫画の型は「モンスター退治」だろうな、と予想されます。(詳しくは、以前書いたこちらの記事をお読みください。売れるストーリーには型があるというお話です)

王道のラブコメって、ほとんどが「喜劇の型」か「モンスター退治」ですよね。たまに、スケールが大きくなると「旅と帰還」もあるのですが、そこまで見かけない。


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「婚約者さまからは逃げられない」では、平穏な生活を送っていた主人公が、父親の勝手な口約束のせいで性格の悪い御曹司の許嫁になってしまい、これまた父親が勝手に使ってしまった借金を返すために、あれやこれやと奮闘するわけです。

主人公のやりたいことは、「運命の人を見つけること」。でもそんなご縁なんてまったくなかったところに、「借金を返して許嫁を解消する」というミッションが加わります。ところどころで、最初のwantを思い出させるようなコマが入っていたのも、なるほどなあ、と思いました。

ラブコメの場合、モンスター退治の赤字部分が、ほとんど主人公と相手役の2人で完結してしまうのが、他とは違う特徴ではないでしょうか。この物語もそうですが「悪いやつを倒す!」というのも、実際には「性格の悪い御曹司を落とす!または、落とされる」になるのだと思いました。

結末が「ハッピーエンドで決まり!」だからこそ


こうした王道漫画は、「読者の予想」→「予想通りorうまく裏切る」の繰り返しになのかなあ、と思います。読者としては、最初からもう「この2人はくっつくもの」として読み進めているわけで、そこにいかに、葛藤や面白い事件、2人の感情の変化を入れ込んでいって、最後に決定打となる葛藤を入れるのかが鍵なのかも。

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なので、実際には↑のようになるのではないかと。なので、「これドナ(これからどうなっちゃうの?)」というよりは、「これからどうやって、2人はくっつくの?(以下、これくつ)」という気も。そのときに、どう読者の期待にこたえつつ、裏切っていくのか匙加減が難しそう。

このお話の場合、これくつの期待度をあげているのが相手役のキャラ。ヤクザものとかはけっこう、設定自体でこれくつを作り上げていくのに対し、キャラで期待度を高められるのがすごいなあ。

というのも、めちゃくちゃくせものなんですこのヒーロー。冒頭で転んで地面にはいつくばっている主人公に舌打ちし、主人公を跨いで登校していくのが出会いですから。

この作者さんは、前作の「王子様には毒がある」(こちらもタイトルに反して、めちゃくちゃ面白い)もそうですが、とにかく、癖のある男の子を愛すべき存在として描くのがおじょうず。初期の作品からテンポもすごくよくって、その他のキャラもいい味です。


どうしてこんなテンポよく描けるんだろう?

で、どうしてこんなテンポよく描けるのかなあというお話しなのですが、とにかく王道の型を初回からバコバコ入れているんですね。

漫画専科でならった型って、「情報(キャラ・設定・テーマ)」「これドナ(これからどうなっちゃうの?)」「したいこと(主人公のwant)」「相手のしたいこと」「対立・葛藤」「キャラ深部」「クライマックス」

でストーリーが構成されていくことになるのですが、これらをこの漫画にあてはめていくと以下のようになります。


王道ラブコメの分析


P0-P4 主人公のwant
「情報」・・・運命の人に出会うのが夢だけど、彼氏できたことない主人公が、私立の普通科に通い、特別科に通うヒーローの存在を初めて知る。
「したいこと」・・・運命の人に会いたい(彼氏がほしい)

P5-P8 これどな
「情報」・・・ヒーローに対して「自分とはご縁のない人」と思ったけれど、目の前でコケたことから視界に入る。「これって運命?」(wantの再確認)
「これドナ(これくつ)」・・・P8で相手がどんな反応をするのか、期待を持たせる。

P9-P12 キャラ立ちで読者の期待をいい意味で裏切る
「情報」・・・転んで地面にはいつくばっている主人公に舌打ちし、主人公を跨いで登校していくのが出会い。

「これドナ」・・・ヒーローの反応で「これはラブコメだ!」とはっきり認識。さらに、このお話は、そう簡単にうまくいかなそう!!と期待が高まる。

P13-P24 家族のキャラと設定の解説、進行(テーマがはっきりする)
「情報」・・・弟(もてるしちょっとイケメン)と、誕生日で家族のキャラが明確に。

「これドナ」・・・自分には許嫁がいて、父がもらったお金を勝手に使ったせいで次の日のお見合いから逃れられないことが判明。

キャラとしては、頼りにならない父、おばかな弟、まともなママであることもわかる。許嫁は写真で見る限りちょっと残念な人そう。。。(かっこいいヒーローが出る前の前振り。「あれ?」と思わせる)

P25-P36 再会
逃げ出す主人公とヒーローのうんざりな気持ちを対比。うまく逃げ出せずにもがいているところで二人が再会。
 
P37- 「相手のしたいこと」
「これドナ」・・・キュンからのやっぱりこいつ最低(対立)。さらに、「縁談を進めてくれ」と言い出した主人公のニヤリ(悪い顔)で、さらにこれドナ感が高まるとともに、「相手のしたいこと=縁談を進めて後継ぎになる」も明らかに。

本編は、連載の初回なのでもう少し長いのでまだまだ続くのですが、ざっくりとこんな感じで、ここから、連載ならではの「葛藤・対立」に入っていきます。

第1話でここまでの情報量を届けられるのって本当にすごい・・・。しかもすでにキュンが4回も入っているんですよ・・・。そしてさらに、何このこれドナの数。


私、ずっと勘違いしていました。だって、これドナって、1話に1個くらいでいいんだろうと思っていたんですもの。全然違うじゃないですか・・・。連打でいいんだ。。そしてエピソードも次々盛り込んでいいんだ。。そのスピード感がテンポの良さにつながっているんですね。

とはいえ、それができるようになるには、無駄を省き、1コマの情報量を増やさないとね。。これ、いろんな作品でやっていこう。ラブコメを読み切れるようになるまで。。。

最後まで読んでいただきありがとうございます😊




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