読書|「ニホンという病」は心の癒やし方を教えてくれる、最良のレクチャー本。
こんにちわ。ネコぐらしです。
本日は雪が降り積もっていました。
愛猫にと手つかずの雪を少しすくって持って帰る。
最初はスンスンと興味あり気な様子でした。
しかし、ペロッとひと舐めしてからはまったく無視するように(笑)
(なんや、食べられないんか)と心の声が聞こえてくるようです。
さて、本日、一冊本を読み終えました。
まずこの本について、ひとつの誤解を解きたい。
センシティブなタイトルとは裏腹に、ここに綴られているのは人が本来の心を取り戻すための「癒やしのレクチャー」なのです。
私も大好きで何冊も本を購入させて頂いている名越康文先生。
そして「知の巨匠」として知らない人がいないであろう養老孟司先生。
このお二人が2022年1月から2023年1月まで、1年にわたって続いた全5回の対談をまとめたトーク本であり、同時に私達がすっかり忘れてしまったモノに原点回帰させる思想書でもあります。
堅苦しさはなく、とてもフラットで読みやすい。
それでいて心にスッと鋭く突き刺さる、そんな本。
ここから特に心に響いたトピックを振り返っていきます。
第一章:ストレスについて
絶賛コロナ禍中に開催された対談。
テーマの中心はストレスについて多く触れられていました。
興味深かったのは、日本語についてのトピック。
日本語は書き手の心情を細やかに表現するのに優れている。
しかし事実確認や実証には向かない。というお話。
まさにブログやエッセイの面白さに通ずるところがあるな、と。
本質的には「どう表現するか」
思えば、同じテーマを取り扱っているものでも、いろんな人のブログを巡回してしまう。一種の中毒性がある気がする。
ゲーム実況とかもそう。
展開は知っているが「この人はどう反応するのだろう?」と見に行く。
事実そのものよりも、気になるのはプレイヤーの反応であり内面そのもの。
日本語は、そういった情緒を伝えるのに特化しているそうだ。
日本は、和歌から始まり、短歌、同人誌、そして現代ではブログに至った。
この文化があったから、情緒的な表現力は脈々と受け継がれているのだろう。
多分、日本人は事実そのものに興味は薄いのかもしれない。
逆に言えば「心が動けばあたかも事実も動く」ように感じてしまう。
それが日本語の弱点でもある、と養老先生と指摘しています。
この見解は目からウロコ。
それだけ情緒的パワーがギッシリと込められた言語なのだと。トッポ食べたい。
第二章:「みんな教」
ロシアのウクライナ進行が始まって一ヶ月経った頃の対談。
社会や経済の在り方について語られていた。
この後の文脈で日本のいいところは世俗的であることだ、と続く。
すなわち、宗教観がない、と。
日本在中の外国人からすると、すごく開放的な文化らしい。
いわゆるオタク文化の発展は、この無宗教観からきているのかも。
だからこそ、「みんな教」にしばられることはもったいない。
「空気教」と読み替えても良いかも知れない。
国民が一致団結する必要はない。
小さなコミュニティが無数に点在するような、脱一極化が理想だと語っていました。
私自身も、自分の中にいくつも世界を持っていることに気付きます。
ゲームに映画に本、マダミスやネコ、お笑い、一番最近だとnote。
好きな時に好きなコミュニティ出入りできる環境は、考えただけでもわくわくする。
それって、今自分が興味の深いテーマを取り扱ってるところに飛び込んで住み着く、飽きたら出ていく、ある意味旅人のような生活。
でも孤独感はまったくない。
超高速参勤交代こそ、理想の多様性なのかもしれません。
しかし、お金の問題は今も昔も相変わらずのようです。
第三章:メタバースと可能性
急速なメタバースブームが到来した頃の対談。
自然とトークテーマもメタバースについて言及しはじめます。
この一節が大変気に入っています。
世界同士のつながりを自分の内面で感じることはよくある。
しかし、外の世界でもそれが起きた時の感動といったら、もう言葉にできないほどの衝撃でしょう。
「土壌自体」を育む、という点でメタバースは画期的なのだと。
「目的そのもの」ではなく「新しい手段」を提示できた功績は大きい。
この章の最後に、養老先生の愛猫「まる」の話が入ります。
「本当に、ネコは気持ちのいいところを選ぶ才能がある」と名越先生がつぶやくと、「現代人もそうであればいい」と養老先生はお話されます。
本当に、そうです。私達もネコに学ぶべきです。人間なんてネコのげb(過激派)
ですが、「気持ちいい場所がどこだか分からなくなってしまっている人が多い」と指摘します。
それこそがタイトルの通り「ニホンという病」そのものだと感じました。
最適解は「自然に触れること」と、お二方は共通認識として語っていました。
そういえば、名越先生は別の書籍で「そのあたりの木に抱きついてみる」と提案をしていたりしました。
全人類カブトムシ計画も悪くないかも知れません。
(想像するとすごい絵だけど。。。)
第四章:組織の中でどう生きるか
旧統一教会問題で世間が騒然となっているころの対談。
組織社会の中で個人がどう生きていくか、をテーマに語っていました。
考えてみれば、仕事をする時に自分から内発的な動機づけをした経験が私にはほぼない。
ほとんどが言われたからやる、的な。
しかし、どんな職場にも内面的な情熱を持った人が、必ずいた。
この章を読んでとても腑に落ちました。
そうか、彼らはこの内発的なパワーに突き動かされていたのだと。
仕事の中でカネ(給料)以外の「充実」を満たしていたから、健やかで生き生きと働ける。
それを見つけられずに外発的なものだけを粛々とやっていっては、いつか人は壊れてしまう。
うつ病罹患との関係性についても本書は少しだけ触れていました。
では、いかにして、この内発的なモチベーションを促進していけるのか。
読み進めると
「自分の体を動かすこと」
「自然に溶け込むこと」
「理屈なく好きだと思えること」
そこに内発的に活動する鍵があるのだと、こちらに語りかけているような気がします。
この書籍の推薦帯も面白いです。
この本に「治し方」は載ってないけど、「大量のヒント」はあります。
まさに読みながら、考えさせられる。
とても良い読書体験です。
第五章:生と死について
近い将来起こるされている未曾有の災害、南海トラフ巨大地震。
関連して「生と死」「死と再生」がテーマとして語られた最後の対談です。
文中で、「死ぬこと」を「土に還る」と表現する。
さらに「心が土に解けて、ほぐれていく」と言い換えていました。
この表現は、わたしの心を打ちました。
死生観を変えるのに十分すぎるパワーです。
そこから、心の変え方についてのお話も続きました。
「政治に関心をもてというのではなく、土の道を一日あるいてごらん。そのほうがよっぽど変われる気がする。」
自然と共生している養老先生が、現代人に伝えたいことの全てが、この一節につまっているような気がしたのです。
正直、この第五章だけでも、「ああ、この本読んで良かった…」という気持ちでいっぱいです。ここの節には、お二人の人生が込められている。
こちら、図書館で借りた本ではあるんですが、思わずお金を払ってしまいたくなる。タダで読んでよいものなのかと自問自答するほどに、わたしの内発性がお布施することを望んでいました。
第一章で、「菌糸類は根っこで巨大なネットワークを形成していて、もはや山そのものといってもいい。自然ってのはそういう混沌としたものだ」という解説がなされていました。
そして最後にこの第五章で名越先生がこう語りました。
SNSは、自然にしかありえなかった、その混沌としたネットワークを再現できる可能性があるかもしれない、名越先生はおっしゃいます。
落合陽一さんの語るデジタルネイチャーを、より明確に想像できるようになった一節です。
・・・
コンクリートで覆われた街で一人暮らしをしている私にとって、正直、自然に触れ合い続ける事は難しい。
それでも一週間に一度くらいは、がんばって自然と触れ合う。
そしたら、感じたことや培ったことを添えて、まさにデジタルネイチャーとなりつつあるSNSに流し込んでいく。
そうして自我がふんわりと広がって、心が楽になっていく。
やがて、生きていることの価値そのものが変化していく。
死への考えが変化していく。
今を受け入れる、という実感を、心で理解する。
・・・
そんな未来予想図を描いただけで、心はとても軽くなる気がするのです。
まあSNSやりすぎて心が壊れてしまうケースもあるので、上手に使っていきたいところ。
あくまで内発的に、ですね。
番外:『カタシロ』について言及があって驚く。
まさかの「カタシロ」について触れられている記述があり、正直びっくり。
わたしの大好きなTRPGシナリオであり、最近は友人を巻き込んで(むりやり)経験させる機会が多いのですが、名越先生もこの舞台カタシロにプレイヤーとして参加したご経験があります。
もちろん、カタシロと名越先生どちらの大ファンであるわたしは視聴済みでしたので、まさか触れられると思っていなくて、本当にびっくりしたのです。
とてもおもしろい公演です。
ぜひとも、前情報一切なし、でお楽しみください。いいですね?
見るなら、ぜったい予習しないでください!約束ですよ!
終わりに。
ニホンに焦点をあてつつ、話が深まっていくにつれて「個人そのものの生き方」についてフォーカスが絞られていく。
と、思えば、急に社会の問題に立ち返ったり、その逆も、といったことが度々起こるのが本書籍の特徴です。
マンツーマンで様々な患者と心の奥深くで対話をされてきた名越先生のご経験。
「バカの壁」刊行依頼、様々な社会問題に関わってきた養老先生のご経験。
その2つが交差したからこそ、レンズのピントが引いたり近づいたりを繰り返しても一切破綻することのない、そんな素晴らしいトーク本が出来上がったのだと感じました。
まだ刊行して一年の準新書ということもあり、お二人の言葉が実感をともなってわたしの心に染み込んできた。
そんな貴重な読書体験だったと思います。
みなさんも、ぜひご興味が湧きましたら、手にとって読んでみてください。
ぜひぜひ✨
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