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この子に石を投げないで。|詩

その子は叫ぶ


「みんな なにもわかってない!」

「お前たちになんか わかってたまるか!」

「なにもいらない」

「ぜんぶ にせものだ」


そういって あばれて

ぜんぶ こわそうとする


でも利口なその子は

けっしてそんな姿を人に見せやしない

わかっているから

それをあきらかにしたって

こころがもっと おかしくなってしまうから


いつか だれかが投げた石が

この子の顔に ぶつかった

たくさん血がでた

ひどい傷だった

いまはすっかりなおっている

傷跡は もうない

だけど、この子はわたしにだけ言う


「ずっと いたむんだ」

「いたみがおさまらないんだ」

「内側からずっと、ずっとうずいて」

「どんなに歯を食いしばったって」

「いたくて いたくて しょうがないんだ」


ただ だきしめることしかできない

無力なわたしをゆるして

どうして 庇ってあげられなかったんだろう

この子にどんな罪があったのだろう

ぎゅっとだきしめる

だきしめる なんて生易しいものじゃない

からだが折れてもいいくらい

つよく つよく

どこへも逃さないようにだきとめる


きっと、このシーンだけを覗いている

あなたたちには、さぞかし美しいものにみえるのでしょう

なにも知りもしない あなたたちは

そうして石の次は 拍手をおくるんだ

この子になげられた たくさんの石など

見もせず

覚えてもおらず

なかったことにして

とまどう この子に

無遠慮に また投げつける


さわるな

ふれるな

この子は私だけのものだ

この子を離してなるものか

「自由にしてあげて」

と誰かがいった


この子を開放したら

あなたたちは、また石をなげるでしょう?


だって もう

わたしの背中にも 

たくさんたくさん 石が投げられている

「その子に自分らしく 生きさせてやってくれ」

「ありのままに」

「自分らしく」


やめて

お願い

そうしたら この子はとたんに死んでしまう

いや、死ぬよりもずっと苦しい思いをする

また、顔にあたってしまったら

わたしは、


「この子に どうか

平穏 と 安らぎが あらんことを」


そう無責任にねがって

手をはなすことが

本当の愛?


うそだ

ぜったいにわたさない

この子の痛みも

苦しみも

ぜんぶぜんぶ

だれよりもわたしが知っているんだ

石をなげたことを ゆるしはしない

この子に向けた その瞳を ゆるしはしない


わたしは抱きしめる

抵抗されて この腕が折れようが

わたしの背中が 石の雨で 削られようが

この子は わたしがまもる

おまえたちになんて ぜったいに渡さない


この子は 無垢な瞳で わたしをみつめる

ほほえみかえす

この子の いたみも くるしみも

どうか わたしのなかに閉じ込めて。












この詩のテーマは「強烈な自己愛」
それと「当事者意識」

この2つの意味を込めてみました。

だから人によって、きっと受け取り方は二分する。

人生が縛り付けられるほどのエゴか。
障害をかかえた我が子への憂いか。

でも、そのどちらでもいい気もするのです。

詩を書いたその瞬間、きっと私の手を離れて、他の誰かのものになる。
手放すために、私は「詩」うのかもしれない。

解説はナンセンスかもしれないけれど、未熟な私は思わず解説を入れてしまう。

もっと言葉を知りたいな。





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