見出し画像

ポトフは野菜を焼いてから作る

 フライパンに少量の油を垂らし、玉ねぎ、にんじん、ウィンナーを焼く。水を入れて煮る前にこれをするだけで、ボクの好きなポトフになる。一人暮らしだと、どうしても同じメニューを食べきるまで連続することが多いから、飽きない汁ものが好きだ。シチューやカレーは、最初の1杯の食べたさに騙されて多めに作ると後悔する。冷凍すればいいのだろうが、そんなに丁寧な生活はできそうにない。確実に面倒臭いが勝ってしまう。だから、ポトフを作ることが多い。
 ポトフが好きな理由は他にもあって、まず、わたしは幸運なことにゴロゴロ野菜の汁ものが好きだということ。何が幸運なのかというと、ゴロゴロが好きだと単純に手間が少ないということになる。例えばポタージュが好きなら大変だろう。裏ごししたりミキサーを使ったり、考えただけでも洗い物と片付け作業で発狂しそうだ。それから、ドロドロが好きだと丁度良い柔らかさまで野菜の面倒を見てやる必要もある。日によっては、そうした料理の過程を楽しみたいこともあるが、基本的には切って、ぶち込んで、はい終わりで美味しいものが食べたいのだ。ポトフはその点、理想的だ。自分が食べやすい大きさに切ればいいだけだ。みじん切りも必要ないし、千切りも要らない。
 もう一つ、ポトフが好きな理由。それは、食材を限定されないところだ。その日の気分でも、冷蔵庫の有り物でもいい。季節感を味わいたくてスーパーで買い物中に食べたくなった野菜も使えるし、「あした買い物に行くからなぁ」と覗いた冷蔵庫の中途半端に残った野菜を使うこともできるのだ。一緒に入れる肉っけのある物(肉っぽいものを全般をわたしはこう呼んでいる)も、薄切りでも塊でも、ハムでもベーコンでもウィンナーでも、油揚げでもいい。それらをすこし焼き目が付いたなと思うくらいで水とコンソメで煮るだけだ。フライパンがあまり汚れないのも良いところだ。
 あとは、食べ飽きたらケチャップと粒マスタードで味変すれば、メインのおかずにもなる。

 こんな作り方と食べ方が、ほんとのところはどうなのかと疑ってしまう自分は日本人ぽいなと思う。自分好みにしておいて、一方では本物に興味もある。舌の上にのってから喉を通過するまでの時間の短さを考えると、食べることが“欲”にカテゴライズされるのも納得だ。その欲も、季節が変わると新しいものへと矛先が変わる。四季がある日本が、食に魅了されているのはそういった背景があるのかもしれない。




頂いたサポートは、知識の広げるために使わせてもらいます。是非、サポートよろしくお願いします。