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「子育てをした後に大学で学べばよい」

大阪市立中の校長が、全校集会で「女性にとって最も大切なことは子どもを2人以上産むことで、仕事でキャリアを積む以上に価値がある。子育てをした後に大学で学べばよい」と発言したとのこと。

極端な部分もあり、多感で影響を受けやすい中学生に伝える発言として適切かどうかは疑問だが、この子育てをした後に大学、という道はあながち悪くもないのでは、と思う。

私が2007年にスペインに留学していた際、グラナダ大学付属校のスペイン語クラスで仲良くなったブラジル人の友人Roseは当時42歳だった。

18歳で1人目を出産した彼女は、既に子ども達も独立。1年に1度会えばいい方だそうで、孫までいた。

幼くして母を亡くし、実家での家事を切り盛りしていたこともあり、最初の結婚は生活の手段としてという意味もあったのだという。

子ども達が小学校に入ったのと同時に大学に行き、大学院、博士と進んで、それからずっと大学で教員もしながら言語を研究してきたRose。

「お金なんてないから、全部奨学金だったわ」と。

ポルトガル語、フランス語、スペイン語、英語を理解する彼女は「私は研究者なの。私の人生は大学の中にあるの」と情熱を込めてキラキラした目で自分の生き方を語っていた。

再婚したばかりの10歳年下のフランス人夫は子どもを欲しがっていたが、「人生の若い時期を散々子育てに費やしたから、今は勉強したいし、旅もしたい」と、再度の出産には乗り気ではなかったが悩んでもいた。

生き生きとして、何事にも活動的で身体中で人生を謳歌しているような人で、ことあるごとに彼女のはちきれんばかりの笑顔を思い出す。

一度社会に出てからの学習は、若いうちに学ぶこととは意欲も覚悟も異なる。私も27歳からスペイン語を学び始め、30歳で留学。毎日10時間勉強しても、したりないほどで、とても充実していた。

まだ若くて子どもに近い年齢のうちに子どもを産み、育て、30歳頃から自分の学びたい分野を自覚して学び直し、キャリアを築き始めるという道もけして悪いものではなく、それはそれで開かれてよい方法だと感じる。

むしろ、女性の身体を考えるとその方が無理がない生き方なのかもしれない。

30歳前後で学び直しや再度学ぶ機会を得たいと考える人は多いが、出産の時期は逃しやすい。また、研究や仕事の面でも波に乗りやすい時期を子育てで中断することの是非もある。

自分の生き方や選択を後悔しているわけではないし、ほぼ満足しているが、未来を担う若者にはより様々な選択肢や生きやすい道が開かれることも願う。

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