ちょっとした大学生春休みの感想(戦争学について)

黒田です。

今日で3月が終わり、明日からは新年度となります。

この春休み、やったことと言えば、出張で沖縄に行ったことと、スキーで上越国際に行ったこと、映画を15本見たくらいで、大したことはできなかったと振り返って思います。

時間があったので、少し考えを巡らしていたのでそれについて吐き出そうと思うのですが、戦争学という学問がわからないな、という話です。

石津朋之先生の『戦争学原論』や防衛大学校・防衛学研究会の『軍事学入門』を開いて、自分の知識を体系化しようと思いましたが、これが難しい。

一応、クラウゼヴィッツ以来の戦争論史を先行研究として、理論を精緻に組み直すことをしていけば、それっぽくなるような気はしました。

しかし、戦争には客観的に戦争を眺めるような戦争論とは別に、運用者が各レベルに応じて戦略・戦術・作戦を考え、それに大きな影響を与える戦闘教義(ドクトリン)が存在します。

近年では、従来の陸・海・空に加えて、宇宙・電脳(サイバー)空間での戦闘、ハイブリッド戦争の展開とSNSの普及によって、サイバーとは別の民衆の情報空間でも戦争が起こるようになり、それらに対して論ずる必要も出てきました。

兵器の発明や科学技術の発展によって、戦場での選択肢が増えたり、戦闘そのものを変えてしまうゲームチェンジャーとなることもあります。こういった戦争外部の歴史や発展が戦争学の中で参照される必要があり、一気に分野が広がります。

さらには、特に日本においては重要な話ですが、政軍関係論は戦争の中でも重要な部分であり、シビリアンコントロールと民主主義の関係性が戦争に与える影響は大きいと言えるため、ここも戦争学の射程に含まれると言えます。

そうしたことを考える中で、戦争学というものの扱うモノの多さ、大きさに、困惑せざるを得ません。どこまでが戦争学が語るべき範囲なのか、そこから検討する必要がまだまだありそうです。

石津朋之先生は『戦争学原論』の中で、戦争学の確立ということに再三言及していますが、確かに日本で戦争学という学問が確立されてるとは言えないように思えます。イギリスのロンドン大学キングス・カレッジの戦争学部なんかは顕著ですが、アメリカでも日本より進んでいることを石津先生は指摘してます。

戦争学というタイトルのある本を考えると黒野耐先生の『「戦争学」概論』や松村劭先生の『戦争学』『新・戦争学』なんかが直ぐに思いつきますが、どちらの先生も自衛隊出身であり、自衛隊のための学問としての向きがあります。

他にも、石津朋之先生をはじめ加藤朗先生、長尾雄一郎先生、道下徳成先生がこの分野に関する著書を出していることが思いつきますが、同時に皆さんが防衛研究所に在籍していたことを考えても、一般大学の中で戦争について教え、学ぶことが出来る環境という土台が出来ていないのかもしれない、と思わざるを得ません。

国際政治学は戦争について、大局的な視点からある程度の説明をすることが出来ます。しかし、戦争の中身について考えるとき、その戦争の特殊性や普遍性を語るために必要な学問が体系化されていないのかもしれない、と考えると基盤の部分が緩いのかもしれない、と思わざるをえません。

これは学生の戯言ですが、今一度勉強を深める必要がありそうだな、とそんな風に思いました。

今後、戦争学についてはまた、何かで言及することになると思いますが、今日はこんなところで止めておこうと思います。

最後に『戦争学原論』と『軍事学入門』のリンクを貼っておきますので、興味がある方は適宜、手に取ってみるといいと思います。



石津朋之『戦争学原論』

防衛大学校防衛学研究会『軍事学入門』


[2022/03/31]


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?