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大きな声で言えない話〜肩を張らずにフランス172

 仕事の性格上いろんな楽器を間近で見る。

 オーケストラやブラスバンドをやったことのある人なら何も驚くことではない。自分の周りに触ったことのない楽器がゴチャっとあるわけで、見たくなくても目に入る。

 この手の楽器をしっかりやったことはない(少しだけオーボエをかじった)ので大きなことは言えないが、トランペットなどの金管楽器の前に座っていると、あれを至近距離で聞かされることになるので、中には耳栓をする人もいる。

 耳栓も今ではパーソナライズが可能で、型を取り、音量を調節したものを作れる。以前作ってもらったことがあったが、楽器の音もそうだが話し声まで聞こえにくくなるので、結局外してしまった。オーケストラとは違い生徒と1対1の授業なので、声が聞こえないのはまずい。

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 来週末にトロンボーンとチューバのクラスの発表会がある。

 弦楽器のスペシャリストのように思われているので少し違和感があるが、練習そのものに大差はない。初級から上級までの生徒がどっと押し寄せてくる。

 ちなみに打楽器、パーカッションのクラスも受け持っている。この仕事を始めた時からずっと続いている。打楽器の伴奏?と誰もが訝しがるが、もちろんレパートリーがある。自分では無意識で割と楽しんでやっているのだが、できない人には絶対できない分野のようだ。リズム感と「メトロノーム感」がないとやれない。ただ向こうはスペシャリストだからできて当たり前と思うと痛い目に遭うことになる。結構曖昧なことをしていることが多い。そこを注意して練習させられる技量は、持って生まれたものが多いように思う。歴代の先生たちからもお褒めをいただいているので、自慢していい点かもしれない。

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 話を元に戻す。

 金管楽器は好きでない。

 仕事だからやるが、できればやりたくない。

 ドヤされる覚悟で言うが、楽器なら全部大好きと言える人も少ないんじゃないだろうか?それぞれの楽器に特徴がある。それを生かしてちゃんこ鍋のようにするのがオーケストラ。それだから良いものだし聞いていて心地よい。

 ソロ楽器としてピアノと演奏するとなると話は違う。

 どうしても弦楽器やピアノと比べると表現の多様性に欠ける。レパートリーにしてもほとんどが近代のもので、クラシック、ロマン時代のものは少ない。ピアノパートばかり難しいものが多く、正直しんどいばかりで旨みが少ない。

 もちろんうちの学校レベルだが、先生の指導にしても弦楽器と比べて大雑把。弾けていればOK的な部分がある。リズムが曖昧、音程が曖昧、音色もこんなもんで通してしまう(先生には申し訳ない。勝手なこと言うが正直な気持ち)。たまにキチっとできている生徒がいると「ほーっ!」と感心するくらい。

 木管楽器でもそうだが、一番難しいのが音質(だと思う)。これに気づくとあとは指づかいと呼吸しかない(と思う)ので上達も早い。その証拠に、大人になってからヴァイオリンとかピアノをやるのは恐ろしく難しいが、吹奏楽器なら意外といつでも始められる。大人だから初心者でも音質や音色はそこそこできてしまう。実際大人の « Débutant »は、こういった楽器ならうちの学校でも珍しくない。

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 今はトロンボーンとチューバで埋まっている週間予定だが、ところどころにヴァイオリンなんかが混ざっていてホッとする自分がいる。ピアノを教えるのは嫌だしどう教えたらいいのかわからない。弦楽器はうちにヴァイオリンとチェロをやっていたのがいたので、10年以上ずっと見てきた。学校ではなく先生のお宅での個人授業で、大抵授業に付き添っていた。そんなわけで自分では弾けないが、何をどうすればどうなるという理屈はわかっているつもりだ。

 昔は何でも屋になりたいと思ったものだ。今はそんな欲もない。気に入った分野で最後までやっていけたらいいと思っている。

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