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最北端で待っている人たちのために── チーム一丸となって挑んだ稚内出店物語

日本最北の街、北海道稚内市へのローソン進出は、物流拠点の旭川市まで約240km離れていることが大きなネックとなっていました。これまで稚内市には、北海道のローカルコンビニ「セイコーマート」以外のコンビニチェーンが進出できていなかったのです。しかし2023年8月1日、ローソンは遂に初進出を実現。プロジェクトメンバーたちはどのようにして幾多の困難を乗り越え、悲願を達成したのでしょうか。店舗開発を担当した坪井さんと店舗のサポートを担当した山田さんに語っていただきました。

北海道カンパニー 北海道開発部 リクルートフィールドカウンセラー/坪井佑樹
1984年、神奈川県出身。自動車販売会社の営業職を経て、2008年にローソン入社。店舗社員、店長、SV(スーパーバイザー)、道北支店支店長補佐を経て、2022年、北海道カンパニーのRFC(リクルートフィールドカウンセラー)に。稚内進出プロジェクトには店舗開発担当して関わる。現在は北海道の未出店エリアにおける出店拡大にチャレンジ中。

北海道カンパニー 北海道営業部 道北支店 マネジメントコンサルタント/山田知度
1972年、北海道札幌市出身。1996年にローソン入社。店舗社員、店長、SV(スーパーバイザー)、札幌東支店支店長補佐などを経て、2023年、道北支店のMC(マネジメントコンサルタント)に。稚内進出プロジェクトにはオーナーのサポート、クルー研修、売場作成に関わる。現在は開店後のサポートに奮闘中。

やれない理由よりできる方法を考える

──2023年8月1日に、「ローソン稚内栄五丁目店」と「ローソン稚内こまどり五丁目店」がオープンしました。この2店舗は北海道の宗谷地方に初めて開店した店舗だそうですね。このチャレンジの発端を教えてください。

坪井佑樹(以下、坪井) 稚内への出店案は過去何度も浮上していたのですが、その度に断念してきたという歴史があります。その最大の理由は、稚内市は道北エリアの物流拠点がある旭川市から約240キロも離れているということ。その上、稚内市は1年間で風速10メートルを超える日が90日を超え、冬になると猛吹雪になり、物流網が遮断され、店舗が営業できなくなる恐れがありました。このため、ローソンだけではなく、全国チェーンのコンビニは1店もなかったのです。

──それがなぜ今回はチャレンジしようということになったのですか?

坪井 これまでのように「物流網に不安があるから出店を断念しよう」ではなくて、「物流網が遮断されても営業できる方法を考えよう」というふうに、出店の考え方がよりポジティブな方にシフトしました。きっかけとしてはこれが一番大きいですね。

もう一つ大きかったのが、稚内市を含む宗谷エリアの皆様の利便性向上です。私は2021年まで旭川を拠点とする道北支店に在籍していたのですが、当時からローソンにしか置いていないオリジナル商品を買うためとか、チケット購入などでロッピーを利用するために、車で片道2時間半かけて旭川に来ているという声をよく聞いていました。このことから個人的にも稚内市内にローソンをオープンさせたいと思っていたのです。

──お二人が今回のプロジェクトで担当した業務は?

坪井 私の仕事は店舗開発で、道北エリアにローソンを出店すること。今回のメインかつ第一優先業務は出店用地とオーナーとなる人財の確保でした。

山田(以下、山田) 私の主な仕事は、加盟店オーナーへのコンサルティングと店舗経営のサポートです。

一丸となって物流の壁を突破

──今回のプロジェクトで特にこだわった点を教えてください。

坪井 出店の最大の障壁となっていたのは、先ほどお話した物流の問題です。そこで、猛吹雪などの影響で物流網が遮断された場合でも安定して商品を供給できるよう、バックヤードの広さを通常店舗の約3倍にして、その搬入口に商品保管用の冷蔵庫を2台設置しました。また、物流が止まった場合におにぎりやお弁当などを店舗で作れるように「まちかど厨房」にも注力しました。1度に30合分が炊ける炊飯器を3台設置し、フライヤーも通常の2台から3台に増やしました。

山田 私は店舗独自の商品仕入れにこだわりました。特に稚内の方々は、買いたい物を買うためにわざわざ車で何時間もかけて旭川や札幌まで行かなければなりません。そのため、道北支店の支店長補佐にも協力を仰ぎ、稚内から遠く離れた地の名産品や人気商品、地ビールや地方のレトルトカレーなどを扱っている業者を探して、商品を揃えていきました。

アルバイト教育にこだわる

山田 クルーさんの教育にも力をいれました。そもそも稚内にはローソンがなかったので、まずはローソンの企業文化を理解してもらうところから始めました。また、多くの方がローソンのオープンを待ち望んでいるという話を聞いたので、ならばその期待にお応えする接客をしなければという思いで、接客・おもてなしのプロとして全国津々浦々飛び回っている講師を福岡からお呼びして指導していただきました。

──アルバイトに応募した人たちのモチベーションはどうでしたか?

山田 抜群に高かったですね。ただ、本当にローソンがオープンするのか半信半疑でアルバイトに応募した人も少なくありませんでした(笑)。でもそれが本当だとわかったら、皆さんローソンで働くことのモチベーションが一気に上がったようです。

用地確保に苦闘

──今回のプロジェクトで苦労した点は?

坪井 担当した業務すべてと言っても過言ではないのですが、特に苦労したのが店舗用地の確保です。稚内市内の土地の所有者を全部調べて、総当たりで訪問したのですが、交渉が難航してしまいました。

タイムリミットが迫る中、それでもあきらめず、地道に探し続けた結果、貸してもいいという所有者に出会えたのです。最終的にローソンの出店が地元の活性化に繋がると判断したからとご了承いただきました。このように、マチの発展のためと言っていただいたことがとてもうれしかったです。

オープン前から男泣き

──長期間に渡って大変な苦労してきただけに、お店がオープンした時はどのような気持ちでしたか?

坪井 もうオープン前日からリアルに泣きましたね。前日の決起集会でスタッフの皆さんの前で話している時、泣かないぞと心に決めていたのですが、思いがあふれてこらえきれずに涙がこぼれ落ちました。私が契約した物件が初めて建物になったのが、今回の2店舗だったんです。正直言うと、もうそれだけで感無量でした。しかも稚内進出はローソンにとって長年の悲願だったわけなのでなおさらです。

さらにオープン当日には100人以上の行列ができて、その大行列を見たら、我々を心から待ち望んでいる人がこんなにいたんだと胸が熱くなりました。そして開店後も人の波が途切れることなく、3000人以上の来客で賑わいました。しかし、オープンは終わりじゃなくてスタートなんですよ。この後も宗谷エリアに3店舗、4店舗目をオープンするミッションがあったので、オープン当日は、喜びよりもより一層気が引き締まったという感じでした。

オープン後の方が大変だった

──山田さんはいかがですか?

山田 お客様から「いつでもATMが使える」「イベントチケットを買いにわざわざ旭川まで行かなくてすむ」「からあげクンがいつでも買える」など喜びの声を多数いただき、うれしい限りです。お客様にここまで喜んでいただけるオープンは私も見たことがなかったので、感動しました。同時に、私の仕事はオープンしてからが本番なので、その期待を少しでも長く維持するためにはどうすればいいかとお客様の列を見ながら身震いしました。クルーさんはまだ仕事に慣れてないのと、正しい売場のあり方もまだ十分に分かっていないので、しばらく混乱が続いたのです。何とか2ヶ月ほどかけて立て直すことができましたが、引き続きサポートに尽力しています。

お客様からの期待を実感

──今回のチャレンジで1番印象に残っているエピソードを教えてください。

坪井 2店舗ともオープン初日の売上が見たことのないような数字だったんですよ。想像以上に地元のお客様に支持されたと実感できてうれしかったです。私もローソンに入社して15年経ちますが、これほどすごい体験は今までしたことがありません。

部署間の垣根を越えて一つのチームとなって、みんなで力を合わせてこの難しいプロジェクトを成功させようという想いがあったからこそ、無事に出店することができました。これを体験できたことが、このプロジェクトにチャレンジして一番よかったと思うことですね。同時に、この風土がローソンという会社の最大の長所であり、好きな点でもあります。

山田 札幌や旭川など、北海道各地の名産品を数多く取りそろえたのですが、オープン初日、ローソンでしか買えないオリジナル商品をお買い上げいただくお客様が我々の予想以上に多かったことに驚きました。からあげクンが売れるのは想定の範囲内だったのですが、それでも初日に2店舗合わせて約4,000食を販売しました。

私も入社して27年、ずっと営業畑なので、数多くの新店のオープンに携わってきたのですが、今回のようにオープンまでいろいろな方々と関わり、喧々諤々と討議したのは初めての経験でした。決まったレールに乗って淡々と仕事をこなせばいいというやり方とは違って、とても楽しかったですね。

未出店エリアへの進出、そしてみんなに愛されるお店へ

──お二人の今後の目標、次のチャレンジについて教えてください。

坪井 北海道の中ではまだまだ未出店エリアがたくさんあります。今回の稚内進出プロジェクトで実感したのは、ローソンに限らず、コンビニエンスストアは地元の人たちにとってライフラインの1つなんだということ。ならば、地元の人々の要望に応えるべく、近くにローソンがほしいという人がいるエリアすべてに出店していきたいと考えています。

山田 お客様・オーナー・クルーさんに長らく愛されるお店にしていきたいです。ゆくゆくは、今働いてくださっているクルーの方々の中から、稚内の店舗のオーナーになるような方を輩出したいですね。やはり稚内のお店は稚内の方々で盛り上げるのが一番いいので、その流れを作れればいいと思っています。

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