『Before/After 民法改正』142番

再びCaseの時系列に関する疑問。

Case小問(3)の時系列は添付のように読める*。

* Caseは、「合意により取り決めた後、AがBに供給した部品に不具合が判明し」たとの記載にとどまるため、「部品供給→債務引受合意→不具合判明」という時系列だったと考えられないわけでもないですが、ここでは添付の時系列だったと仮定して検討を進めます。

仮にそうだとすると、Caseでは、債務引受の効力発生後に抗弁が生じている。

にもかかわらず、Afterの解説では、しれっと、「Cは、債務引受の時点で、Aの債務不履行に基づいてBに認められる同時履行の抗弁(新533条)や代金減額請求権(新563条1項)をもってAに対抗できる」との説明がなされている(285頁)。

上記時系列では、「その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁」(新472条の2第1項)の範囲につき、「債務引受の効力発生時点で、(諾成・双務)契約は締結されており、引受対象債務(Caseでは代金支払債務)に対応する債権者の反対給付義務(Caseでは部品供給義務)は発生していた(つまり、抗弁発生(具体化)の原因は債務引受の効力発生時点で存在していた)が、債権者の債務不履行、及び、それに基づく抗弁の発生(具体化)は、債務引受の効力発生時点よりも後であった場合、当該抗弁はなお同項の「抗弁」に当たるか(当該抗弁をもって債権者に対抗できるか)」、という問題を検討する必要があるように思います。

上記問題については、併存的債務引受での議論ですが、『講義 債権法改正』239頁が参考になります(結論は示されていませんが)。

個人的には「対抗できる」と結論付けたいです(もっとも、同趣旨の問題が生じる債権譲渡の場面では、「譲渡人に対して生じた事由」(新468条1項)といった、ある程度アバウトな文言が用いられているのに対し、債務引受の場面では、「債務者が主張することができた抗弁」といった、割とはっきりとした文言が用いられているので、上記の結論とすると、債権譲渡の場面に比べ、文言上の落ち着きは良くないですね。)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?