あやしきかたり

あやしあやしやうつし世の
たそかれどきは奇奇怪怪
あちらもこちらも入りまじり
ものどもぞろぞろ集まって
百の蠟の火揺らめく中で
あやしきかたりはじめます

怪異(けい)なるものの
かたること
魑魅魍魎の晴れ姿
大将無き今百鬼夜行を
懐かしむ様 あわれなり

奇怪なるもの かたること
狐狸妖怪の化け話
面白おかしく惑う人らを
あれこれ言うは 愉快なり

妖美なるもの かたること
惚れた腫れたの物語
細谷川の丸木橋とか
端唄うたった 昔とか

うつし世常夜もあいまいに
可惜夜 夜すがら 物語り
神も仏もお天道様も
気がつくめえと 物語り

あやしあやしやあやしきかたり
今は昔の怪異譚
言霊宿してこのうつし世で
千歳の先まで語られよ

百の蠟燭消え果てて
百の話も語り果て
お天道様ののぼらぬうちに
ものどもちりぢりばらばらに
あやしきかたりはおわります

あやしあやしやうつし世に
語り継がれるあやしきかたり
今は昔のものがたり
今でも続くものがたり

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