トランスジェンダーと性別変更 これまでとこれから 感想

性同一性障害特例法があるのだが、どの部分が問題かわからなかったため、「トランスジェンダーと性別変更 これまでとこれから」を読んだため、感想を書いていこうと思う。


1.本書を読む前に考えること

まず、著作者は高井ゆと里氏の名前が記載されているが、本書の帯や内容を読むと複数の方が執筆しているため、各章において問題点の着目や内容が異なる。これから読む方はそのことを思慮して読んでほしい。

そのため、本書において各章の共通内容だと思ったことを書いていこうと思う。

2.性同一性障害という言葉は使われない

性同一性障害特例法は2003年に制定された。
出生上割り当てられた性別とは異なる性別で暮らす人々は昔から存在していたのだが、1910年にドイツの医師が同性愛者と区別し、異性の服装をする人々という意味でトランスヴェスタイトと名付けられた。
1980から90年代にはgender identity disorper(性同一性障害)と名付けられたのだが、世界保健機構が定める国際機構で「性同一性障害」から「性別不合」に置き換えられるようになった。

そのため、性同一性障害という観点からトランスジェンダーについて論じるのは錯誤しているのではと思った。

3.人は外性器から性別を判断されない

この観点は大切だなと思った。
トランスジェンダーを論じるときに外性器の形ばかり取り上げられてしまうが、そのことについて論じてくれた。
まず、よく取り上げられる公衆浴場であるが、身体的特徴で男女を分けることや公衆浴場が業者の管理下にあること、日本の人口でごく少数なトランスの方が自分の性別とは異なる身体で人目につく浴場に入るとは考えられないことから、「男性の身体をしたトランス女性」が入るとは考えられないと説明があった。

社会生活を送る上で外性器の形から性別を判断しないということも理解できた。
我々は社会生活を送る上で、隣人や同僚の下半身に陰茎が有るか、無いか十いうことは考えない。
また、彼ら彼女らはホルモン療法によって自分たちの性別に体を合わせるし、性別を移行する際社会的にも身体的にも連続的に変化する。
ホルモンを使えば体は筋肉が付きやすくなったり、髭が生えたり、肌がきめ細かくなったり、筋肉が落ちたりする。
身体は彼ら彼女らの性別に変化していく。
そのため、「男装の麗人」や「女装の男性」というイメージは無知ゆえに起こることなのだと分かった。
また、我々は声が高かったら女性的、低かったら男性的、髪が長かったら女性的、短ければ男性的とのように、性器の形で判断するわけではなく、見た目で性別を判断するため、陰部はスカートやズボン、パンツに隠れている。
したがって、性器の外見を変えて生殖能力を欠く手術をすることが、法的性別変更の条件になることは違憲ではないか、ということに納得できた。

4.こども要件について

特例法では子供がいないことが性別変更するための条件だった。
それが「未成年」の子供がいないことが条件に変わった。
果たしてこども要件は必要なのか?
何故、こども要件があるのかといえば、「未成年者の子の福祉」、「家族秩序の維持」のためであるとされる。

「未成年者の子の福祉」はお父さんが女性になること、お母さんが男性になることがこどもを不安定にするから守ろうとのことらしい。
しかしながら、平成20年に特例法が改正された(子供がいないことから未成年の子供がいないことに変更された)ことにより、すでに「女の父親」、「男の母親」が容認されている。

子どもに心理的混乱が生じるといっても、混乱が起こるときは外見が変わるときであって、戸籍がかわるときではないということ、若い感性をもつ未成年の子の方が親の変化を受け入れやすいことがデータで示されていると記載があった。

親や大人の見た目が変わることについては、混乱が生じることはその大人ではなくて、社会構造や無理解に問題があると思うため、性的マイノリティへの理解やシスジェンダーを前提とした社会を変えていきたいと思った。

5.未成年者の戸籍の性別変更

18歳未満の未成年が契約をするときは親の同意が必要である。
しかし、戸籍上の性別変更は同意があっても出来ない。

17歳は就職と進学、人生の重要な場面だ。
就職と進学をするときに戸籍や身分証を示すよう要求される。
男性として/女性として生活をしているのにも関わらず、戸籍や書類では出生時の性別だから、進学・内定取り消しという恐れがある。
また、書類の性と生活する性が異なれば、自身がトランスジェンダーであるということをカミングアウトする気がないのにも関わらずすることになってしまうし、無用な詮索も生まれてしまう。

だから、未成年者の戸籍上の性別変更は親の同意があるなら賛成だ。

6.感想

今回、本を読んで思ったことは生活する上での性別と戸籍を繋げて考えることが大切だということだ。
例えば、トランスジェンダーを論じる際下半身に言及する人がいるが、社会生活を送る上で隣の人や通行人の股の間(外性器)について考えない。
子どもも性別で分けられた生活をしており、就職や進学で性別を見られるにも関わらず、生活する性別に合わせて戸籍の性を変更できない。

常にトランスジェンダーやいろいろなマイノリティが置かれている状況に今後も目を向けたい。

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