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美術の成績

メルカリで高校美術の教科書を購入して楽しんでいる、と先週投稿しました。
まだ楽しんでいますよー。今は『高校美術 II 』を鑑賞中。
『高校美術 I 』と同様に、カタログのような美しさ✨、教科書とは思えない斬新な切り口に唸らされています。

『高校美術 II 』はオリエンテーションのページに続いて、いきなりオキーフとカーロの見開き(冒頭写真)が現れます。作品のみならず作者の顔写真も…う、う、うつくしい✨。
私の高校生時代に、印刷技術やページ割りなど同じ条件で教科書を作るとしたら、レオナルドとラファエロ?…ベラスケスとドラクロワ?…だったかしら。

美術教科の目標(cf. 中央教育審議会答申)をインターネットで見ると、
『高校美術 I 』では「幅広く」美術に触れる機会の提供
『高校美術 II 』では美術や美術文化に「深く」関われるようにすること。

確かに。『高校美術 II 』では見開きを使って一人の作家について掘り下げているページが多いですね。
【技法の研究】の項目ではパウル・クレー
【表現の探究】のページにはアンリ・マティス
【抽象表現】ではマーク・ロスコ
そして【水を描く】⁈ には東山魁夷。

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全60ページほどの薄いカタログのような教科書なのに、それぞれ2ページを割いて一人の作家を紹介するとは…。「大胆ですねぇ」と声が出ます。

また【グラフィックデザイン】【機能とデザイン】【絵本の工夫】【アニメーション】などなど見ているだけワクワクします。

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こんなにも楽しませてくれる教科書、恐るべし。
『高校美術 III 』も欲しくなりました(笑)。

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素敵な教科書の “もと” になっている 美術の学習指導要領ってどんなものなのかしら?と興味がわいたので調べてみました。
詳細は割愛しますが、驚いたのは「表現」と同じウエイトで「鑑賞」が重視されていることです。おっ!。

ということは、学校教育の[美術]に求められていると私が信じていた、
生まれ持った “才能やセンス”そして“技能” が欠けていたとしても、

◉美術の表現活動や鑑賞活動に関心を持ち主体的に取り組み、美術や美術文化について理解を深めようとすること
◉感性や想像力を働かせて、対象のよさや美しさを捉え創意工夫し構想を練ること
◉作者の心情や意図と表現の工夫などを感じ取り、形体や色彩などの表し方の工夫や表現材料の活用や効果について理解し、美術作品の良さや美しさを造形的に味わっている

のであれば、[美術]の成績も悪くない!ということでしょうか。
五段階評価でいつも「3」をとっていた私でも、「5」を取れる可能性があるということ⁈
あらまぁ。そうであるとすれば、自分の感じたことを造形的にうまく表現できない私でも、美術の授業が好きになれます。ブラボーー!!

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と、興奮冷めやらぬまま夜になり、ベッドに入ってツラツラ考えていました。
でも、いいのかなぁ。①素晴らしい教科書に、②万人が評価されるシステム。
いろいろ褒めちぎりすぎた今週の自分に、ちょっと疑問を投げかけてみました。

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①親切丁寧な素晴らしい教科書
美術の教科書に限らず、学校や学習塾で知識を得るための最短のルートを提示してくれる時代です。インターネットで何にでもアクセスできるし、最適な資料、勉強方法、ノートの取り方までノウハウ本が教えてくれます。

かつての私は勉強方法がわからずオロオロしているうちに学校生活が終わってしまいました。
教科書だけではわからないこと、授業では触れなかった疑問点を解決する糸口を探すために図書館に行ってウロウロ。試験対策として 何をどう覚えたら良いのかわからず、ノートの書き方を自分なりに工夫してみたり…。結局何の役にも立たず無駄な時間ばかり過ごしたような気がします。

しかし、かつてのSHARP(株)さんのCM「目のつけどころがシャープでしょ!」ではありませんが、自分なりのキラリ✨と光る “目のつけどころ” を発見したときに、学ぶことの喜びを覚えたものです。
何なら 私はそこだけで勝負してきた人生かもしれません(笑)。

例えば、『高校美術 I 』に掲載されていたページ。

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「今日はこの2つの彫刻について見ていきましょう!」と始まる授業。

一方で。
彫刻をもっと楽しみたい!とミケランジェロの作品集を眺めているとき、
「そうだ!『ダヴィデ像』と『金剛力士立像』を比較してみたらどうだろうか。もっともっと時代背景や技法についての考察が深められるに違いない!」
と比較の視点を自分で発見したときの喜びは大きいはずです。
そこに至るまでに無駄な時間を多く費やしたとしても、そこに行き着く過程も愛おしいのです。

ふと「政府が詳細を決めて禁止してくれないから、出かけてもいいんじゃないですかぁ〜」とインタビューに答えている人、そしてこの意見を元にして政府の不甲斐なさを責めている報道を思い出しました。
政府のやり方に不満を持っている私なのですが「政府が◯◯だから、これをやらない」というのはちょっと悲しいです。
日本人って、いつからこんな思考回路になったのかしら⁈ もう少し、自分たちで考え 判断して行動できると思っていました。

あまりにも親切丁寧に全てを提示してくれることがあたり前になりすぎるのは、少し怖いことです。
ちょっと話が飛躍しすぎましたかね(汗)。

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②万人が評価される社会
徒競走で順位をつけなかったり、頑張った子にはみんな金メダルをあげる教育。誰でも評価してあげることはとても大切なことだけど、それがあたり前になりすぎるのもやはり少し怖いことです。
社会生活で評価を受けられないことは多々あります。そんなときに、評価されないことを誰かのせいにして不平不満をぶつけることに力を注いでしまうことにはならないでしょうか…。

特に芸術の分野において自分の得意・不得意をきちんと認識できるようにするためには、やはり私が美術で「5」を取ってはいけないのです。
そういう意味で 現在の美術の学習指導要領はセーフ。“やる気” や “鑑賞能力” では補いきれない「自己の表現意図に合った創造的な表現」が評価項目として残っていることが誇らしいです。私はどんなに頑張ってもきっと「4」。
そのかわり、私は音楽で「5」を取ってみせます!

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と、翌朝。
私にウダウダ考えさせてくれることも含めて『高校美術』の教科書はやはり素晴らしいのです。

【描画材と表現】のページには、フェルメール『デルフトの眺望』、マネ『リュエイユの家』、ゴッホ『収穫の風景』、スーラ『曇りの日のラ・グランド・ジャット島』など。拡大画像もあって嬉しい!

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【観察と表現】のページには、川合玉堂、モンドリアン、小磯良平、デューラーなどなど。自分でも何かをデッサンしてみたくなります。

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何度も言いますが、とても楽しく勉強になるのです。

前回の投稿では、自分が先生になったつもりで『高校美術 I 』を題材に授業(仮想)の準備をしました。

今回は、編集者になったつもりで見開きページを担当するのもいいですね。
誰のどの作品を どんな風に掲載しましょうか。
例えば、
◉【絵画の空間】として、線遠近法〜セザンヌ〜キュビスム作品
◉【色彩の解放】として、ティツィアーノ、ドラクロワ、モネ、スーラ、マティス
うわ〜っ、欲張りすぎてゴチャゴチャします。
大胆な構成でまとめている日本文教出版の編集者さん、脱帽です。
勉強させていただきます。

<終わり>

おまけ。
シャープ(株)さんのキャッチコピー。
以前は「目のつけどころが、シャープでしょ。」だったのですが、
2010年から「目指してる、未来がちがう。」となり、
現在は「Be Original.」としているそうです。
移り変わっていく時代についていけない古い考え方なのは私だけかも⁈
勉強させていただきます。

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