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アルチンボルドのピース🧩

日めくりルーヴル 2021年6月21日(月)
『四季:夏』(1573年)
ジュゼッペ・アルチンボルド(1526年-1593年)

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2019年9月
ルーヴル美術館で、本日のカレンダー作品『四季:夏』を観てきました。

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左上から右回りに、『冬』→『秋』→『春』→『夏』。
あれ⁈ 「春→夏→秋→冬」じゃないんだ…変わった並べ方だなぁ、と。
ローマ帝国では「冬」を四季の年頭として尊重していたそうなので、神聖ローマ皇帝位を継承したハプスブルク家に仕えたアルチンボルドは『冬』を最初に制作したのかしら?この配置はそれが関係しているのかしら?

そして何より展示場所にびっくり!。
レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロの並びにこの作品がありました。

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(↑ こんなイメージです。乱暴な画像の並べ方を お許しください。)

画像は左から
◉『洗礼者聖ヨハネ』レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519年)
◉『バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像』ラファエロ・サンティ(1483-1520年)
◉『四季』ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)
◉『聖母の死』カラヴァッジォ(1571-1610年)

【ルネサンス】に続く16世紀【マニエリスム】の画家、しかもイタリア🇮🇹ミラノで生まれたアルチンボルド …。 ←ということを知った今であれば、この展示場所に納得できるのですが、ルーヴル美術館のグランドギャラリーでは異彩を放っていました。作品もアルチンボルドの存在も。

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2017年夏
絵画鑑賞に興味を持ち始めたばかりの私は、上野公園で《アルチンボルド展》の大きな看板を見ました。

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現代アート作家によるデザイン画かなぁ…と思って素通りしたのを覚えています💦。大バカものですね、せっかくの機会を逃していました。

2018年3月
大塚国際美術館(徳島県)の一室に展示されていたアルチンボルド作品を見て、旦那さん(←同じく絵画鑑賞は初心者)は「カッコいい!」を連発。
彼は2019年11月《バスキア展》で同じ反応をしていました。

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↑ 暗くて少し奥まったスペースで スポットライト浴びる四枚のアルチンボルド作品(大塚国際美術館)。
ちょっと秘密めいた部屋で、見てはいけない奇妙なモノに出会ったような気分になり、自分の鼓動の大きな音に気がついて驚いたのを覚えています。

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さて。
1526年 ミラノで生まれたアルチンボルドは、1562年頃にウィーンに招聘され、その後25年間 オーストリアのハプスブルク家 3人の皇帝に宮廷画家として仕えました。
◉神聖ローマ皇帝位を承継したフェルディナント1世(治世1556年〜64年)
◉その息子で自然科学に深い関心を示したマクシミリアン2世(治世1564年〜76年)
◉そして孫のルドルフ2世(治世1576年〜1612年)
稀代の美術コレクターであったルドルフ2世は、ウィーンから遷都したプラハに学問と芸術の一大拠点を築くため、世界中から天文学者や科学者、錬金術師などを集めたそうです。そして芸術作品や工芸品、最先端の科学機器、新たに発見された動植物、珍奇な自然物などを集め「芸術と驚異の部屋(クンストカマー)」と称される一大コレクションを形成しました。

アルチンボルドが数多く残した独特なスタイル(果物や野菜、動物や植物、魚そして本などの静物を寄せ集めて人物を形作る= “寄せ絵”)の肖像画。そこに描かれたモティーフが極めて多岐にわたり かつ正確であるなど、博物学への造詣を深めたのも頷けますね。世界中のあらゆる物が集まった部屋に自由に出入りして観察できたのですから。
2019年10月
《ハプスブルク展》でルドルフ2世の「芸術と驚異の部屋(クンストカマー)」の存在を知った時、大塚国際美術館のアルチンボルドの部屋を思い出してまたドキドキしました。

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さてさて本日の作品『四季:夏』。

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『夏』を構成するさまざまな果物、野菜、植物を集めて肖像化した作品。
現在では多くの資料がその素晴らしさを語っています。
▶︎連作『四季』= 永遠に巡りくる季節、永遠の時。その循環をとおして 皇帝やハプスブルク家の繁栄を願っている。
▶︎四季は人の一生にも例えられるので、夏は青春期にあたる。
▶︎そして麦わらで作られた衣装の襟部分に編み込まれた文字

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「GIVSEPPE ARCIMBOLDO・F」 右肩に「1573」

(↑ 前回まで画家の署名について調べていた私にとって注目ポイント!)
画家が作品に署名することが習慣化するのは18世紀以降のことだが、アルチンボルドは「古代ギリシャの画家が上着に自分の名前を編み込んだ」という古典の知識を得て描いたのではないか…。
などなど。

実は。
この作品がこのように確固たる意図や意味を持って描かれた “第一級の芸術品” であることが認められたのは近年になってから。アルチンボルドの死後、この “寄せ絵” の人物像は、長きにわたって単なる “だまし絵”、“キワモノ” と思われていたそうです。
ダ・ヴィンチやラファエロ、カラヴァッジョと横並びに考えられなかったのは私だけではないのですね。

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《アルチンボルド展》(2017年国立西洋美術館←私が素通りした展示会)をご担当された渡邉晋輔先生のインタビュー記事をネットで発見!。とても印象的でした(以下は要約)。

20世紀シュルレアリスム以後のアーティストたちによって紹介・再評価されたアルチンボルドは、美術史から完全に切り離されて、現代美術とだけつながっていた
しかし16世紀を生き、宮廷画家であり静物画の先駆けとしての役割を担っていたアルチンボルドをきちんと評価するためには、現代的な文脈ではなく、美術史においてどういう位置付けができるのかを考えることが必要。

なるほど。
アルチンボルドの作品、アルチンボルドという芸術家をどんな風に捉えたら良いか分からず、これまで近づかなかった私の違和感が取れてスッと腑に落ちました。

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絵画鑑賞をしているうちに、自分だけの「美術史マップ」を作りたい!と考えるようになってきました。
もちろん芸術作品は、何も ‘考えずに感じることが大切’ という一面もあります。でも私が一番やりたいことは、作品に込められた “思い” を感じること。そのために必要なのが道しるべとしての「美術史マップ」です。
渡邉先生のインタビューを読んで、自分のやりたいことは間違っていなかったんだ!と嬉しくなりました。

これまで美術について学んだことがなかったので、出会う画家は知らない人ばかりでした。画家の名前を調べるところからスタートして、資料を読み作品を見て想像を膨らませて…。少し理解できたらnoteに投稿。
こうやって少しずつ理解を深め、広げている最中です。ジグソーパズルのように大きな地図にピースを置いています。まだスカスカですが💦。
しかし名前や作品を知っていても、全く宙に浮いているピースがたくさんあります。その一つがアルチンボルド。
これまで現代のデザイン画のような場所に仮り置きしていたアルチンボルドのピースですが、今回、ひとまず16世紀に移動しました。
あっ!ルーヴル美術館のグランドギャラリーと同じ配置だ!一歩前進です。

今回アルチンボルドについての資料をじっくり読み込んだわけではないので、今日のところは、ここで一旦停止。
手持ちの資料に取り上げられている
・皇帝主催の行事を企画実行するアート・ディレクターとしての一面
・肖像画家としての一面
・自然界と想像力の探究を続けた奇才の宮廷画家
など、多面性を持つアルチンボルドの魅力については、また次の機会に。
西洋絵画鑑賞を始めて4年、これまでもちょくちょくアルチンボルドに遭遇してきたのですから、また近いうちにお会いしましょう!
焦らず少しずつ歩んで行きます。

<終わり>

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