『細部から読みとく』 絵画鑑賞
古本屋さんで手に取った本。
そして引用しているフレーズも素敵です。
スージ・ホッジ著『細部から読みとく西洋美術』は、4ページ(見開き2ページ)に一つの美術品を取り上げ、
・最初の見開きページ … 作品の全体図とその説明
・次の見開きページ … 細部拡大図とその考察や分析
を掲載しています。
総数100作品・675点の拡大図、パラパラめくるだけでワクワクします。
これは。。。もう、手に入れるしかないでしょ!
しかし。
古本屋さんで手にした本書は、少しヨレヨレになったページがあります。
うわーっ、残念。
しかし、それはちょうど去年の11月でした。
毎年 誕生日のプレゼント交換をしている友人から ちょうどLINEをもらったばかりでした。
「今年もそろそろ誕生日のプレゼント、考えておいてね!」と。
「スージ・ホッジ著『細部から読みとく西洋美術』が欲しい!」と迷わず返信しました。
ありがとう❤︎。 少しずつ少しずつ読み進めています。
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美術本で見たことがある著名な絵画であっても、私の場合は知識として「知ってる」だけ。しっかり「鑑賞」してきませんでした。
時間やお金、体力には限りがあるのですから、全ての名画をこの眼で観るのは不可能。そうであるならば、たとえ紙や画面上であっても キッチリ自分なりの「鑑賞」ができる力をつけたいものです。
本書は名画鑑賞するための、いえ物事すべてに対応するための “きっかけ“ と “ヒント” を与えてくれます。
“ 問題は何を見るかではなく、何が見えるかである ”
私には、何が見えるでしょうか。。。
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ルネサンス期の名画として美術本で目にして「知っていた」こちらの作品。
十字架に磔にされて遺骸となったキリストが十字架から降ろされる場面を描いた『十字架降架』。
今から590年も前に描かれた祭壇画(両翼部分は消失)です。
足元に崩れ落ちる聖母マリア。右端にはマグダラのマリアもいます。
『細部から読みとく西洋美術』には見開きページで細部の解説があります。
登場人物の説明や、画家の他の作品紹介など・・・なるほど なるほど。
とても理解が深まります。
しかしこの作品、これだけにとどまりません。
細部に注目してよく見ると、ものすごく興味深い作品ではありませんか!!
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まず画面中央、薄紫色の衣装を着て梯子に登っている男性に目が止まりました。
キリストの両手足から釘を抜いて降架の手助けをしているその助手の男性は、とても窮屈そうです。奥行きのない空間で 壁と十字架や梯子に挟まれて身動きが取れない状態。
「この額縁の飾り(=トレーサリー)が邪魔なんだよなぁ・・・袖が引っ掛かって 右手が抜けなくなっちゃうよ」
よく見ると、右手に持った釘の先端は額縁よりこちら側=2024年の空間に飛び出しているではありませんか⁈
彼は無事に590年前の世界に戻れるのでしょうか。
彼だけではありません。
画面 左奥、ハンカチで目を押さえている女性(聖母マリアの異母姉妹)は隅に追いやられて手を伸ばすこともできない状態。
反対画面 右端のマグダラのマリアは、その場に立っていられないほどの悲しみのため座り込みたいのに、それも許されないほど狭いのです。
まるで、パカっと蓋を開けるとお人形が詰め込まれたミニチュア箱のような仕組みなのかしら?
と思いきや、そのサイズに驚かされました。
220 × 262cm・・・ということは全員ほぼ等身大ではないですか⁈
となると、デパートのショーウィンドウのように狭い空間で、劇団員が舞台の一場面を演じているようにも思えてきました。
ここからは妄想です。
司会者が小部屋のカーテンをひとつ一つ開けながら紹介していきます。
「こちらのウィンドーは『受胎告知』。演じるはスペインから来たマリア劇団」
「お次は『最後の晩餐』イタリアのレオナルド事務所の皆さんです!」
「そして本日の目玉!。ベルギーのウェイデン隊の役者さんが演じる『十字架降架』!」
観客がSNSに投稿するショット撮影ができるように、役者たちは静止してポーズをとっています。
・・・と紹介されても違和感がないかも知れません。
こちらのウェイデン隊『十字架降架』にさらに注目してみましょう。
10人の人物がそれぞれに与えられた役割を演じています。
悲しみの表情を浮かべ見事に涙を流す 6人。
この涙の描写、見事としか言いようがありません。
そして、何と言っても登場人物の身体の動き、手足の表現が画面全体にリズムを作り出しています。
キリストと 青い聖衣を着た聖母マリアの身体の曲線がシンクロしています。
キリストの右手とマリアの左手は至近距離にありますが 触れ合ってはいません。
しかし逆に 遠い側にあるキリストの左手とマリアの右手は二人の強い絆によって呼応しているように感じるのは私だけでしょうか。
こんなに色鮮やかなのに、ふと単色のグリザイユで描かれているような錯覚に陥りました。浮き彫りのように立体感があるからでしょうか。オーク板に描かれた油彩であることを忘れてしまいそうです。
耳を澄ませて衣擦れの音と 涙が頬をつたう気配を感じていたら、音楽が聞こえてきました。この上もなく美しい旋律が胸に沁み渡ります。パイプオルガンの音色漂う空気が静かに揺れて、空間の狭さなど忘れてしまいそうです。
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ハッっ!。
すっかり絵画の世界に入り込んでいました。
なんと素敵な作品なのでしょうか。
恐るべし ロヒール・ファン・デル・ウェイデン(1399/40-1464年)・・・。
そういえばこのお名前、どこかで聞いたことがあります。
そうでした!。国立西洋美術館の常設展でこちらの作品を観ました。
ロヒール・ファン・デル・ウェイデンではなく、
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン(派)となっています。
古い資料を辿ると、以前は「(派)」がついていなかったので、購入当時は国立西洋美術館も「真作」だと考えていたのかも知れません。この辺りは難しいところですね。
いずれにしてもロヒール・ファン・デル・ウェイデン「周辺の」、あるいはその「流れを汲む」画家の作品です。
次回 美術館を訪問した際「チェックすべき作品」としてリストアップしました!
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いやぁ〜。楽しいですね。
実はこの作品、『細部から読みとく西洋美術』のまだ4作目です。まだ96作品も残っています。何十年も楽しめそうです(笑。
著者のスージー・ホッジ氏はこのように書いています。
ますます美術鑑賞が楽しくなりそうです!
<終わり>
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