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Dir en grey 『19990120』 - 進化というか深化した真価

1999年1月20日、Dir en greyはX-JAPANのYoshikiプロデュース、しかもシングル3枚同時リリースでメジャーデビューという超破格の大型新人としてデビューを飾りました。

あれから25年も経っているにも関わらず、新譜のタイトルである「19990120」という文字を見た瞬間、すぐに何のことかピンときて衝撃を受けた。
それだけ印象的な出来事だったのでしょう。
タイトルだけで、当時中学生だった私の苦い青春時代が一気に甦りました。

そのシングルの内容は、そうもちろんメジャーデビューの3曲のリメイク作。

当時の販促用ステッカー

当時はヴィジュアル系の王道ともいえる、切なくて激しくメロディアスな音楽性から、その後はよりヘヴィで猟奇的なまでに過激な音楽性で世界的に活躍の場を広げた彼ら。
一体どんなリメイクになるんだ?と物議を醸した本作は、新旧両方のファンを納得させる素晴らしい内容に仕上がっています。

基本的には原曲に忠実に、より原曲を深化させてその真価をあらわにしていると感じます。


ゆらめき


まずは、一番聴き易く、いわゆるシングル曲としての役割を一番きっちり果たしていた『ゆらめき』。(他の2曲のクセが強すぎただけとも言える。。。)

この曲は個人的にも一番好きだった半面、荒削りであっさりしている印象を当時受けていました。
もともと、当時デビューのために用意されていたのはこの曲を除く2曲で、本来2枚同時リリースを予定していたもののレコーディング直前にドラムのShinyaがこの曲の原案を持ってきて3曲になった、というエピソードが。

1999年versionは最初から最後まで疾走感溢れるリズムで一気に駆け抜け、王道ヴィジュアルロックのど真ん中という印象でしたが、今回はピアノと歌からしっとりと始まり、途中からバンドの演奏が重なりペースアップしていくアレンジになりより一層楽曲のゆらめき感を増している。

原曲のテイストを崩さず、この曲の持つ切なくてメロディアスな魅力を存分に引き立てた名演だと思います。

歌詞の「僕」が「俺」に変わっているところに、確かに今の京は僕とか言わないよね、と時代の変化を感じました。
この曲こそ、25年のときを経て、本当の意味で完成したといってもいいのではないでしょうか。


メジャーで全国流通してはいけない曲ランキング歴代1位といえるこの曲。当時ミュージックステーションで披露してお茶の間からクレームが殺到したのは有名な話ですが、常識に囚われない彼らのスタイルは当時から健在でしたね。

以前にもセルフカヴァーされているので、今回どうなるのか?と思いましたが、平たく言うと前回は洋楽っぽいラウドでメタルコアなアレンジでしたが今回は日本語のままで原曲寄りな印象。
それでも終盤はカヴァー版のブルータルなテイストも入れ込んでいて、2曲を掛け合わせたようなアレンジに。

年齢を重ねても衰えるどころか、初期衝動がまだ残っているのが本当に凄い。
10代のような躍動感は衰えを知らず。

オリジナルの最後、「バイヤイヤイヤイヤイヤイ・・・Death trap!!」という謎に印象に残るフレーズが、「ようこそ首塚 Death trap!!」に変わっていた独特のセンス、最高。

アクロの丘


シングル曲で8分越え・・・という最長記録を打ち立てたバラード曲。
より幻想的で完成された音作りに鳥肌ものの名曲です。

歌声が優しく、包み込むような大きなスケール感を感じさせます。
ストリングスが前面に出てドラマティックで浮遊感のある壮大なアレンジで、バンドの演奏力が飛躍的に上がっています。
当時、「一番バンドでカバーしやすい曲」と思っていましたがこれは簡単にはコピーできない領域でしょう。

中盤の歌詞の改変、「思い出よ ようこそ」というリスナーに語りかけているとも取れるドキっとする言葉に驚き。
そして、衝撃を受けたのは「I miss you. I love you.」という言葉が京の口から出たことがとても意外でした。
おそらく、曲の魅力を引き出すためにベストな方法として、こういった言葉を使うことに抵抗がなくなったということも25年を経ての成長なのかもしれませんね。

しかし、なぜかこの曲の「僕」は「僕」のままだった(汗)

各パートのアレンジが素晴らしく、しっかりと絡み合いメリハリが付いていて、最後まで聴いて8分という長さを全く感じませんでした。


25年という長い月日を経て、本当の姿を現した伝説の3曲。
再び新鮮な気持ちで楽しむことができてとても幸せな時間を過ごせました。
逆に、オリジナルを聴いたことのない人にもどう聴こえるのか、感想を聞いてみたいと思います。


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