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"プログラミングを用いた舞台演出"のシステム構成アーカイブ1.5 : "プログラミングを用いない舞台演出"のシステム (レーザー編)

はじめに

この記事連載の狙いは、こちらのnoteをご覧ください。

概要

こちらの連載は"プログラミングを用いた舞台演出"のシステム構成アーカイブなのですが、そもそもプログラミングをあまり用いない場合のシステム構成はどのようになっているのか、というのも紹介する必要があると思い、連載の合間で使用することの多いシステムを紹介します。
会社によってやり方はさまざまですが、一例として参考になれば幸いです。
初回は、ライブなどの現場でレーザー演出を行う際のシステムを紹介します。

使用機材

各ライブで使用する機材や台数は、演出内容や予算との兼ね合いで決定されます。
私がレンタルなどで使用しているレーザープロジェクター(以下、レーザー)は海外から輸入していますが、ほとんどがPangolin社のFB4を背面に搭載しているものです。
出力は6Wや11Wから30Wまでと、幅があります。

FB4付属レーザーの背面

FB4が搭載されているレーザーを使用するメリットは、灯体と卓をLANケーブルで接続することができる点です。
以前はレーザーでよく使用されているILDAケーブルを用いていました。今でもレーザー界隈では使用されることの多いILDAですが、こちらはアナログ回線のため長い距離を引き回すとノイズが増えてしまいます。また、引き回すことのできる距離の限界も短く、ネットワーク化が難しいため基本的に1回線に1台しか接続できません。
対してLANケーブルで引き回すことで、上記の課題が解決されます。(ざっくりですみません。)
ちなみにレーザーに付属のFB4は、LANのportが2口ついているものがほとんどです。こちらはDanteシステムのようなリダンダント接続対応ということでなく、デイジーチェーン接続を行うための仕様となっています。

制御卓には、同じくPangolin社のBeyondを採用しています。
こちらは、レーザー制御のソフトウェアとして世界シェア1位のソフトのようです。

Pangolin Beyondの操作画面

拡張性が高いうえに、再現性が下がることもありません。(ライセンスは非常に高価で気軽に個人で所有するのは厳しいです。)
また、TouchDesignerはBeyondとの連携が公式OPで用意されていますが、こちらはまだまだ課題があるな、という印象でした。


システム図

では、実際のシステム図の1例です。

Beyondを搭載したレーザー卓とライセンス登録されているFB4をFOHの卓に置き、それぞれのLANをHUBで繋いでいます。
また、ステージ側はレーザーをデイジーチェーン接続や単体での接続を行いながら、LANケーブルを用いてHUBに集約します。(図では3台のみですが、HUBのportが許す限りたくさんのレーザーをUNITに接続します。)
このFOHとstageそれぞれのLAN HUBを長ーいLANケーブルで接続します。
基本的にこちらはLANケーブル2本を束ねたものを使用します。(片方はBack upです。)
アリーナ以上の規模や台数が多い現場などでは、舞台の下手・上手それぞれにHUBを1つずつ置くこともあります。
ちなみに、基本的にHUBは電源の近くに置くことがほとんどです。
FOHとstageを結ぶ信号線は光などのシステムを組むことも多いです。

レーザーシステムのあれこれ

レーザーのシステムを使って感じた不思議なことや面白い部分を列挙します。
レーザーというよりPangolin社のシステムの特徴かもしれません。
追記しながらすこしずつ更新します。

プロトコルは不明

レーザーソフトとコンバータを流れるLAN上の信号は、pangolinの独自プロトコルです。
かなり優秀な印象ですが、やはり台数がかなり増えて点の数が多いようなキューを再生していると、少し信号が無理をする感じがします。

卓とは言っても、専用のハードウェアはなくMIDIコン操作が主流

いわゆる照明卓や音響卓のような大きくてかっこいいハードウェアがあるわけではなく、PCソフトをMIDIコンやマウスで制御します。
レーザーは音ハメを求められることが多いので、フェーダーだけでなくPADなどにエフェクトや飛び道具をアサインしておくと便利です。

申請が必要な会場も

まったくシステムと関係ないですが、レーザーを使用するにあたっての申請書を提出しなければいけない会場も少なくありません。
特にホール規模になると増えてきて、アリーナ以上になるとほぼ必須です。
また、場合によってはLASAの安全管理責任者の資格を持っていることが必要になります。

総括

レーザー、とても楽しいですが、やはり大変です。
照明が明るいと全く見えないですし、スモークが薄くてもビームは見えません。
ただ、暗いときは良くも悪くも、とても目立ちます。
より良い演出となるよう、しっかり勉強して使いこなしていきたいです。

Devil ANTHEM.さん 2021/12/24のstudio coast公演

↓1年くらい前に習作的な感じでレーザー単体の映像を撮ったので、よければ見てください。
レーザーの仕事を初めて3ヶ月くらいの時ですが、いろいろ楽しく作りました。


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