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フランス基地でアデリーペンギン調査

(バイオロギング研究会会報 2017年6月号より)

2016年12月から2017年2月まで、南極Dumont d’urville基地(なかなかつづりを覚えられない)でアデリーペンギン調査をしてきました。ここはフランスの観測基地で、なんと基地の中に18000ペアものアデリーペンギンが繁殖しているという素晴らしい調査地です。ただし例外的なシーズンに当たらなければ、ということだったのだと今回思い知ったわけですが…。

からっぽの繁殖地...

今シーズン、Dumont d’urville基地ではアデリーペンギンも研究者も大苦戦でした。それというのも、いつもは基地の目の前に広がっているはずの海が、海氷によって基地から100 kmくらい先まで覆われていたのです。つまり親ペンギンたちは、餌を取るにもそこから帰るにも、その長い距離を歩かなければなりません。繁殖地を出て行ったペンギンが、1ヶ月以上帰ってこないこともありました(帰ってくるだけまだマシとも言える)。その間にパートナーが卵や雛を見捨てて繁殖地を去ってしまったり、辛抱強くパートナーが待っていても雛が死んでしまったりで、繁殖地にいるペンギンの数はどんどん減っていきました。最終的には信じられないくらいに閑散とした空間が広がっており、生き残ったヒナもたったの2羽でした。

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↑ ヒナぽつーーん。
見回りのたびに、「今度こそいなくなっているのでは...」とハラハラした。

あとあと知ったことですが、この状況は同じ年の昭和基地の様子とは完全に真逆だったようです。同じ東南極域でも随分と大きな違いがあるものだなぁと驚くとともに、「まるまると太ったペンギンが...」なんて話を聞くと、やはり大変羨ましかったです(Dumont d’urville基地のアデリーはほっそりというかげっそりというか...)。

シフト制のアデリー調査

そんなこんなで大幅に計画が狂いながらも、やれるだけの実験をしてきました。今回の調査チームは、フランスの共同研究者2人(ベテラン)に私が混ぜてもらった形です。ロガー回収などのため、朝の6時から夜中の3時まで誰かしらが繁殖地にいる体制になっており、早朝・深夜・中間担当で手分けをして見張っていました。

私は中間担当で、7時〜8時に繁殖地へ出勤(徒歩5分)、22〜24時に部屋に帰るという毎日を送っていたのですが、調査の後半、早朝担当だったメンバーが一足先に基地を去りました。そのため私は早朝担当に異動となり、その時初めて、焼きたてのバゲット(つまりフランスパン!)が毎朝6時に食堂に大量に現れることを発見したのです。このふかふかの焼きたてパンにバターとジャムをたっぷり塗って食べるのが最高すぎて、毎朝5時半に繁殖地パトロールをした後、食堂でパン待ちをするのが日課になりました。バゲットがチョコクロワッサンになる日もあります(これまたうまい)。

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↑ 昼食・夕食時も1テーブル1本のバゲットが置いてある。
塗るバターの量が日に日に増えていった。

パン以外にも、「今日はなにかの記念日かな?」と思うような肉の塊やホールケーキがしょっちゅう出てくるなど、素晴らしい食生活でした。南極だけども普段よりよっぽどいいもの食べてたなぁ...っていうかこれ全然アデリーペンギンに関係ない。

次こそは?

そんなこんなもありつつ取ってきたデータの解析結果については、またいつか報告させていただきたいと思っています。それから今年度もまた、アデリーペンギン調査へ行く予定です(なんだかとても極地研の人っぽくないですか)。今度こそ絶好調のアデリーペンギンに会えるのか、はたまた...。なんにせよ、がんばります。

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