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猫にまたたび、意外な効果/AND PET#26

住吉大社で会ったさくらねこ

先日久しぶりに訪れた大阪で住吉大社に参拝した時のこと、神社の敷地内で2匹の猫に会いました。こげ茶のブチ猫と黒猫。

2匹の猫が写っています。分かりますか?

猫好きとしては声をかけずにはいられません。しかも招福猫を授かって祈願する「初辰まいり」がある住吉大社です(トップの写真が招福猫。裃姿がかわいい)。これも何かのご縁と考え、猫なで声を発しながら近づいてみたところ、ブチ猫が甘えてきてくれました。どちらも不妊・去勢手術済みの印に耳の先をV字にカットされた地域猫、いわゆる「さくらねこ」です。人なれしているのは近所の人にかわいがられている証拠でしょう。


猫は蚊に刺されてもかゆくないの?

すり寄ってくる猫にデレながらよくよく見ると、周りにはものすごい数のヤブ蚊が飛んでいます。叩き潰そうとしましたが、「神社で殺生をしてもいいのか」「叩く音に猫が驚いてしまうのではないか」との思いが浮かび、結局は手で払うだけに。またたく間に肌が露出していた足首に8カ所、腕に1カ所、服の上からも2カ所刺されてしまいました。ヤブ蚊、おそるべし。

昼間に活動するヤブ蚊。

そのかゆみは強烈で、いけないとは思いつつもかきむしってしまった跡が未だに赤く残っています。その一方で、たくさんの蚊に囲まれても猫はあまり気にしていない様子でした。はたして蚊にさされても平気なのでしょうか。


またたびには蚊を除ける効果が

そんな疑問を解決すべく調べてみたところ、猫もかゆみを感じるものの、かきむしるほどではないようです。それならよかったと安堵する一方で、興味深いレポートを見つけました。

猫がまたたびに反応する原因を研究している岩手大学が、名古屋大学、英国リバプール大学、京都大学と共同で2021年に発表したレポートによると、またたびにはネペタラクトールという蚊の忌避効果をもつ物質が含まれており、猫がまたたびに顔や体をこすりつけつける「またたび反応」によって、その物質を体に付着させて蚊を除けていることが立証されたのだそうです。

人間にとって蚊は、刺されるとかゆいだけでなく、ジカ熱やデング熱、マラリアなどいろいろな病気や寄生虫を媒介するもの。猫も、心臓や肺に寄生虫が住みつくフィラリアや、アレルギー性の蚊刺咬過敏症などの心配があります。猫がまたたびで蚊に刺されるのを防ぐのは、かゆみ以上にこれらの病気から身を守るメリットがあると考えられます。

この研究から新たな蚊の忌避剤の開発も検討されているそうです。もしかしたら人間とペットが一緒に使える、体に優しい虫よけアイテムが誕生するかもしれません。ちなみに、またたびに反応している時の猫の脳では、多幸感に関わる神経系が活性化していることも分かったのだとか。悪用されると怖いのですが、こちらの働きも有効に役立てられることを期待しています。

またたびを含む植物全般に興味ナシだったぼたん。


地域猫はまたたびの恩恵を受けられるのか

またたびの実やつるは生薬として使われます。

日本中に自生しているまたたびですが、旅先で「猫ちゃんへのお土産」として枝が売られていたり、ペットショップに粉末入りのおもちゃがあったりするイメージ。山あいの土地などに生えるようなので、我が家や今回訪れた住吉大社の周辺で見つけるのは難しいでしょう。飼い猫であればペット用の虫よけスプレーや蚊取り線香で対処できますが、地域猫はそれも無理。蚊に刺されないことを祈ることしかできないことを、なんとも歯がゆく思います。

文・横山珠世
女一人と猫一匹の暮らしから人と猫が共に健康で幸せに生きていく術を考える、株式会社ジャパンライフデザインシステムズの編集兼ライター。『セルフドクター』や書籍などの制作・発行に携わる。

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