見出し画像

マジカルミライの「欠落点」とその補い方

 先日の投稿で、自分はマジカルミライを「振り子のイベント」として、その傾向と教訓を評した。
 ここ数年、イベント自体が肯定的に見られてばかりいるが、自分はその中であえて「欠落点」を挙げたい。
 ライブのみならず、企画展にも通じる批評をしたいところだが、どうしても主観的なポイントが出てくるところは了承願いたい。
 そしてこれは、ミクやピアプロキャラクターズだけに留まらず多くのアーティストに対するメッセージも内包させたいと思っている。
 早速批評に入ろう。

ファンが望む企画展を実施できているか?

 まずは企画展について。コロナ禍を経て規模が幾許か縮小したとはいえ、マジカルミライの二枚看板の片翼を担い続けている。
 自分が参戦した2018年はまだコロナという概念さえなかったので、来客参加型の企画や「祭壇」などが残っていた。新生活スタイルの確立とともに、こうしたイベントは淘汰されてしまった。
 しかしそれだけではない。企画展自体の「ブース毎に要求されるもの」と「内容」のズレが少なからず存在するのである。無論、ユーザーの意見をすべて投入した展示はどこであろうが不可能ではある。
 とはいえ、例えば自動車メーカーとミクのコラボ企画において、実際にコラボモデルを(実運転できなくても)展示するのはいい。だが「それ以上」のことが行われた例はほとんどない。自分のように運転が苦手で、そもそも車を所有することが困難なファンは切り捨てられているようなものだ。
 もっとも、すべてのブースがすべてのファンに対応することは望まない。問題は展示の「質」である。コロナ禍で淘汰された先述のイベントも含めて、もう少しファン目線の企画展を行うべきと考えている。

マンネリを恐れないのはいいが、限度がある。

 ここからはライブについて。前回言ったように、ミクたちのライブは「熾烈な生存競争」をバックグラウンドに選ばれた楽曲が主体となる特性上、保守的で「過剰な飾り気」を排除した公演が好まれやすい。
 情報によると、今年のライブは全公演、全時間帯に楽曲の差し替えがあったものの、ライブ自体は保守的な内容だったという。10thから振り子を戻し、ミクの16年を祝賀しながらもあえて「攻めない」方針を取った結果だろう。
 だが、ミクのライブもまた他のアーティスト同様の大きな課題を避けて通れない。マンネリ化である。
 特定の楽曲ばかり演奏していると、いつしかファンに「飽き」ができて他の楽曲が望まれるようになる。一方で、ライブ演奏が少ないセットリストで固めると、マニア層にしか受けないような結果に終わる。そうした二律背反が大きくなればなるほど、ライブのマンネリ化のリスクは大きくなる。
 リスクを承知で演奏される楽曲もある。ポルノグラフィティの「ハネウマライダー」やB'zの「愛のバクダン」はその代表的なものだが、ミクにも「Hand in Hand」という同ポジションの楽曲がある。
 自分は先程、ミクたちのライブの背後に「熾烈な生存競争」があると述べた。つまりライブで演奏されるのは、星の如く存在する楽曲のうちほんの一握りに過ぎず、そしてそれらの中でも格差が出てくる。「Hand in Hand」に飽きを感じているファンもちらほらと存在する中、マジカルミライのライブはマンネリ化に立ち向かっているように見えて、その方角に突き進んでいるとも取れる。
 2017年から「楽曲コンテスト」を行い対策に出たようだが、その大半は「使い捨て」されているのも事実。これではマンネリ化の止めようがない。
 ではどうするか。自分が思うに、定番楽曲の枠はあっても構わないが、少しその枠を整理すべきとも考えられる。さらに、新規層にも受けが良くなるように、バランスよく「隠れた傑作」を配備する。
 これが上手く回ったのが2016年の公演だった。2024年以降の最大の課題は、それを実行できる余力が運営サイドに残されているかどうかにある。

何のためのエンドース契約だったのか?

 これは企画展とライブ、双方に通じる欠落点である。2020年、ミクはESPとエンドース契約を締結してシグネチャーギターを世に問うた。その年のマジカルミライは、「アンノウン・マザーグース」の話題で持ち切りになるくらいミクのギター演奏が光っていた。
 これは…と誰もが期待を寄せたが、翌2021年以降は保守的なライブが続き、ミクのギターはESPブースで展示されるだけ、という状態が続いた。
 先日の批評で書いたが、「マジカルミライ2020」はコロナ禍の下実施されたライブとしては「やり過ぎ」なところがあった。おそらくそれを受け、運営サイドがミクにギターを持たせる機会を意図的に削っているのかもしれない。
 だが、その方針がせっかくのエンドース契約を形骸化させているのが現実である。実際、ミクがシグネチャーギターを弾く様を楽しみにしてマジカルミライに足を運ぶファンも少なくないはずだ(自分もその一人)。
 企画展において、ESP契約アーティストが本人同様のモデルを弾かないことは百歩譲らずともわかる。では、肝心のモデルはどうか。ただ飾られるためのギターでないはずである。
 極論を言うと、マジカルミライ2021のセットリストを知ったときは失望すらした。あまりに保守的で、せっかく発表したエンドース契約を丸投げしているような内容だったからだ。今後「アンノウン・マザーグース」をライブ配信で見たあの瞬間を超える体験はできないのか、と思うと残念でもある。
 先日、ESPはミクモチーフの(おそらく世界でただ1台の)ギター製作に入ることを発表した。その折には、期待外れのライブ(あるいは企画展)にならないことを保証できる体制がなければ、エンドース契約はさらに形骸化していくことだろう。

他のピアプロキャラクターズに正しく焦点は当たっていたか?

 これは主に2018年〜2021年のマジカルミライに言えることである。年毎に、ミク以外のピアプロキャラクターズに焦点を当てたライブを実施してきた。
 しかし、個人的に現状を述べると以下の通り。

  • リン&レン:焦点を当て過ぎて、他のキャラクターを薄れさせた。

  • ルカさん:ミクとのデュエットが前提のような扱いだった。

  • 姉さん:コロナ禍が災いして、思うように焦点を当てられなかった。

  • KAITO:程よく焦点を当てられた。

 このように、不可抗力もあったとはいえ新たな格差を生み出すような結果になってしまった。逆説的に試みは失敗に終わった、と言わざるを得ない。
 2024年以降は、既に実施された双子のワンマンライブが大当たりしたように、マジカルミライとはまた別の形式でキャラクターの掘り下げをすべきだろう。無論、ミクとはまた違う「魅力」を際立たせることも重要になる。さもなくは彼らがミクに埋没するばかりか、キャラクター格差を助長しかねないだろう。

 相変わらず主観的かつ拙い文で申し訳ないが、今回の批評は以上となる。何かあればコメントや、自分のXアカウントおよびThreadsアカウントでお伝えいただきたい。

 それでは、また機会があれば。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?