専業主夫のいる暮らし

  有給休暇中の夫が、一週間限定で〝専業主夫体験〟をしている。三日目の昨日は、幼稚園バスの時間に遅刻しそうだというにも拘らず、全く焦る様子もなく、丸いおにぎりと一回だけ巻いた卵焼き、それから冷凍食品を詰めたお弁当を持って夫と息子は愉しげに出かけていった。わたしたち夫婦はこれまで夫が仕事、わたしが家事育児とずっと分業してやってきた。夫には主夫業が新鮮らしく、どうやら楽しいらしい。

  この数日で気がついたことがある。それは「わたしじゃなきゃできないことなんて、ないんだな」ということ。家事も育児も、これまで「わたしじゃなきゃダメ!」と勝手に思い込んで、自分を追い詰めて、その結果、疲弊していつも苛々していた。洗濯物が生乾きでも、夕飯が一品料理でも、お弁当のおかずが冷凍食品でも、成り立つという事実。夕飯のおかずを二、三品作ることも、お弁当に手作りのものしか入れないことも、わたしが決めたルールであって、絶対にそうしなければいけないわけじゃない。なんだか力が抜けた。これでもいいんだ。もっとハードルを下げてもいいんだ。

  「クリスマスになったら、ママがママに戻る?」息子と二人きりになったとき、息子がわたしに訊ねた。「クリスマスになるよりも前に戻るよ。月曜日になったらね」「よかった」安堵したような表情で言った息子が愛おしくて、早く主婦業に戻りたい!なんてこの時は思ったのだけれど、ソファで寛いでいるだけで食事が出てくるこの状況が幸せで、まだ終わってほしくないな、なんて思ったりもする。不思議なことに、夫への愛情までもが復活した。このまま夫が主夫をして、わたしが稼いだ方がうまくいくんじゃないかとさえ思ったが、生憎わたしには家族を養うだけのお給料を貰える仕事に就けるような能力はない。この六年数ヶ月、専業主婦側からの世界しか知らなかった。だから、主婦とは=大変なもの、損な役回り、認めてもらえない、そんな設定を持っていた。しかし今回夫が主夫をしたことで、シュフとは=ありがたい存在、いてくれると家族が快適に過ごせる、そういうプラスのイメージへと変わった。あと四日間、専業主夫のいる暮らしを楽しみます!

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