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ミュージカル「デスノート」韓国ソウル&釜山 観劇レポ

ミュージカル「デスノート」@韓国ソウルシャルロッテシアター&釜山市民文化会館

はじめに

2023年5月にソウルで、8月に釜山でミュージカル「デスノート」を見た時に書いた書きなぐりレポ。noteに掲載するにあたり多少改訂しました。ネタバレしてますので知りたくない方は注意で。

デスノートは推しの柿澤勇人さんのライト、小池徹平さんLの舞台版の映像だけ見て臨んだ。元から知ってて好きな俳優さんではあったが、今から思えば、これがキムソンチョル沼への入り口だったのだ。だってせっかく初めての韓国ミュージカルを代表するスター、ホン・グァンホ氏の公演だったのに、ほっとんどの感想がキム・ソンチョルのLについてのことばかりである!!!!!

新演出について

この演出の凄いところはパネルを使った超近未来的かつエコな舞台装置。
開場中は、人間が死ぬまでの時間を想起させるような?赤い時計のようなものがチカチカとたくさん、舞台上だけでなく劇場の横の壁まではみ出て映し出されている。
最初はプロジェクションマッピングだと思ったのだけど、ヒロイイダさんの書き込み見た限りこれほとんどパネルなんだよね?だからプロジェクションマッピングより、くっきりはっきり見える、ということでよろしいか。(後日註 最近はこのLEDパネルの演出、よく見かける。ただ、このデスノートを超える効果的でクールなパネルの演出は、私のなかではまだない)

そして開演となると、舞台上に大きな鳥(実際は死神かな)が飛来したかのような感じでスタート…このあたりの迫力は、実際見てみないと説明しづらい。
人間界からリュークとレムのいる死神界(?)にうつるときの演出もブラックホールのような穴が開いて、観客がそこに吸い込まれていくような演出で
冒頭からめちゃくちゃ引き込まれる。

装置としては、左か右から、例えばライトの机やLの椅子や警察の机、最後のふ頭の倉庫の中の様子が出てくるくらいで、大きな転換がなく、非常にエコ。もしかしたら2.5次元とかこんな感じなのかな。しかしあのグラフィックの迫力は、プロジェクションマッピングとは違う、パネルをたくさん使った効果なのかなとも思われる。
また、よく左警察、真ん中L、右にライトみたいなかたちで漫画のコマ割りのように舞台が分かれ、二次元的でもあった。

そして見せ場の一つライトとLのテニス対決シーンでは、栗山演出オマージュ?の回転するテニスコート、しかし舞台そのものは回転せず屋内ハードコートの天井とコートが回転しまくり観客の視点を変えさせる、という、もうもう本当に痺れる演出のなか、役者が躍動する。ボールの滞空時間どんだけ長いのよってことは置いておいてw
これはぜひ一度生で見てほしい。この1:24のシーン。

ストーリーについて

ところでデスノートは、その昔L編くらいまでは漫画を読んでいて、またかっきーの舞台版の映像を見ていて、楽曲がいいし、話も原作通りとはいかずともよくできていて見ごたえがあったので、韓国版も見るのを楽しみにしていた。
(いやほんとあの漫画のトリックをよくぞここまで舞台に落とし込んだよね…といってもL編で一番唸った、例の有名な「計画通り」の展開は舞台版ではない。漫画はLの後も続く一方、舞台はL編で完結しているので、ラストが全く違う)
あれだけ長い漫画のL編を3時間弱でやっているので、基本的に駆け足。冒頭からライトが教室で先生と正義について議論をたたかわせているし、ライトがデスノート拾って試しに名前書いた相手が死んじゃったら速攻「世界を変えられるかも…?」とか歌っちゃうし(ビッグナンバーですw うーんグァンホさんの美しくかつ力強い歌声すばらしー)

でもぐんぐん進むストーリーに引き込まれていくので速攻の展開も個人的にはあまり違和感なし。

キャラクターと役者について

1幕はライトが主人公で、2幕はLが主人公ってくらい、Lも目立つ。
ライトとLは2回とも同じペアでみて、ライトは韓国ミュージカル界が誇るホン・グァンホ氏、Lはドラマでもおなじみで私が目当てとしてたキム・ソンチョル氏。

グァンホさんはもう、圧巻。ものすごい声量とストレスフリーのきれいな歌声、から移行しての力強いシャウトまで変幻自在でこれぞトップスター。デスノートは韓国初演が彼で、今回久しぶりに登板してくれたようだが、もういい年だから、そろそろライトも難しくなってくるのだろうか。実際、制服姿はコスプレみが強かった(失礼)。釜山では初見のシャルロッテの強烈な印象に比べると迫力に欠けたけど、どうやら具合が悪かったみたいだ。最初の新世界を弱きものの生きやすい世界を造るのだという純粋な学生の感じから、どんどん狂っていくさまが、台詞だけでなく歌声で表現されていた。彼のライトを2回も見ることができて本当に幸運だった。

そしてキム・ソンチョル氏のLは本当に原作のイメージにビジュアルが近く、唇が赤く猫のような身のこなしで(椅子にぴょいっと飛び乗るところ、うろうろして折り返すところとか)、クールに見せかけて偽りの正義を掲げるキラを捕まえてやると真っ赤に燃えている。この意外なほどの、しかししっかりとした熱さがいい。特に釜山ではぎらぎらとしていた。

恐らくバランス的には、グァンホ氏とジュンス氏、コ・ウンソン氏とソンチョルというのが適していると思われ、またジュンスさんのLはとてもカリスマ的に見えるし、ウンソンさんのライトもとてもよさそうだった。だから機会があれば見たかったけど私はこのライトとLを2度見ることを選んだ。

Lが「見事だ、キラ」と声だけで登場するシーン、誰よりも声が低くて、ここでLが声で出てくると原作から分かっているのにかっこよくて震えてしまうw そして実際の登場シーンは、舞台中央に体育座りしているLに縦に光が差すような演出で、これもめちゃくちゃテンション上がる。そのあと、背景の画面を手で操る演出もかっこよい、あーー、映像に残してほしい。

これはこの登場シーンの一部だけど、ソンチョルこの時は声上ずってていまいちだ。うまくなったんだね。

ソンチョル氏は、映像でもたくさん活躍しているだけあって芝居が細かい。

私が感嘆したのは、最後ライトに操られていることに気が付くシーン。以下の流れの演技だった。
銃をもっている自分にはっと気づく
→みつめた銃にうつる自身が髪の毛をアップにセットしていることに気づく
→(そんなことは自分ではしないので)操られている状態であること理解し頭を抱える
この一連の動きが分かりやすくかつ自然で、唸った。なおこの間、背後でライトが歌っていますw

最後は、Lはライトの策略通り、ミサのことを思う死神のレムにデスノートに書かれた通りに死んでしまうのだが、ここのところの表情、ソンチョルLは笑うんだなー。最後に謎を解いたことや、ライトとの戦いの楽しさや悔しさを表現したのだろうか。この笑顔の表情は2公演で微妙に違ったけど、すごく印象に残っている。

チャン・ジフさんのリュークは、コメディがうまかったのと、何考えているのだかわからない怖さみたいなのがあってよかった。ソ・ギョンスさんについては、リュークのメイクと格好が似合いすぎてたw あんなにかっこいいことってあるのだろうか。ジフさんに比べじっと人間を観察しているようなリュークだった。

レムはどちらもチャン・ウナさん。哀しんでいるような慈しんでいるような表情が印象的なレムだった。ただ私の言葉の問題か、やはり映像で見た濱めぐのレムに比べると受ける印象が薄め。濱めぐさんや日本の公演にも出てくれたパク・ヘナさんの「愚かな愛」がね、、言葉も含めて心にぐっとくるのだった。

ミサはリュ・イナさんと、チャン・ミンジェさん両方見れたけど、ミサはから回っているほど切なくなるので、やはりキャリアのあるイナさんのミサがぐっときた。ミサはライトのことしか見てないのに、ライトは自分の道具というかカードというかの一つしか思ってなくて、、

2公演の感想覚え書き

・釜山は前から8列目だったが、八百屋舞台がかなり激しいのがよくわかる。後方がかなり高いので、役者さんは坂を上り下りしてるようなものだろう。
なおシャルロッテは1階後方通路よりサイド席。何にも隠れず見やすい。2階席がせり出てるから音は籠り気味だったけど。
釜山市民会館はかなり傾斜が緩く、斜め前の人の頭で舞台真ん中下方が見切れた。。まあ通路近くだったので許容範囲ではあったが。。
・グァンホさんの笑い取りシーンは、リュークがいる椅子に座ってしまうところと、「オッパケンチャナ」シーンなのだが、釜山はそのあたりが元気なく見えた。具合悪かったのだなと聞けば納得。
・ミサミサの曲は現代アレンジでなかなかにおしゃれ。これもこれで好き。
・ライトと妹のさゆのシーンの桜吹雪、わざとらしい演出だが美しくて好き。
・ソンチョルLの登場シーン、白い洋服だから、暗い中歩いてくる様子が見えるが、スポットライトが当たっていないのに、もうLである。
・ソンチョルL、捜査部屋にあるスイーツタワーみたいなのの頂上に、板チョコレートを立てようとするも、できなかった(この間ずっとセリフあり)。
・ソンチョルL、新入生代表挨拶、左右の親指と人差し指で原稿を持っていて、変人感満載
・FBI捜査官の自殺シーン、シャルロッテでは舞台後方にまっさかさまに落ちたところに電車がやってくるきつい演出だったが、釜山では横に倒れて落ちた。後方の段差があまりなかったのだと思うw
・Lが、この楽曲で手を横にひらくと、暗闇からサーーーッと地平が割れるように光が差し込むシーンが好きすぎて好きすぎて好きすぎて。
ジュンスさんも手を開いてるね。2:44です。このシーン本当にかっこいい。

・ソンチョルL、テニス対決シーンでは、準備体操で変なおどりを踊って観客を沸かせたし(へそチラごちです!)、途中で女子に差し出されたタオルには
そのまま横に倒れて頭をこすりつけたり、テニスの身のこなしも猫のようだし、、好き…
・ミサミサとLの対峙シーンでは、Lは低音で「I'm ready~♪」と歌って踊って笑いを誘っていた。
・ふ頭の対決シーン、Lが死んだあと、リュークに命乞いをするライト、ここらへんのグァンホさんはソウルでも釜山でも泣いていたし、絶妙な情けなさと寂しさで、歌声も含めてとてもよい。
・最後のレクイエムの演出は、民也のが出色だと思ってるが、そのリスペクトが感じられる、なんとも胸につまるシーンで終わる。
・ところでリュークもデスノートに名前を書いたのであれば砂になってしまったのか…?と思うけど、いつもよく分からないまま終われる
(デスノート使ったからでなくて人間を愛すると砂になるのでしたっけ)
・カテコは、何度でもいうけど、シャルロッテではLがライトに猫のように飛びつき、固く抱き合った後、舞台後方に歩いて行き、そこから2人ジャンプして舞台下に落ちる、というエモ演出であった。心のビデオでレコーディングした。
釜山では、Lが私の背中、あいてますよ、という感じで差して、グァンホさんは迷ってたけど結局おぶわれて舞台袖によたよたと退場。今思えば具合がわるかったのだね…。そんななか最後までやりきってくれて本当に本当にありがたい。
なおその前のソンチョルの挨拶は、心臓を捧げよみたいな感じで胸を叩いたあと、そのままその手で投げキッスで、なかなか気合入ってた。釜山のソンチョルは本当に気合入っていた。グァンホさんの分もカバーするつもりだったのかもしれないな。

本当に新しさと熱さを感じる、いい舞台であった。見れてよかった。もっと映像に残してほしいけど、ほとんどないのが残念。何か理由があるのだろうか。
またいつか見たい!凱旋を待っている。

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