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【短編小説】バースデー

僕はあぐらを組み、アコースティックギターを太ももに乗せ、そっと弦を弾いた。 目の前には楽譜がある。既存の曲ではなく、僕のオリジナルの曲だ。 しかし、自分で作った曲のはずなのにほとんど忘れてしまっているので、ところどころ間違ってしまう。 楽譜の右上に書いてある日付を確認した。 「20X0年10月1日か…」 今日は20X1年10月1日、ちょうど1年前の楽譜だった。 僕は毎日曲を作り、それを楽譜帳に記録して1つのファイルにまとめている。 僕にとってこの楽譜帳は日記みたいなもので、そ

    • 【短編小説】 キャッチボール

      蝉の声が聞こえる。 太陽が燦々と輝き、公園の白土が太陽の光を煌々と反射している。 その眩しさに目を細めながら顔を上げると一組の親子がいた。父親と息子のようだ。 息子の方は小学生の高学年くらいの年齢だろうか、左手に黄色いグローブをはめている。 そしてそのグローブの中に右手をいれ、大きく振りかぶった。 少年は左足を高く上げ、スムーズなフォームでボールを放った。 次の瞬間父親のミットにボールが届き、ミットの乾いた音が気持ちよく鳴った。 目を覚ますと、まだ5月だというのに滝のような

      • 【短編小説】 セブンスター

        壁の木目を目でたどり、横向きの線があるとあみだくじの要領で隣の線に目を移す。 木目の終着点まで行き着くとまた別のスタート地点を決め、あみだくじを再開する。 斎場の最前列に座っていた僕は、そうやって時間を潰していた。 今日は僕の父親の葬式である。享年は57だった。 「七星、何ぼーっとしてんの。ほら、行くよ」 母親に促され、僕は席を立ち、焼香台へ向かった。 母親の見よう見まねで焼香を済ませ、父親の遺影に背を向けた。 焼香の煙が体を包むように寄ってくる。 僕はそれから逃れるように

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