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ガンジーのリーダーシップブレンドを勝手に味わう

あまりに多様で、一人ひとり異なるようにすら見えるリーダーシップだが、ゴールドマン氏の6つのリーダーシップ類型を使うことでそのメカニズムを理解することができる。今回からは何回かに分けて、実際に様々なリーダーのリーダーシップを、6つの型を使って解剖してみたい。

なおこれまでの議論は以下ご参照。


ガンジーブレンドを味わう

わかりやすいところから行こう。例えばガンジー。彼が、「非暴力・不服従」というコンセプトでインドの独立を勝ち取って行ったストーリーは非常に有名だ。そして、そのリーダーシップは非常に独特のように思える。唯一無二のようだ。が、彼のリーダーシップは6つの類型のぶれんどとして十分に解釈できる。

まず何よりも彼が得意で、かつずっと貫き続けたリーダーシップスタイルは、「先導型」だ。彼は常に自らを律し、自ら先頭に立ち続けた。経済的な独立を目指し糸車を回し、また不服従を示すための行進を先導した。

しかしおそらく「先導型」しか使うことができなかったら、彼のリーダーシップはあれほどインパクトを産まなかったのではないか。ガンジーのリーダーシップが広まり、大きなうねりに繋がっていくのに貢献したのは「ビジョン」だ。彼はビジョンを語った。「非暴力・不服従」という、分かりやすい、しかしユニークで且つ強い力を秘めたコンセプトはまさに彼の思想が集約されたものであり、人々はこのビジョンに感化され、徐々に行進に加わっていく。

そして、彼の影響力を強めるのにもう一つ貢献したのが「強圧型」だ。ガンジーは、何よりも自らを厳しく律し続けたが、その苛烈さは家族を含めた周囲にも及んだ。おそらくその強圧を受けた周囲は、そのコンセプトには同意しつつも、同時に息苦しさも感じたかもしれない。しかし、そのような裏表のないどこまでも真摯な厳しさが、彼の「先導力」を更に高め、彼の「ビジョン」の流布を更に加速させた。

ブレンドの味わいは配合次第

重要なのは、「先導型」「ビジョン型」「強圧」のいずれかではなく、全て、ということだ。この3つをどの様にブレンドするか次第でその影響力は変わっていくし、このブレンドの仕方自体がまさにリーダーシップに「個別性」を生む源泉になる。私はガンジーを深く研究したわけではないが、彼のストーリーを知っている範囲で敢えて単純化するならば、「先導型」と「ビジョン型」「強圧型」のブレンドは8:1:1くらいだったのではないか。あくまで彼は先導を軸として活動した。しかしその影響力を高めるためにビジョンも用いたし、自らに課したのと同じ基準を周囲にも期待した。

仮に、この配合が1:8:1だったらどうだっただろう。あちこちでビジョンを語る。そして、そのビジョンに反しない程度には自ら先導するし、周りに人目があるところでは家族に厳しく当たるが宅内では多少の贅沢は認める。どうだろう、そんなガンジーがいたとして、あなたは自分の身を賭して塩の行進に加わろうと思えただろうか?

つまり、ここで分かるのは、複数の型のブレンドと言っても、そのブレンドは相乗効果を生むときもあれば、個性を打ち消し合ってしまう残念な仕上がりになってしまうこともあるということだ。

6つのタイプを華麗に使い分け、、、てない!?

ガンジーの例でもう一つ特徴的なのは彼が「使い分けていない」ということ。前回私は「6つの型のうちいくつかを状況に応じて使い分けるのが理想的」と言った。しかし、どうもガンジーは使い分けていなさそうだ。彼の様々なエピソードは常に、「先導」「ビジョン」「強圧」を示しているように思える。リーダーシップを器用に使い分けているガンジーはなんだか見たくない気がする。つまり彼のスタイルは、その絶妙なブレンドの配合やレシピを固く守り続けることでそのリーダーシップを高めていくことができる類のものだったようだ。それは、有利に働いたかもしれないし、場合によっては不利だった事もあったかもしれない。そうであってもおそらく彼は「それしかできなかった」のかもしれない。これは「自分が何者なのか」(オーセンティシティ)につながる話だが、このテーマはこのテーマとしてまた別の回で掘り下げてみたい。今はあといくつか、「類のない」卓越したリーダーの方々のリーダーシップを、敢えて解剖し、その類型ブレンドを味わって行きたいと思う。

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